【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】Gacharic Spin アンジェリーナ1/3、マイク、タンバリン、拡声器がライブでの私の武器
高いスキルに裏打ちされたプレイを土台としつつ、観客を楽しませる様々な要素を積極的に取り入れているGacharic Spin。メンバー各々が使用している楽器類も、観客の目を引く個性的なものが揃っている。アンジーことアンジェリーナ1/3の担当パートは“マイクパフォーマー”なので、使用している機材は多くはない。機材取材のオファーが来たことに関して本人は驚いていたが、興味深い話がいろいろ出てきた。ガチャピンの根幹にあるエンタテイナーとしての姿勢が伝わるインタビューになっていると思う。
■私はマイクパフォーマーなのでマイク1本で勝負するのはもちろんですが
■例えば拡声器を使う曲があると声の表現の幅が広がるんです
――機材インタビューのオファーがなぜかアンジーさんのところに来た……という出来事をどのように捉えていますか?
アンジェリーナ1/3(以下、アンジー):Gacharic Spinのメンバーの機材の取材のお話をいただいた時、私の機材は基本的にマイク1本だから「私は今回はないんだな」って思っていたんです。でも、スケジュールの日程に「機材取材」って書いてあったので、「あるんだ? 私でいいんですか?」と。
――なるほど(笑)。
アンジー:超絶テクニックのメンバーの中での私ですからね。「弱くないですか?」と(笑)。でも、楽しくお話できたらいいなと思っています。
――この取材で、「私もスーパープレイヤーなんです!」と、ぜひ主張してください。
アンジー:そうですね(笑)。マイク1本でもスーパープレイは、いろいろできるんですから。
――マイク、タンバリン、拡声器を紹介していただきますが、これらは先輩メンバーにとっての楽器のようなものですよね。ライブの現場での武器というか。
アンジー:はい。アコースティックコーナーではタンバリンを使うことが多いですし、拡声器は私が加入した第5期から導入されたんです。こういうのも今の体制のGacharic Spinのアイコンの1つになっているのかなと思います。
――楽器も含めたライブで使用する様々な道具は、ガチャピンにとってとても大事ですよね?
アンジー:そうなんです。私のパートはマイクパフォーマーなので、マイク1本で勝負するのはもちろんですけど、例えば拡声器を使う曲があると、声の表現の幅が広がるんです。バンドとしての表現の幅を広げるにはどうしたらいいのかは、メンバー全員が常に考えています。「こういうことをやってみたい」というのを形にさせてもらえるのが嬉しいです。柔軟性はガチャピンの強みですし、この環境でマイクパフォーマーをやらせていただけるのは、本当にありがたいことだなと思っています。
――小道具に関して具体例を挙げるならば、アンジーさんの最初のライブ(2019年3月2日、恵比寿リキッドルームで行われたGacharic Spin Presents五番勝負Vol.4)の時、けん玉のパフォーマンスで存在を鮮烈に示しましたよね? 曲終わりでけん玉を成功させるのはもともとガチャピンの定番パフォーマンスでしたけど、失敗したのを無理やり手でねじ込んだじゃないですか。「成功です!」という顔をしたのを見た時、「この新メンバーの女の子、なんか変だけどガチャピンにふさわしいな」と僕は感じました。
アンジー:「アンジェリーナ1/3はどういう人間なのか?」を表すために、けん玉はわかりやすい小道具だと、あの時に思っていました。けん玉は成功させるのが一番良いですけど、「外した時にどういう対応をするのか?」によって人間性が表れますから。あのライブでけん玉をやったのは、そういうことを試されていたのかもしれないと、今になって感じますね。手でねじ込んだことによって、狙ってはいなかったんですけど「ガチャピンでやってくぞ、私!」っていうのを表せたんだと思います。
――あのライブの時、「けん玉に失敗したらクビだからね」って、もちろん冗談ですけど先輩たちに言われていたんでしたっけ?
アンジー:「降格だからね」と。まあ、もともと補欠の合格みたいな感じだったんですけど(笑)。
――(笑)。玉を串に刺すのにトライして失敗したんですよね。お皿に載せるよりも難易度が高いのに。
アンジー:それまでのガチャピンのけん玉のパフォーマンスは大皿に玉を載せていたんですけど、それよりも難易度の高いことをやりたかったんです。私が入った意味は、そういうところにもあると思っていたので。でも、それに挑戦してきめられないのが、アンジェリーナ1/3らしい気もします。「今は未完成でも、これからいろんな経験を積んでいく内にみなさんの心に残るようなパフォーマンスをできるようになっていきます」という意味でも、最初のライブでけん玉をきめられなかったのは正解だったのかも。
――アンジーさんはガチャピン加入前にバンド活動の経験はなくて、学園祭でライブを少しやったくらいだったんですよね?
アンジー:はい。だから初めてのライブみたいなものだったんですよ。
――初ライブがリキッドルームって、なかなかない話です。
アンジー:私はもともとライブによく行っていて、リキッドルームも大好きな箱だったんです。憧れの人たちが立っていたステージですから、「ここでデビューするんだ!」という緊張はありつつも、「ここから新しい体制のGacharic Spinが始まっていくんだ!」という気持ちも強かったですね。
――あの時は高校2年生、17才でしたっけ?
アンジー:そうです。
――丁度ガチャピンが10周年を迎えたタイミングでしたけど、「一緒に10年やってきました!」くらいの存在感が当時からありましたよ。
アンジー:それくらいじゃないと、大事なタイミングで私を迎え入れてくれたメンバーに対しても申し訳ない、失礼になってしまうという気持ちだったんです。だからどれだけ未完成で、できていないところがあっても、「こういうことがやりたいです」「こうした方がかっこいいと思います」とか、積極的に言うように当時からしていました。
――マイクパフォーマーのアンジーさんにとってメインの機材はマイクや拡声器ですけど、楽器に関してはガチャピン加入前からギターを弾いていたんですよね?
アンジー:そうです。アコースティックギターから始めました。でも、全然上手くならなくて、すぐにやめました。
――お父様の形見のギターが、本腰を入れて弾くようになったきっかけだったとお聞きしています。
アンジー:はい。父のギターを見て、「音が鳴るものを弾いてみたいな。お父さんが大事にしていたものを自分もしっかりと受け継ぎたいな」って思って、しっかりやるようになりました。私は中1の頃にいろいろなことがあって。そんな時期に助けてくれたのが音楽だったのでギターをやりたいと思ったし、バンドのライブに行きたい気持ちも強まっていたんです。一番どん底の時に救ってくれたのが音楽でした。
――上手く弾けなくても、楽器って楽しいですよね?
アンジー:そうなんです。始めた頃は「上手く弾きたい」「かっこよく弾きたい」とか思っていましたけど、「ギターの音が好きなんだな」「アコギの音は落ち着くから、やめた後も心残りがあったんだな」って思うようになりました。そういう感性はずっと大事にしていきたいと思うようになって以来、下手でも弾き続けています。もともと音楽は好きで、歌が特に好きだったので、誰かに楽器を弾いてもらって歌いたいという気持ちはあったんです。でも、音楽のことがさらに好きになっていけばいくほど、「自分で思うように弾いてみたい」ってなっていったんですよね。
――ギターはコードをいくつか覚えると、楽しさが一気に広がりますよね?
アンジー:そうですよね。私は音で覚えるのが苦手だったので、弦を押さえる指の形で覚えていきました。弾ける曲の幅は狭かったんですけど、楽しくてずっとやっていました。最近になってコードを少しずつ理解するようになっています。「このコードは、この音とこの音とこの音で成り立っているんだ」とか。
――弾いているギターは、ずっとアコギですか?
アンジー:はい。でも、今年の成人式のライブの時に真っ黒なSGをスタッフさんがプレゼントしてくださったんですよ。それまではエレキギターに触ったことがあまりなかったんです。YouTubeの企画で少し触ったことはあったんですけど、SGをいただいたので、ちゃんとやってみたいなと思っています。
――教えてくださる先輩たちがいますからね。
アンジー:はい。はなさんやTOMO-ZOさんに「これ、どうやって弾くんですか?」とか聞いて、クイズみたいな課題を送ってもらっています。それをやりながらコードのこととかを理解するようになりました。
――スタッフさんからいただいたのはギブソンのSG?
アンジー:はい。お家でずっと弾いています。大好きなガールズバンドのボーカルがSGを使っていることが多くて、「ロックスターの女の子のSGってかっこいいなあ!」って憧れていたんですよ。アヴリル・ラヴィーンもパラモアのヘイリーもそうだし、ペール・ウェーヴスのボーカルの女の子も真っ黒なSGを使っているんです。だから私もいつかステージでギターを掻き鳴らしながら音楽を伝えられるボーカリストになりたいです。SGをいただいたことで、なりたい新しいボーカル像が自分の中にできました。
――最初のエレキギターがSGって、羨ましいです。
アンジー:めちゃくちゃかっこよくて、いつも布団の枕元に置いているんですよ。起きて、目を開けた時に見て、「かっこいいなあ」って思っています。
――アコギに関してはお父様のギターの後に、高校に入ってからのバイト代で自分のアコギを買いましたよね?
アンジー:はい。下北沢で中古で買った8千円のアコースティックギターです。バイトの初任給でギターを買いたいと思っていて。初任給で買えなくても、お金を少しずつ貯めながら気に入ったアコギを探すつもりだったんですけど、下北沢で偶然に出会ったんです。楽器屋さんではなくて、中古のものがいろいろ置いてあるリサイクルショップの奥の方で、めちゃめちゃ埃を被っていたギターがあったんですよ。「うわあ。ロックだなあ」って思いながら手にした時に、「これを弾きたい」って思いました。それまでに楽器屋さんで高いギター、かわいいギターを見ても感じなかったときめきがそのギターにはあったんです。「私の初代は誰が何と言おうがこの子なんだな」と思って、すぐに買いました。エレアコでもなくて、チューニング狂いまくるギターなんですけどね。
――今でもチューニングが安定しないんですか?
アンジー:使っている内に少しずつ安定するようになってきました。最初の頃は「このポンコツ!」って思っていたんですけど(笑)。今までに買ってきた他のものもそうなんですけど、自分とどこか似ているものに惹かれるみたいです。だから私も今はポンコツかもしれないですけど、どこか気になるなって思っていただけるアーティストになりたいですね。この8千円のギターとは、買ってからずっと一緒にやってきました。
――高校の学園祭でも弾いたんですよね?
アンジー:はい。そのギターを初めて使った学園祭でKOGAさんに見つけていただきました。
――そのアコギがガチャピンに導いてくれたということですよ。
アンジー:ほんとそうですね。お父さんのギターは大きくて私の身体に合っていなかったので、自分のギターを手に入れなかったら弾き語りをするようにならなかったと思うので。
――その8千円のギターに関して、何かこだわりを語っていただけると、プロのギタリストのインタビューみたいでかっこいいと思うんですけど。
アンジー:こだわりですか? 弦のこととかよくわからないんですけど、温かい音が鳴るものが好きです。それはTOMO-ZOさんの影響ですね。TOMO-ZOさんが温かくて優しい気持ちになる音色でアコギを弾いていたので、楽器屋さんで相談したりしながら、そういうのを使うようになっています。ピックは、TOMO-ZOさんからのおさがりのくまモンのピック。あと、亀の模様が入ったピックも使っています。
――亀の模様は、おそらくダンロップですね。
アンジー:それのオレンジ色のやつです。
――三角形の?
アンジー:そうです。あれは弾きやすいです。それを使い始めてから、ピックの違いで弾きやすさが変わることに気づきました。ちょっとした違いに気づけるようになるのって、嬉しいんですよね。今、すごく良い環境で音楽をやらせていただいていますけど、何でも最初から一番良いものを教わるんじゃなくて、「違いに気づけるようになっておいで」とメンバーが送り出してくれるんです。「自分に合うものと合わないものに気づけるようになっていけたら良いよね?」ってみんなが言ってくれるので、少しずつ気づいていくことを大切にしています。
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