【インタビュー】LM.C、アルバム『怪物園』に新たな表現と覚悟「全11曲、どれもが怪物級」
デビュー15周年の節目を迎えたLM.Cが4月6日、ニューアルバム『怪物園』をリリースする。前作『FUTURE SENSATION』以来、約3年8ヵ月ぶりのアルバムには、2020年に配信リリースした「Campanella」「No Emotion」「Happy Zombies」の3曲もパッケージ。初めて漢字を使用したアルバムタイトルとジャケット写真からして想像力が掻きたてられる。
◆LM.C 画像 / 動画
「今、何を歌えば未来に繋がっていくのか」──作詞家としてとことん向き合ったうえで言葉を生み出していったmaya(Vo)、少年の頃にロックに衝撃を受けた原点を見つめたうえで、締め切りのない曲作りや音作りを最大限突き詰めていったAiji(G)。結果、完成したのがLM.Cらしいエンターティンメント性と、不穏な時代に刺さるメッセージ性が絶妙のバランスで共存する『怪物園』だ。
BARKSでは現在ツアーの真っ最中の2人にインタビューを実施した。長く続くコロナ禍においてミュージシャンとして考えたこと、アルバムが生まれた背景についてもたっぷり話を聞いた。なお、LM.Cは開催中のツアー<LM.C TOUR 2022「怪物園」>を経て、9月25日にLINE CUBE SHIBUYAで15周年記念ライヴを行うことが決定している。
◆ ◆ ◆
■今までなら絶対につけないタイトル
■今まで以上に1曲1曲に向き合った
──アルバム『怪物園』の構想はいつ頃、生まれたのですか?
Aiji:まず、2年前ぐらいから「次回作はどうしようか」ってmayaと話してきたんですけど、アルバムなのかミニアルバムなのか着地点は決めないまま、曲は作り続けていたんですね。2021年12月にフルアルバムにすることを決めるまでは、いつか出す音源って漠然と捉えていた感じでした。
──定期的に曲を出し合っていたんですか?
Aiji:そうですね。コロナ禍においては物事が全く手につかなくなるタイプとコツコツやり続けるタイプに分かれたと思うんですが、LM.Cも例に漏れず分かれまして、自分も最初は全然制作モードになれなかったんです。作っても果たしていつ出せるんだろうって、正直、曲を作ることが重いというか、なかなか手につかなかった。ただ、いずれやってくる活動再開のために、ステージに立つギタリストという意味では難しい状況でも、ミュージシャンとして音楽を作り続けることは止めるべきじゃないと思えたので、自分のモチベーションを保つためにも曲を作ろうって。将来のアルバムのために臨んだ作曲ではなかったですね。
▲maya (Vo)
──なかなか手につかなかった時期からシフトチェンジしたのはいつ頃ですか?
Aiji:コロナ禍になってワンツアーが飛んだあたり、2020年の春からですね。逆に言うと、ライヴはできないけど、締め切りもなく、とことん作品に向き合える時間ができたんですよ。今までテンポよく進めていたところをじっくり向き合えたんです。
──mayaさんの場合は?
maya:自分は真逆で、何もする気が起きないまま、日々を過ごしてましたね。悲観的に状況を捉えていたわけではないんですが、制作には気が向かなかったです。振り返ってみたら、今現在はライヴが再開できて、ツアーも行えていますけど、2年前ぐらいの時点では状況がどうなるかわからない中、どうしたいのかも見えなくて、何も生まれないなって感じでしたね。
──家の中に籠もってたんですか?
maya:そうです。そもそも家から出ないんですけど、なおさらですね。
──太陽の光を浴びない毎日?
maya:より浴びないですね。
Aiji:まぁ、今もそうですからね(笑)。
──地下の秘密スタジオみたいな場所にいますもんね。
maya:スタジオっていうか、真っ暗ですね(笑)。思い返すと自分の場合は歌詞も担当しているので、何をメッセージするのか、次に歌うことが見当たらず。“歌いたいことないな”っていう地点までも感情が至っていなかった。違う時間が流れているというか、状況との向き合い方がそれまでの年月とは違うんだなと思ってましたね。でも、そこは時間が解決してくれたというか、状況は大きく変わらずとも、このまま時が過ぎていくのを眺めているだけの時間はもういいかなっていうところに差し掛かり、新たな楽曲を生む気持ちにシフトしていけた感じですかね。
──それはわりと最近ですか?
maya:2020年は3曲配信リリースして、アルバムの新曲という意味では「 End of the End」の歌詞を最初に書き始めたから、2021年の春ぐらいかな。配信リリースした「Campanella」「No Emotion」「Happy Zombies」の3曲は作業がコロナ前に終わっていたので、何を歌っていけば未来に繋がっていくのか、ずっと考えていましたね。言葉にすると重い感じを受けると思うんですけど、気持ちとしてはニュートラルというか、自然に向き合っていました。
▲アルバム『怪物園』
──とは言え、そんなモードにmayaさんがなるのは珍しいですよね。ライヴがなかったのが大きかったんですか?
maya:いや結局、そういう人間なんだなというか、変わったわけでもないんですよ。必要以上に何かを嘆いていたり、憂いていたりしたわけでもなく。ただ、言葉を操っていく担当としては、ここでちゃんと向き合わずに過ごしてしまうと、その先の数年間に関わってきそうで適当に過ごしたくはないと思っていましたね。
──アルバムのタイトルだったり、コンセプトが決まった時期は?
maya:そもそも今作は制作期間があったわけではないので、自分は「Happy Zombies」しか作曲していないんですよ。フルアルバムにすることが決まった時にタイトルも決めたんですが、最初のイメージはミニアルバムだったんです。というのも個人的には作る側としても聴く側としてもフルアルバムは想像できなくて、“そんなにまとまった曲数が必要なのかな?”って。
──今の時代に合わないということでしょうか?
maya:時代もそうだし、イメージできなかったんですよ。でも、配信リリースした3曲に今一度、光を当てたくなったというか、収録しないとなかったことになるような気がしたんですよね。踊り場にいる曲たちになっちゃいそうだなと思っていたタイミングで『怪物園』というタイトルを思いついて、これなら収録できるな、似合うなと思った感じです。
──アルバム収録曲を聴く前にジャケットを見たんですけど、これまでのLM.Cのポップなイメージとは違うギョッとするインパクトがあったんですよね。
maya:確かに。
──このオブジェの中が怪物園なのかなと思わせるような。なぜタイトルを『怪物園』にしたんですか?
maya:今までのアルバム同様、閃きでしかないんですけど、自分的に分析するとLM.Cとしてこれまでと少し違う感触の作品にしたいと毎回思っているので、そういう流れですかね。今まで漢字を使ったタイトルを付けたことがないので。以前からストックしていた言葉ではないです。
──そうなんですね。
maya:状況的に5周年や10周年のような雰囲気で継続的に活動ができていたら、去年は15周年イヤー開幕のタイミングだったので、もう少しLM.Cらしいタイトルだったり、楽曲になったと思うんですよ。LM.C的わかりやすさみたいな。だけど、もう、それは関係ないなという感じですね。
──関係ないというのは?
maya:15周年という節目からは吹っ切れたという。
──アニバーサリーとは関係なく、この曲たちが今のLM.Cなんだというスタンスですか?
maya:そうですね。意図はしていないです。
──Aijiさんは「開園」で始まって「閉園」で終わる構成やアルバムタイトルをどう受け止めたんでしょうか?
Aiji:いつもタイトルはmayaから提案されるんですけど、自分が作った曲に歌詞が乗ってくるのと同じように受け身なんですよね。自分が腑に落ちたらそれでいいし、違和感があったら伝えるんですけど、今回の『怪物園』は腑に落ちた感じでした。さっきmayaが言ったように今までと同じことを繰り返すのは簡単なんだけど、それはやりたくなくて。その時々に合った新たな表現を探すべきだと思っているので、このタイミングでは小洒落た英語のタイトルだったら逆に違和感を感じたかもしれないですね。全く自分の範疇にない言葉だったんですけど、“こういうことだよね”って自分的には思えました。
──どういうところで附に落ちたんですか?
Aiji:今までだったら絶対につけないタイトルで、収録予定曲を頭の中で鳴らした時にしっくりきたんですね。今まで以上に1曲1曲に大事に向き合ってきた結果、シングル級の説得力のある楽曲が揃っていたから。自分たち的にはどれも怪物級の曲。どれをリード曲にしてもいいぐらいの作品になっていたので、自分の中で合致したというのはありましたね。アルバムのタイトルって、その時期その時期を象徴する言葉でもあると思うんですよ。そういう意味でも『怪物園』は15年目のLM.Cにとってふさわしいというか、ハマった感じがしました。
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