【ライブレポート】PENICILLIN、30周年の幕開け
PENICILLINの30周年の幕明けを飾るライブ<PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2022『The beginning of 30th anniversary』>が、2月13日(日)に行われた。
◆ライブ写真
会場は新宿ReNY。頭上にはシャンデリア、そしてステージを覆うは真紅の幕と、その華やかな内装は30周年の口火を切るに相応しい会場と言えるだろう。
定刻を少し過ぎて姿を現したPENICILLINの面々、赤と黒を基調として色合いに統一感を持たせており、HAKUEI(Vo)はレースの装飾とゴーグルが施されたハットに近年のトレードマークともなっているアイパッチ。インナーには大きな唇がプリントされている(思わず“NICE IN LIP+L!”と心の中で叫んでしまった)。千聖(G)はハットに黒のレザー調のコート。演奏面の配慮であろう、袖のないデザインだ。O-JIRO(Dr)は最早こちらもトレードマークと言えるであろうベレー帽にベスト、そしてネクタイの装い。サポートのCHIYU(B)は柄シャツにジャケット。同じくサポートのShige(Key)はドレッドヘアーにハットと言う出立ちであった。
前日に行われたDay-1はまさかのインディーズ時代の曲が中心となるセットリストであったため、今宵はどんな曲を聴かせてくれるのだろうと興奮高まる中、本日はハードロッキンに疾走する「Desire」からのスタート。千聖の愛機であるフライングVシェイプのギターから繰り出されるハーモニクスを交えたリフが鋭く耳をつんざき、熱く心を扇動する。HAKUEIの煽りに続いては初期の代表曲の1つであり、ファンクラブ名としてもお馴染みの「Quarter Doll」。クローズドハットを中心としたビートロック調の演奏ながら、そこに乗せられたテンション高めのメロディとのコントラストがたまらない。千聖の十八番である光線銃ギターソロが早くも飛び出し、歌詞の通り“あなた(ここではステージ上のPENICILLIN)にしばられてもう動けない”状態となってしまう。そしてヴィジュアル系の王道である食い気味の進行が心地良い「Brand New Lover」だ。いきなりの初期曲3連発には目眩を覚える程。
早速の何とも贅沢なセットリストに陶酔するオーディエンス。それが盛大に彼方へとぶっ飛ばされたのが本日最初のMC。なんとHAKUEIは開口一番場内の暖房調節について語り出したのだ(笑)。客席への気遣いからなのは勿論であるのだが、場内スタッフへの言葉から始まるMCはあまり聞いた事がない。当日は生憎の雨模様であった為、「お足元の悪い中お越し下さりありがとうございます」と再び気遣いの言葉をかけてくれる。「昨日今日の2日間から30周年イヤーと言う事で、ライブや新曲などの動きが始まる」と期待に胸が高まる発言や、「本当の結成日は明日の2月14日、モテない男4人が結成したバンドだったので」という裏話も聞かせてくれた。裏話ついでに明かされたのは薬品としてのペニシリンは世界初の臨床実験が成功した日として2月12日がペニシリンの日とされているが、HAKUEIの母親の誕生日も2月12日なので、強引ではあるがちゃんと繋がっているとの事であった。
続く曲目についても前日と同様にインディーズ時代の楽曲が中心となったセットリストである事が明かされ「知らない人は乗れないかもしれないけどどうせ今は乗っちゃいけないし、でも自分達の歴史を彩った大切な楽曲たちなので、楽しんで頂ければ!」の声と共に場内に妖しく響くのはギターの単音リフ。フライングVからエクスプローラーシェイプへと千聖はギターを持ち替えている。「冷たい風」だ。縦ロール姿のHAKUEIが何とも美しいミュージックビデオも印象的であるが、“いつまでも いつまでも”と切なく歌われるサビに合わせ艶かしく動く眼前のHAKUEIは時を重ね表現力や妖艶さに深みを増すばかりだ。
O-JIROの4つ打ちのドラムで曲間を繋ぎ演奏された「FIORE」はイタリア語で“花”の意味を持つ楽曲。少し跳ねた様なリズムと異国情緒漂う雰囲気に、CHIYUも指弾きによる柔らかなトーンで寄り添っている。と、ここでいきなり一際ダークな「マゾヒスト」が投下。ひたすらにインモラルな曲調はPENICILLINの真骨頂の1つとも言えよう。狂気を感じさせるツタツタ系のリズムを刻むO-JIROがそのギアを更に上げていき、HAKUEIは張り裂けんばかりのシャウトを聞かせる。曲が終了を迎えるや否や鳴り止まぬ拍手。こんな熱演で魅せられたらそりゃそうもなる。
2度目のMCはO-JIROと千聖のターン。互いの装いを「強そうなスナフキン(千聖)」、「上等なおぼっちゃま(O-JIRO)」とやり合ったり、初期の爆笑エピソード(当時は雑誌の自己紹介アンケートに“暗く、ダークです”と意味不明な事を書いていたらしい)を披露してくれたりと、そこは最早トークショーさながら。
「そろそろ新しい曲も」とHAKUEIの仕切り直しで続くはうねるベースがヘヴィな「パライゾ」。光溢れる「still alive」でのO-JIROはブレイクの合間に笑顔でスティックを掲げており、こちらも思わずマスクの下でにっこりである。ポップでありながら一種の荘厳さも感じさせる「Little Love Story」ではもうライブが後半へ差し掛かっている事に気付き、少しだけ寂しくなってしまった。
今度はHAKUEIが結成からの歩みを振り返る形でのMCを挟み、渋谷公会堂での初ライブの感想などを聞かせてくれた。煽りをCHIYUに任せ後半戦がスタート。「Melody」である。個人的には彼等の冠番組『ペニシリンSHOCK』のエンディングテーマとして親しんでいた為、演ってくれてめちゃくちゃ嬉しかったです終盤のギターソロが大好きなんです…と、筆者の文体にも乱れが生じた所で最新の暴れ曲「Just a kiss on your 3rd eye」と初期の暴れ曲「Chaos」を続いて叩き付けると言うドSなセットリストで本編は終了。
アンコールでは30周年記念Tシャツに着替えた面々、お祝いのケーキに「景気がいいね」と返す千聖や続く曲の歌詞をど忘れしたせいでなかなかステージに戻ってこないHAKUEI(装いはレザーのベレー帽にアディダスのポンチョを合わせると言うセンス爆発コーデ)と微笑ましい展開であったが、「10年振りくらいかな…心を込めて歌います」と演奏されたのはまさかの「マザーグース」である。実にメランコリックな千聖のアルペジオとShigeのピアノとHAKUEIの歌声。郷愁を誘う感動的なサプライズに酔い痴れる会場。その余韻と、そしてPENICILLINの続いて行く旅路を祝福するかの様な「Virginal」には心を抱き締められる思いであった。
ここで中継による配信は終了し、場内来客者のみに「Fly」と「Imitation Queen」のコンボがまたもやドSに叩き付けられ、ライブは狂乱のクロージングを迎えた。
今後の動きとしてアルバム毎の振り返りではなくツアーのセットリストを振り返ると言う趣で開催される関東サーキットの発表や、各々ソロ活動に関して、HAKUEIは俳優・佐藤流司がRyuji名義で率い、自身がツインボーカル、トータルプロデューサーとしてが参加するThe Brow Beatのメジャー1stアルバムの発売も控えていたり、千聖はソロプロジェクトのCrack6のファンクラブ旅行が2月26日と27日に開催予定だったりと、PENICILLINの動きは本体やソロ活動に至るまで止まらない。本公演にカメラ収録が入っているとの事で映像化の可能性も示唆されており、そちらの続報もとにかく待たれる所だ。
取材・文◎庄村聡泰
撮影◎Lestat C&M Project
セットリスト
2月13日(日)
新宿ReNY
01. Desire
02. Quarter Doll
03. Brand New Lover
04. 冷たい風
05. FIORE
06. マゾヒスト
07. パライゾ
08. still alive
09. Little Love Story
10. Melody
11. Just a kiss on your 3rd eye
12. Chaos
—Encore1—
01. マザーグース
02. Virginal
—Encore2—
01. Fly
02. Imitation Queen
ライブ情報
4月02日(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!! 開場17:30/開演18:00
4月16日(土) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 開場17:30/開演18:00
4月17日(日) 柏PALOOZA開場17:30/開演18:00
4月23日(土) 東京キネマ倶楽部 開場17:15/開演18:00
全自由(整理番号順の入場):9,000円(税込/D別)
・ Return of Japanese Ultra Wars Tour
・ Return of NUCLEAR BANANA Tour
・ Return of JOKER IN A POT Tour
・ Return of Happy Flower Circus Tour
過去30年間で行われたtourの中から、1日ごとにいくつかのtourをフォーカスした形のライブをお届けします。
※どの日にどのツアーが来るかは後日発表になります
◆PENICILLIN オフィシャルサイト
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