【インタビュー】Ran、Split Style作品『世存』が示した「何かに依存しないと生きていけない」

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■日常にある様々な依存を
■切り取った作品になったらいいな

──そういう日々を経ながら、2020年8月にデビューミニアルバム『無垢』をタワーレコード内の Eggsレーベルよりリリースしたわけですね。今年3月には渋谷WWWと地元・福岡Queblickでワンマンライブも実施しましたが、どうでした?

Ran:あんなに大きい会場で歌ったのは初めてだったので、緊張しましたね。ライブ前は簡単に言うと病んでいたくらい(笑)。でも、演っている時はすごく楽しくて。バンドの方々と一緒のステージは初めてだったんですけど、演奏しながら“ひとりじゃないんだな”ってことを感じながら歌うことができました。

──ちなみに、路上での弾き語りライブは経験したことあります?

Ran:上京前、高校3年生の時に福岡でやっていました。

──路上ライブって緊張しますよね?

Ran:私は逆なんです。通り過ぎていく人たちって、あんまり路上ライブしてる側のことを気に留めないじゃないですか? そう思うとラクで、楽しかったです。

──なるほど。ライブをする喜びと曲を作る喜びとでは、目覚めたのはどちらが先でした?

Ran:曲を作る喜びだったんですけど、今は両方が楽しくなりました。


──今回のミニアルバム『世存』ですが、まずはこのタイトルの言葉に込めた意味を教えてください。

Ran:収録曲たちを俯瞰して見たときに、“誰かに依存したい”ということだったり、“何かをすることに依存してる”ことだったりを描いている、と感じたんです。例えば私はすごく悲しいことがあった時、曲を作ることに依存するんですね。曲を作って言葉にしないと発散できないというか。そういうことって誰にも当てはまることなのかなと思うんです。で、“世の中のみんなが何かに依存している”と考えた時に、『世存』という言葉を思いついたという。決して、依存することが悪いと言っているわけではないんです。私も何かに依存しないと生きていけないですから。日常にある様々な依存を切り取った作品になったらいいなって思って、タイトルを『世存』にしました。

──宮田“レフティ”リョウさん、石井浩平さん、川島章裕さん、日暮愛葉(SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER)さん、宮永治郎さんといった様々なアレンジャーさんが参加していますね。

Ran:偏らずにいろいろなタイプの曲を出していきたいと思っているんです。

──「夜逃げ」のアレンジは宮田“レフティ”リョウさん。“誰かがいないと自分が消えてしまいそう”という形の依存が描かれていると感じました。

Ran:最初に、“小雨に打たれた前髪をかきあげる間に 君はいなくなった”というフレーズを思いついて、“ここからどう物語を展開させよう?”と考えた時に、“こういう言葉が浮かぶということは失恋しかない”と(笑)。だからこういう歌詞にしていった覚えがあります。

──Ranさんの歌詞は、印象的なフレーズがたくさんありますよね。“深夜のコンビニでポパイ立ち読みした”とかも、風景がすごく浮かびます。

Ran:なぜかこういう歌詞が出てきちゃうんですよね(笑)。急いでめっちゃ走っている時とかに歌詞が浮かんで、“メモしたいのに!”ってことも多くて。曲作りをするようになる前はそういうことは全然なかったんですよ。“今夜は何食べよう?”みたいなことしか考えていなかったですから(笑)。

──深夜のコンビニでポパイを立ち読みしたこともないですよね?

Ran:ないです。私は抽象的な内容を歌うことが多いので、“コンビニ”と“ポパイ”という固有名詞を入れることで、歌詞にもう少しリアリティを持たせたり。

──この曲、おそらくRanさん自身も気に入っていますよね?

Ran:はい、“キタコレ!”って思いました(笑)。

──ははは。レフティさんにアレンジしていただく際に、どのようなイメージをお伝えしましたか?

Ran:どの曲もそうなんですが、私から「こういうサウンドにしてください」とお伝えすることはあまりなくて。もちろん「こういうイメージで作りました」ということは言うんですけど、アレンジャーの方にメロディとか歌詞を見ていただいて、その印象をもとにアレンジしていただくことが多いですね。


──「sheets」のアレンジを手掛けたのはセカイイチの岩崎慧さんですが、曲も岩崎さんとのコライトですか?

Ran:そうです。一緒にスタジオに入って作っていただきました。Lo-Fi Hip-hopのYouTube動画を参考にしたんですけど、具体的な方向性があったというよりも、「日常を切り取ったような曲にしよう」みたいなことをお話しながら作った曲です。

──シーツについた残り香の描写とかを通じて、未練のような感情が伝わってきました。

Ran:そうですね。この曲は今回のミニアルバムに入れたくて、デモができてからすぐに歌詞を書いたんです。先日、岩崎さんに「楽しかったね」って言っていただけて。私も楽しかったので、コライトはまたやってみたいです。

──この曲のサウンドもそうですけど、打ち込みの音への興味もどんどん広がっているんじゃないですか?

Ran:私自身は機械音痴なので、そういうのは全然できないんですけどね。大事な書類をいつのまにかPCのゴミ箱に捨てちゃったりするので(笑)。

──ははは。「17」のアレンジは石井浩平さん。この曲は17歳の時に作ったんですか?

Ran:いえ。17歳の頃を思い浮かべながら書いた曲なんです。

──自分らしさを邪魔するものに対して、すごく腹を立てている歌詞だと感じました。結構強いトーンの言葉が多いですよね?

Ran:改めて歌詞を見てみるとそうですね。オブラートに包んでいた歌詞を、今おっしゃってくださった解釈が言い当ててくださいました(笑)。私は中高生の頃、メイクするのが好きだったんですよ。「いいな。私にもメイクして欲しい」って周りの子たちに言われたり。でも、羨ましがられることに対して嫌な感情を持つ人もいるじゃないですか? 私は“じゃあ、なんで自分でもやってみようと思わないんだろう?”と感じちゃって。当時思っていたそういうことが、今の年齢になってみるとバカバカしく思えて。それでこの曲を書いた覚えがあります。

──川島章裕さんにアレンジしていただいた「廃棄物」もそうですが、歌詞で激しい言葉を使うことが度々ありますよね?

Ran:そうかもしれないですね。かわいらしいメロディとコード進行が仕上がったら、逆に歌詞でガツン!とやってやろうみたいなことも思うんです(笑)。「廃棄物」はアコギの弾き語りでまず作ったんですけど、アレンジについては、“歌詞が暗いから、そんなどん底まで落として欲しくないな”って。

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