【インタビュー】Ran、Split Style作品『世存』が示した「何かに依存しないと生きていけない」
■何回かに分けて配信するというのは
■毎月楽しみがある感じ
──日暮愛葉さんがアレンジした「そんなこと」は、“言う度に遠ざかる”というフレーズが印象的です。人同士の距離感、好きだからこそ持続させるのが難しい関係性を描いた曲と解釈しました。
Ran:あの、蛙化現象ってご存知ですか?
──いえ。初めて聞く言葉ですが、どういう意味ですか?
Ran:すごく好きだった人と結ばれたら、急に気持ちが冷めちゃう現象です。それをテーマにしたのがこの曲で。気持ちが冷めてしまったことを自分のせいにしたくはないんですよ。自分が悪いと思いたくないから、相手の悪いところを見つけるんです。“付き合うようになったら、あんたそれで満足しているんじゃない?”と思ったり。本当はそう思っているのは自分自身なのに。そういうことをテーマにしました。
──その感覚、おそらく多くの人に身に覚えのあることでしょうね。
Ran:絶対にあると思います。
──人間の持っているこういう矛盾って何なんですかね?
Ran:そうですよね。“幸せなんだから、それでいいじゃないか”ってなかなかならないところが人間にはありますよね。
──かなり難しいテーマですけど、良い形で表現できた手応えはありますか?
Ran:私は曲を書く時にテーマを決めるんですけど、いろんな方向に行ったり来たりしちゃうことが多いんです。でも、「そんなこと」は蛙化現象というテーマのもとに一貫して描けたんじゃないかなと思っています。
──“こういうテーマを描いてみたい”とか、いろいろとストックしているんですか?
Ran:携帯にメモしています。
──機械音痴だと先ほどおっしゃっていましたが、うっかり消しちゃったりは?
Ran:それはさすがに消しません(笑)。
──では、次の曲のお話へ移りましょう。岩崎慧さんが編曲した「愛おしい日々」は、活動初期にレコーディングしたんですね?
Ran:山崎あおいさんに楽曲提供していただいて、歌詞は大森祥子さんと共作したのが2年くらい前だったと思います。大森さんのサビの歌詞に“泣いても笑っても叫んで声失くしてでも”と書かれていて、そこからヒントをいただいて私がAメロの部分とかを書きました。“何かを守りたい”というのがテーマになっていて、“私と似たようなみなさんに、いかにエールと勇気を届けられるか?”ということもすごく考えました。
──この曲も抱いている想いをかなりストレートに歌詞にしていますね。
Ran:そうなってきたのは最近なんですよね。以前は“いかに回りくどく表現するか?”ということにハマっていて、何を伝えたいのかわかりにくい曲をずっと書いていたんです。そういうことを打破することについて考えた時、自分の中にある悩みや怒りもテーマにして曲を書くようになりました。
──ソングライティングのスキルが上がってきているのを、今回の制作を通じて感じているんじゃないですか?
Ran:テーマに沿って作るというのがあんまり得意なタイプではないと思っていたんですけど、意外とやってみるとできるものだなと思いました。
──「愛おしい日々」をレコーディングしたのはかなり前ですが、昔の自分の歌を聴くとどのようなことを思います?
Ran:若い、ですかね(笑)。19歳とかの時ですから、改めてこの曲を聴いて“声自体が若いな!”って思いました。ライブでもあまり披露したことはなかったので、これを機に演ろうかなと考えています。
──昔作った曲のストックって、まだ結構あるんですか?
Ran:あるんですけど、それは大体ボツです(笑)。
──なるほど。宮永治郎さんと白神真志朗さんがアレンジした「ビーナス」も、昔作った曲ですよね?
Ran:まだ福岡にいた頃に作った曲です。
──相手と同化するというか、食らいつくすくらいの激しい愛情の曲として解釈したんですけど、合っています?
Ran:はい、“男の人の妄想”をテーマにしました。ずっと弾き語りで披露していた曲です。
──全8曲が様々な切り口で、多彩なテーマの曲が並んだミニアルバムになりましたね。今作を聴いて、どのようなことを感じています?
Ran:これを作るまでいろいろなことに悩んでいたんですけど、まとまったものを聴くと気分がいいです(笑)。復活してきました。自分の日常を様々な形で切り取って、こうして曲として残せて良かったなと思っています。
──そしてボーナストラックの「ありがとうデビル」は、番組に対する愛情がとても素直に表現できましたね。資料によると「tvk『関内デビル』のレギュラーコーナー“あなたの思い出、歌にします”の最終回に、マスターこと大場英治と共作した作品をフル尺に作り直し、メインボーカルをRanと大場英治が担当、さらに番組スタッフがコーラス参加した作品」とのことですが。
Ran:『関内デビル』でレギュラーをやらせていただいていたんです。
──“エビ中推しになりました”って歌詞も、まさにそのまま?
Ran:はい(笑)。番組に出演する前はエビ中の名前は知っていたんですけど、一緒に番組をやらせていただく中で音源を聴いて、“めっちゃ歌上手い!”と思って、それで大好きになりました。
──このミニアルバムはボーナストラックの「ありがとうデビル」を含めて全8曲。2021年12月10日、2022年1月14日、2月18日の3回に分けて配信するというのは、新鮮なリリース方法ですね。
Ran:最近はCDよりもサブスクで音楽を聴くことのほうが一般的に増えているので、こういうリリースの仕方になったんです。でも、最終的に1枚の作品として完成させたいという想いもあって。何回かに分けて配信するというのは毎月楽しみがある感じにもなるから、いいことだなと思っています。
──『月刊Ran』みたいな感じ?
Ran:まさにそんな感じです。
──『世存』の完成を経て、何か今後に関して考えていることはありますか?
Ran:今回、いろいろな方と制作をご一緒して、こういう風に作ることができて楽しかったんです。もっとコライトとかやってみたいですし、新しい作り方にもどんどん挑戦していきたいですね。
取材・文◎田中大
■ミニアルバム『世存』
Music Label:asistobe
1. 夜逃げ ※2021/12/10(金) 配信リリース
2. sheets ※2022/2/18(金) 配信リリース
3. 17 ※2022/1/14(金) 配信リリース
4. 廃棄物 ※2022/2/18(金) 配信リリース
5. そんなこと ※2022/1/14(金) 配信リリース
6. 愛おしい日々 ※2022/2/18(金) 配信リリース
7. ビーナス ※2022/2/18(金) 配信リリース
8. ありがとうデビル ※2021/12/10(金) 配信リリース
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