【インタビュー】ALICE IN MENSWEAR、michi.が語る「KOJIとの約束」
<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>が8月7日、赤羽ReNY alphaで開催された。ギタリストKOJIの逝去後、初めて行われる有観客ライヴであり、その模様はリアルタイムで配信、現在もアーカイブ視聴ができるほか、同日の模様を収録したDVD盤、Blu-ray盤、アーカイブデータが付属するチケットも発売中だ。そのMCでmichi.(Vo)自身の口から「俺はKOJIの作品を歌い続けていきたいと思っています」と語られたように、同公演は“GEARS OF DESTINY”=“運命の歯車”が再び動き出したことを告げる感動的な一夜となった。
◆ALICE IN MENSWEAR 画像
この夜をただしんみりとしたものにさせなかったのは、michi.にとってもファンにとっても、ALICE IN MENSWEARの音楽がいつもKOJIと共にあるという共通認識があったからに他ならない。この日、この場所で、このライヴに参加しているという事実を噛みしめ、1曲1曲を身体と心に刻みつけるような全17曲。ステージと一体になったフロアのジャンプや拍手、タオル回しが反映したのはバンドの活力だった。michi.は何度もKOJIの立ち位置へ目を配り、ギター型スティームパンクのガジェットに手を添えた。また視覚はもちろん、聴覚的にも生のライヴ感を増幅させていたのが、KOJIが生前構築した“ツインギター自動演奏システム”だ。
BARKSは同ライヴ開演直前の楽屋でmichi.に話を訊いた。この一夜にmichi.が込めようとしていたもの、展開中のプロジェクト『IN MEMORY OF KOJI』、KOJIとの約束、KOJI自身が遺したツインギター自動演奏システム、そしてこれからについて。時おり言葉を詰まらせながら、じっくりと前を見据えて語ってくれたmichi.の単独インタビューをお届けしたい。なお、ここに掲載する最新アーティスト写真はmichi.自身がKOJIとふたり撮影したものだ。
◆ ◆ ◆
■KOJIが歩んだ道のりを
■ひとりでも多くの人に
──まず、現在展開中の『IN MEMORY OF KOJI project』に込めた思いからお話いただけますか。
michi.:もともとはKOJIが病気を発表した2020年に、僕が旗を振って『cheer up KOJI !! project』を立ち上げたんです。当時、KOJIは入院や手術だったりで、動けない時間がガッツリできてしまったんですね。その間、活動休止することもできましたけど、やっぱり待ってくださっていたり、応援してくださっているファンの皆さんに心配をかけたくなかった。“俺達は止まらない”という意思表明もしたかったので立ち上げたプロジェクトが『cheer up KOJI !! project』だったんです。
──『cheer up KOJI !! project』はファンへ向けたプロジェクトであると同時に、michi.さんが療養中のKOJIさんを全力で励ますために発起したものでした。結果、KOJIさん不在の間もALICE IN MENSWEARは活動を止めることがなかった。
michi.:はい。僕ひとりでアコースティックライヴをしたり、トークライヴをしたり。その後、KOJIは復活してステージに立てたけど、残念ながら今年4月15日に他界してしまった。『IN MEMORY OF KOJI project』は、KOJIのことをみんなに忘れないでほしいという願いを込めてスタートさせたプロジェクトです。
──KOJIさんはいろいろなものを遺されましたから。La'cryma ChristiもALvinoもそうですし。michi.さんがALICE IN MENSWEARを通して、KOJIさんのことを後世に伝えてくれるというのは本当に嬉しいことです。
michi.:今回の訃報によって、KOJがずっと音楽を続けていたことを初めて知ったというファンの方も少なくなかったんです。「知っていたら応援したかった」とか「私の青春でした」という声をたくさんいただいて。その方々の気持ちに応えたいという思いもあります。おっしゃるとおり、La'cryma ChristiもALvinoも現在ライヴはおこなっていないという声もありましたので。
──現在展開中の『IN MEMORY OF KOJI project』は、本日のライヴ<GEARS OF DESTINY code 1812>や、期間限定ストア開催、祭壇への献花による“KOJIお別れ会”などが実施されています。
michi.:病気と闘ったKOJIの歴史を振り返るという意味で、リアルタイムで見られなかった人達にも手術後の復活ライヴなどの軌跡を見てほしいという思いがあるんです。今後はそういった映像を再視聴できるようにしたいと思っています。以前の配信ライヴでも今回のように、ライヴ音源収録CD付きコースや、ライヴ映像収録DVD付きコースなど、チケットにいろいろなバリエーションを用意して、ファンの方にはその中から選んでいただけるようにしていたんですね。それも僕とKOJIが一生懸命考えて生み出したプランだった。今後も、そういうアイデアを忠実に再現した形で届けたいと思っています。
──ほかにもプランが?
michi.:『ALICE IN MENSWEAR Real Trip in 八ヶ岳~メンバーとリアルに過ごす山梨旅~』という企画を2022年4月に開催する予定だったんです。残念ながらそれはKOJIの体調のこともあり、実現できなかったんですけど。ただ、その下見のために去年11月、KOJIと僕で山梨に行ってたんですね。その下見の映像で旅番組みたいなものを作って『Secret Trip ONLINE~メンバーとバーチャルに過ごす山梨+長野旅~』というタイトルでZOOMイベントとして実施したんです。オンラインでみんなとその映像を見るというバーチャルツアーですよね。リアル旅行が実現できなかったので、我々が訪れた地を聖地として、その聖地巡りをリアルに行う旅行プラン『cheer up KOJI !! project「Real Trip in 八ヶ岳~聖地巡礼旅~」』という企画も催行させていただきました。
──『Secret Trip ONLINE』はふたりの素顔に触れられるいい企画ですね。
michi.:ファンの皆さんにも喜んでいただけました。そのときに実施したのが“スナップ写真購買部”で。KOJIも僕もカメラが趣味なので、下見のときにお互いに撮り合ったスナップ写真が何百枚とあったんです。たとえば、中高生時代の修学旅行ってカメラマンさんが同行していっぱい写真を撮ってくれたじゃないですか。その写真は後日、学校の廊下に貼り出されて、自由に選んで買うことができた。バーチャルツアー『Secret Trip ONLINE』では修学旅行気分を味わえるように、“スナップ写真購買部”という名称でweb上に僕らが撮った写真をアップして、ファンのみなさんが購入できるようにしたんです。とても喜んでいただけましたし、“その写真をもう一回買えるようにしてほしい”というリクエストをたくさんいただいていたので、それは『IN MEMORY OF KOJI project』の一環として、今まさに“スナップ写真購買部 Re.”を実施しています(※オフィシャルサイト参照)。
──ファンひとりひとりに寄り添っていきたいという思いを感じます。
michi.:そうありたいですね。ALICE IN MENSWEARはふたりのユニットですし、スタッフも少数なので、なにをするにしても我々の意思を密度濃く込めることができるんです。ALICE IN MENSWEARのテーマである“スチームパンク”にはDIY精神があるんですよ。もちろん手伝ってくださる方はいっぱいいるんですが、やれることはできるだけ自分達だけでやる。KOJIが生きてきた証……彼が歩んだ道のりをひとりでも多くの人に知っていただきたいという強い思いのもとに少数精鋭チームとして動いています。
──本日8月7日に赤羽ReNY alphaで開催される<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>は、michi.さんとKOJIさんの約束だったそうですね。
michi.:4月12日がKOJIの誕生日、8月18日が僕の誕生日で、KOJIとは「毎年4月と8月にバースデーライヴをやろうね」って言ってたんです。2022年もお互いの誕生日を祝うライヴをしようということになっていて。
──「俺の身に何があっても、必ずバースデーライブはmichi.に歌ってもらいたい」というKOJIの遺志を尊重して、今年4月17日の赤羽ReNY alpha配信ライブを実施した、という主旨のコメントもTwitterに記されてましたね。
michi.:はい。4月はKOJIのテーマカラーである青い衣装を身に纏ってライヴをしたんです。今年3月くらいかな……最後となってしまったアーティスト写真を撮影して……。そのときは僕が写真を撮ったんです。「いい写真が撮れたよ」という話をしていたときにKOJIが「michi.、8月のライヴは俺、michi.のテーマカラーの赤い衣装でステージに立ちたい」と言ってくれて……。それで今日のために……KOJIはステージに立てなかったですけど、スタイリストさんにはふたりの赤い衣装を作ってもらって。なので、ファンの方々へのサプライズとして、終演後、KOJIの赤い衣装を赤羽ReNY alphaのロビーに飾って写真を撮ってもらえるようにしています。
──赤い衣装を着たKOJIさんを生で見たかったですね。ちなみに、ライヴタイトルに冠されている“1812”という数字はなにを表しているのでしょう?
michi.:“18”は僕の誕生日で“12”はKOJIの誕生日です。僕らは19世紀の西欧やレトロフューチャーなスチームパンクをモチーフにしているので、“1812年”という年号とも取れる数字にしました。つまり、“1812”というのはALICE IN MENSWEARを表す数字なんです。
──ALICE IN MENSWEARの運命の歯車を意味しているんですね。もうひとつ、今日のライヴではKOJIさん自身が構築した“ツインギター自動演奏システム”を使用してライヴが行われるそうで。
michi.:“ツインギター自動演奏システム”というのはKOJIが生前、“自分がいなくなっても自分のサウンドを届けられるように”、そして“ギタリストがいなくなったことでライヴができなくなってmichi.が路頭に迷わないように”ということで、ALICE IN MENSWEARの楽曲のギターを新たに録ってくれていたんです。これは、素の音で録って、ライヴのときにリアンプするというシステムなんですけど。KOJIはシーケンス化したギタートラックに音色やエフェクターのプログラムチェンジも書いていたので、自動的に信号が切り替わるんです。最初はKOJI自身もステージに立っていることを想定してサイドギターから始めていたので、彼がステージに立っていた頃からサイドギターのトラック数曲は流していたんです。その後、残りのサイドギターや一部リードギターのパートも録ってくれました。つまり、CDのギタートラックを流すんじゃなくて、KOJIがライヴを想定して弾いたギターを使っているんです。時間の問題で、全曲仕上げることは叶わなかったんですけど、間に合わなかった曲も過去のライブテイクなどをアンプから鳴らしています。
──KOJIさんがその場で弾いているように感じられるライヴテイクですね。
michi.:最後の手書きを“絶筆”と言いますけど、それと同じように、KOJIが最後に作ったギタートラックには彼の魂が収録されている。それはライヴを観ていただければ必ず伝わると思います。
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