【インタビュー】佐藤智広、ストレートでポジティヴなメッセージ『Moment』

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ミュージカルや舞台で活躍中の俳優・佐藤智広がアーティストデビュー。デビューミニアルバム『Moment』を2022年2月22日にリリースした。ロック色のある表題曲「Moment」、ミドルテンポのポップナンバー「To The Sky!」、包容力のあるバラード「信じるままに」といったバラエティに富んだ楽曲群で放たれるのは、ストレートでポジティヴなメッセージ。晴れやかなヴォーカルが、その言葉たちを力強く、かつ優しく色づけてゆく。コロナ禍に一足早い春風を吹かせてくれるような作品に仕上がった。このインタビューでは『Moment』についてはもちろん、彼と音楽の関係性や、彼の持つポジティヴィティなどに言及。新しいスタートに立った彼のフレッシュであり思慮深い言葉たちを味わってほしい。

■沈んでしまったり落ち込むことはあまりない
■落ち込んでる時間がもったいないなと思っちゃうんです


――Twitter拝見しましたが、レコードプレイヤーをお持ちなんですか?

佐藤智広(以下、佐藤):そうなんです。僕がよく行っている喫茶店で昔の中古のレコードを2~300円で売っていて、それを聴くために4年くらい前にレコードプレイヤーを買ったんです。今使っているプレイヤーは2台目です。

――となるとレコードは佐藤さんの生活でだいぶ馴染みのあるアイテムなんですね。

佐藤:もともとファッションやコーヒーカップもビンテージなものが好きなのもあって、のめりこんでいきましたね。再生するとプツプツとした音が入ったり、盤を裏返したり、置いておくだけで存在感があるところとか、すべて趣がある。デジタル物にはない面白さを感じています。

――佐藤さんはミュージカルでも活躍する俳優さんで、もともと歌も大好きとのことですが、未成年時代は音楽とどのように付き合っていたのでしょう?

佐藤:もともと家族全員がよく音楽を聴いているタイプだったので、僕も自然と音楽は身近な存在になっていきました。観ているドラマの主題歌や、作品のオープニング、挿入歌をよく聴いたり、カラオケで歌ったりしていました。歌は楽しくて元気になるし、違う言語を話す人とも“この曲知ってる!”と心を通じ合わせることができる。素敵なコミュニケーションでもあるところが魅力的だったんですよね。でも、もともと歌はそんなに得意ではなかったんです。

――えっ、そうなんですか。

佐藤:“声がいいね”と言われることは多かったんですけど、“歌がいいね”と言われることがなかったんです。でもやっとここ1、2年くらいで“歌がいいね”と言ってもらえるようになりました。ミュージカルの舞台に立つようになって、ほんとちょっとずつ“前より良くなってるね”や“いいね!”と言ってもらえるようになっていって……。だから“お客様の前で歌う”という経験が自分を育ててくれたと思います。

――“100回の練習よりも1回の本番”とはよく言いますよね。

佐藤:似たようなことを演出家さんにも言っていただきました。だからレッスンもしっかりしつつ、まだまだ未熟かもしれないけどどうにかしてでも舞台に立って、そのときの自分が持っている力を最大限に発揮できるようにしてきました。やっぱり実際舞台に立つと、得られるものがすごく多いんですよね。それは間違いなくお客様の力だと思うんです。

――ミュージカルの現場が、佐藤さんの歌への向き合い方にも影響を与えているということですね。

佐藤:いろいろなタイプの演出家さんや音楽家さんがいらっしゃるので、“音がずれても全力の気持ちで歌え”というタイプの方も、“気持ちを込める前にまずキーやリズムを合わせよう”というタイプの方もいらっしゃるんです。でも良いものにしたいという気持ちはみんな同じだし、僕としても“熱い気持ちも音の安定感もあれば良い歌になるんじゃないか”と思ったので、それを目標にトライアンドエラーを繰り返して……その結果が今だと思います。もちろんここからまだまだ成長していきたいと思っています。


▲デビューミニアルバム『Moment』【Type A】


▲デビューミニアルバム『Moment』【Type B】


▲デビューミニアルバム『Moment』【Type C】

――そんな絶好とも言えるタイミングで、佐藤さんのアーティストデビューが決定しました。提案を受けたときの率直なご感想は?

佐藤:予想だにしない出来事だったので、まずはとにかく驚きでした。もちろん役者以外にもいろいろなことをしていきたいと思っていたんですけど、これまで自分ひとりで歌ったことがないので、自分だけの歌がこの世に生まれることに現実味が持てなくて……。だから不思議な感覚でしたし、違う世界に飛び込むんだなとも思いました。でもレコーディングをしたときに“アーティストとしてデビューするんだな”と実感して。自分の声が入ったことで“自分の歌ができた!”と思えたんですよね。

――ミュージカルでの歌唱と通ずるものもありますか?

佐藤:歌詞の世界をしっかりと自分のなかに落とし込んで表現するので、芝居の要素はあるのかなと思います。でもささやくように、つぶやくように歌えたり、ブレスで表現できるのはアーティストかも。ミュージカルは客席にいるお客様に届ける必要があるので、静かなシーンでも一定の声を張るんです。

――マイク前の表現と、舞台上の表現という違いでしょうか。

佐藤:それはあるかもしれません。だからささやくような歌唱法は、僕にとっての課題のひとつでもありますね。

――表題曲の「Moment」は打ち込みと生楽器で作られたロック色のある楽曲ですが、初めて聴いたときどのような印象をお持ちになりましたか?

佐藤:ナチュラルな精神状態のときに聴いて元気になれる曲なので、まず“早く歌いたい!”と思いましたね。だから何気なく口ずさんじゃうし、いつでも聴ける曲でもあると思うんです。僕も“コーヒーを飲むときはこういうテイストの曲がいいな”みたいに、そのシチュエーションに合った曲を選んだりするんですけど、いつでも聴ける曲も良いなあという発見がありましたね。

――爽快感のある華やかなメロディと、佐藤さんの力強く透明感のあるヴォーカルの相性もいいと思います。

佐藤:歌っていてすごく気持ちいいんです! センチメンタルな気持ちになることも一切なくて。気持ちいい太陽が照り付けるような、すべてをさらけ出せる感覚があるメロディだと思っています。お客様をはじめいろんな人から“佐藤智広っぽい曲”と言っていただくし、自分でもそう思うので歌いやすいんです。ライヴで歌うときも、お客様に届ける前に自分が楽しんでしまうくらい(笑)。

――ははは。ということは佐藤さんは歌詞にあるような、ストレートでポジティブな要素をお持ちである?

佐藤:もちろん悩むことはあるんですけど、沈んでしまったり、落ち込むことはあまりないですね。落ち込んでる時間がもったいないなと思っちゃうんです。歌詞にある《今を生きよう そう大切に/二度と来ないこの瞬間を》とか、本当にそうだな~!って。もちろん未来のことを考えたり、過去に思いを巡らすのも大事ですけど、そればかり考えているのもどうなの? 今を楽しむところから始めよう! と普段から思っているんです。

――歌詞はファンの方々へ宛てたお手紙のようにも響いてきました。

佐藤:聴いている人に元気になってほしかったし、“あなたはひとりじゃないよ”と思いながら歌いました。やっぱり、人が喜びを感じられる瞬間って、“ひとりじゃない”と思えたときだと思うんです。僕もすぐそばにいることはできないかもしれないけど、いつもSNSで何かしらの投稿をしていますし、もちろん仕事も頑張りますし。それこそ「Moment」を聴いて、僕を近くに感じてくださったらうれしいですね。

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