【ライヴレポート】ALICE IN MENSWEAR、2年4ヵ月ぶり有観客公演は「KOJIと俺と君たちのワンダーランド」
ALICE IN MENSWEARが8月7日、赤羽ReNY alphaにて<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>と題した有観客および配信ライヴを開催した。2年4ヵ月ぶりの有観客公演となった当日の模様を先ごろ公開した速報に続いて、詳細レポートとしてお届けしたい。なお、開演直前の楽屋でmichi.に訊いたインタビューも同時公開する。
◆ALICE IN MENSWEAR 画像
michi.(Vo)とKOJI (G)が2019年に本格的にスタートさせたバンドがALICE IN MENSWEARだ。“スチームパンク”をコンセプトに掲げたファンタジックかつエモーショナルな音楽性と、華美なヴィジュアルを打ち出して活動を続けてきた。1stアルバム『Wonderland For The Lost Children』を2019年3月にリリース、2021年9月には2nd アルバム『GRAPPLE THE WORLD』をリリースするも、その前年2020年7月にはKOJIの食道ガン発症を発表。闘病生活を経て、ステージ復帰も果たしたが、残念ながら2022年4月15日に逝去した。
その2日後に配信ライヴを控えた中での訃報。michi.は深い哀しみに襲われたそうだが、「俺の身に何があっても、必ず4月17日はmichi.に歌ってもらいたい」というKOJIの遺志を尊重し、KOJIの逝去を伏せた形で4月17日に配信ライヴ<cheer up KOJI !! project 3周年&KOJI生誕記念「Undress the Universe」>を決行。さらに、「8月のライヴも必ず一緒にやろう」というKOJIと交わした約束を守るべく、8月7日に赤羽ReNY alphaで単独公演<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>を有観客および配信ライヴで開催した。
新型コロナウイルス感染予防対策を万全に施したフロアはソールドアウト。定刻通りに場内が暗転し、オープニングSEが流れてステージにサポートメンバーの古谷圭介(B)と竹村忠臣(Dr)が歩み出てきた。最後にmichi.が姿を現して客席からひと際熱い拍手が湧き起こる。ライヴはダークなA〜Bメロと力強く疾走するサビの対比を活かした「GEARS OF DESTINY」から始まった。ALICE IN MENSWEARならではの華麗な世界観と眩いオーラを放ちながら歌うmichi.の姿にフロアのテンションは高まり、瞬く間にALICE IN MENSWEARの色に染め上げられた。
その後はアッパーなサビを配した「ワルプルギスの夜」、力強さと洗練感を併せ持ったミディアムチューン「PiLL ≠ GRiMM」、尖りを感じさせる「capture -捕食者-」などを続けてプレイ。曲が進むに連れてどんどん加速していく流れが心地好い。と同時に、トラックを流しているとは思えない生々しいギターに驚かされた。同時公開したmichi.インタビューでも語られているが、4月17日の配信ライヴと同じく、今回のライヴではKOJIが生前にライヴ用に録音した“ツインギター自動演奏システム”と名づけられたギタートラックが使われていて、CD音源のギターを流すパターンとは大きく異なった臨場感に溢れていた。眼を閉じると、あたかもKOJIが目の前で弾いているように感じられるギターに耳を奪われたし、その感覚は、音楽にあまり詳しくない、ギターのことはよくわからないというようなリスナーも味わえると断言できる。KOJIが去ったことでALICE IN MENSWEARのライヴに参加することを躊躇っている人も、ぜひ彼が最後に遺したギターを聴きに行ってほしい。KOJIが尽きることのない思いを込めたギタープレイを通して、彼に会うことができる。
「大変長らく、お待たせ致しました、ALICE IN MENSWEARです! 今日は、やっちゃおう。みんなとの約束を、俺達と一緒に果たしましょう。ワンダーランドの宴は、まだまだ続きます。最後まで一緒に楽しみましょう」──michi.
というMCの後、弾力感のあるmichi.のボーカルとスリリングなKOJIのギターソロをフィーチュアした「TRANSITION」、耽美感を湛えた「Lost Child」、美しい翳りを纏ったスローチューンの「THE WORLD IS YOURS」などが届けられた。エモーショナルなナンバーをライヴでもしっかり表現する辺りはさすがの一言で、深く惹き込まれずにいられない。ライヴを通して熱いリアクションを見せていたフロアもこのときばかりは静まり返って聴き入っていた。
michi.のクールなリーディングや宗教的な匂いがあるサビを配した「オートマタ -鋼鉄少女A-」、暗い世界観にKOJIのテイスティーなギターソロが絶妙の彩を加える「アンドレス」などで深遠さをみせた後、michi.の声とオーディエンスの手拍子によるコール&レスポンスを経てライヴは後半へ。
ここでは退廃的な雰囲気を放つ「GRAPPLER」「EXCORE」、ダンサブルな「アビエイターズ -飛行少年A to Z-」「Pre-TEA PARTY」などが相次いで演奏された。ステージ上を行き来して、客席にアピールしながら力強さと妖艶さを同時に感じさせる歌声を聴かせるmichi.と、多彩なバッキングワークやソロなどで楽曲それぞれのエモーションを増幅させるKOJIのギター。気持ちを引き上げるサウンドとステージングで魅了するALICE IN MENSWEARに応えてフロアも一体感のある熱いリアクションをみせ、赤羽ReNY alphaの場内は華やかに盛り上がった。
「みんな、どうもありがとう。赤羽ワンダーランド、KOJIと俺と君たちのワンダーランド、素敵なワンダーランドを俺達に作らせてくれて、本当に最高の気分です。本当にここまで長い道のりでしたが、やっとKOJIとの約束を今日ここでみんなと果たすことができました。みんなの優しい気持ちに支えられて、そしてKOJIの強い気持ちに後押しされて、今日、俺はここに立つことができています。ここに来てくれたみんな、そして配信、アーカイブを観てくれているみんな、もう一度あらためてKOJIに大きな拍手をよろしく! ここからは俺がいろんな犠牲を払ってでも、KOJIが生み出したもの……作品であり、哲学であり、思想であり、そういったものを彼の代わりにはなれないかもしれないけれど、彼と歩んだ時間を誇りに、俺がこれからも刻み続けます。どんな形になるかは分からないけれど、運命の歯車はまだ錆びつかず、これからも少しずつでも進めていきますので、応援よろしく」──michi.
というMCに続けて、本編ラストとして「遥カナ航跡」をプレイ。美しさと切なさを併せ持った深みのある世界を描き出して曲が終わった後、叫ぶようなKOJIのギターの音が場内に鳴り響く。その音が途絶えた瞬間、客席からは温かい拍手が湧き起り、いつまでも途絶えることがなかった。
迎えたアンコールは「ALFHEIM」。その前にmichi.はKOJIが遺した“ツインギター自動演奏システム”ついて説明することでKOJIの想いを参加者へ届け、KOJIの命日となる来年4月15日に新宿ReNYでALICE IN MENSWEARのワンマンライヴを開催することを発表した。「ひとりでも多くの人に語り継いでいきたい」という言葉とともに。そしてアンコールを含む全17曲、約2時間のステージが終了した。
KOJIが遺したギタートラックを活かして、ファンが納得するライヴを披露してみせたALICE IN MENSWEAR。KOJIが最後の最後まで音楽に対する情熱を失なわなかったことが実感できて、深い感銘を受けた。そんな彼の思いに触れて、その場にいた誰しもの胸が熱くなったと思う。ライヴ途中、何度か言葉を詰まらす場面もあったが、感傷的にならずに前向きなオーラを発しながらライヴを進めたmichi.に大きな拍手を贈りたい。終演後、michi.は楽屋でこう語ってくれた。
「4月17日のライヴは何度も涙が溢れそうになってしまったけど、今日も絶対に泣かないと心に誓っていたんです」──michi.
KOJIもお涙ちょうだいではなく、ALICE IN MENSWEARの真髄を見せつけるライヴを望んでいるに違いない。そういう意味でも、強く心に残るライヴだった。哀しみや喪失感を乗り越えてmichi.はALICE IN MENSWEARを存続させることを決意した。michi.とKOJIのふたりは、これからもALICE IN MENSWEARと共にある。
取材・文◎村上孝之
撮影◎河井彩美
■<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>2022年8月7日(日)@赤羽ReNY alphaセットリスト
02. ワルプルギスの夜
03. PiLL≠GRiMM
04. capture -捕食者-
05. TRANSITION
06. Lost Child
07. THE WORLD IS YOURS
08. 女神
09. オートマタ -鋼鉄少女A-
10. アンドレス
11. ラプラスの針
12. GRAPPLER
13. EXCORE
14. アビエイターズ -飛行少年A to Z-
15. Pre-TEA PARTY
16. 遥カナ航跡
encore
17. ALFHEIM
■配信<IN MEMORY OF KOJI project「GEARS OF DESTINY code 1812」>
アーカイブ視聴期間:チケットによって異なります。
【配信チケット料金】
B-①ライブ配信チケット+3日間 (8/10(水)23:59まで)のアーカイブ視聴 ¥5,000(税込)+ZAIKO手数料
B-②ライブ配信チケット+1ヶ月 (9/6(月)23:59まで)のアーカイブ視聴 ¥6,500(税込)+ZAIKO手数料
B-③ライブ配信チケット+DVD盤 ¥9,000(税込)+ZAIKO手数料
B-④ライブ配信チケット+DVD盤+CD ¥12,000(税込)+ZAIKO手数料
B-⑤ライブ配信チケット+Blu-ray盤 ¥10,500(税込)+ZAIKO手数料
B-⑥ライブ配信チケット+Blu-ray盤+CD ¥13,500(税込)+ZAIKO手数料
B-⑦ライブ配信チケット+アーカイブデータ+DVD盤+CD ¥16,000(税込)+ZAIKO手数料
B-⑧ライブ配信チケット+アーカイブデータ+Blu-ray盤+CD ¥17,500(税込)+ZAIKO手数料
※コース③~⑧には「1ヶ月(9/6(火)23:59まで)のアーカイブ視聴」も付属します。※コース③~⑧のDVD盤、Blu-ray盤、アーカイブデータには全てオフショットの特典映像を収録します。
※コース⑦~⑧アーカイブデータはデータ準備完了次第、ダウンロード先URLをお知らせいたします。
※CDはライブ音声を収録したものとなります。
※ディスク盤の映像、CDの音声は、若干の編集や音質調整などが加わる場合がございます。
※DVD盤、Blu-ray盤、CDの発送は1ヶ月アーカイブ終了後から約1ヶ月ほどお時間をいただきます(簡易パッケージ/レターパックライト/海外への発送は対応しておりません。返金等も出来ませんので、あらかじめご了承ください)。
※レターパックライトはポスト投函となります。ポストの大きさなどで投函できない場合は不在通知が投函されます。その場合は不在通知から再配達のご依頼をお願いします。保管期限超過で事務局返送となった場合はヤマト運輸着払いでの再送となりますのでご注意ください。
※アーカイブ期間中にもチケット購入可能です。
【チケット販売期間】2022年6月11日(土) 10時~
【配信ライブチケット】https://unitedproducts.zaiko.io/item/348658
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