【インタビュー】Ran、Split Style作品『世存』が示した「何かに依存しないと生きていけない」
Ranが12月10日より配信リリースするミニアルバム『世存』は、全8曲を月1回計3回のペースで順次数曲ずつ配信していくというもの。この“Split Style”形態という新たな試みは、1曲単位で聴くことの多いストリーミング/ダウンロード時代に、ストーリー性や多面性を持たせた複数曲をアルバムとして聴いてもらうために実施されるものだ。
◆Ran 画像 / 動画
人間の営みの中にある様々な“依存”を切り取ったミニアルバムが『世存』だ。山崎あおいの楽曲提供参加や、セカイイチの岩崎慧とのコライト制作(共作)をはじめ、アレンジャーとして宮田“レフティ”リョウ、石井浩平、川島章裕、日暮愛葉(SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER)、宮永治郎が参加するなど、多彩な面々が全8曲に幅広いサウンドを響かせる。そして、斬新なテーマを独特な言語表現で奥行き深く描く歌詞が、どれも非常に味わい深い。シンガーソングライターとして着々と進化を遂げていることを明確に示している『世存』について、また音楽家としての成り立ちと素顔について、現在21歳のシンガーソングライターRanが語ってくれた。
◆ ◆ ◆
■新しいおもちゃを見つけた感覚
■ギターを弾くことは楽しかった
──中学3年生の時に、ある映画を観たことがきっかけでボーカルスクールに通うようになったそうですね?
Ran:『カノジョは嘘を愛しすぎてる』という映画を母と一緒に観に行ったんです。私は昔から歌うことがすごく好きで、歌うことに関連した仕事に就きたいと幼いながらも思っていたんですけど、その映画を観たことによって、自分で表現することに対して、より興味を持つようになりました。それでボーカルスクールに通うようになったんです。
──音楽はずっと好きだったんですね?
Ran:友だちとよくカラオケに行ったり。母が運転する車の中で、ずっとDREAMS COME TRUEさんの曲が流れていて、一緒に歌ったりしていましたね。あと、私は阿部真央さんが大好きで、憧れの人です。
──阿部さんも自分の気持ちを歌で表現する人ですから、そういうことへの憧れは漠然とRanさんの中にずっとあったんでしょうね。
Ran:そうなんだと思います。
──ボーカルスクールではどのようなレッスンを受けました?
Ran:個人レッスンが月4回、グループレッスンが月3回くらいありました。最初の頃は誰かの前で歌うことができなかったというか、そういうこと自体が想像もできていなかったんです(笑)。なので、最初の1年くらいはグループレッスンに参加せず、毎週ずっと発声練習をしていました。誰かが歌っていたりするのを観るのは好きだったんですけど、自分が歌うとなると、こうも感覚が違うものかと(笑)。
──スクールには歌が上手い人がたくさんいたんですか?
Ran:いっぱいいました。歌が上手いだけじゃなくて、ギターでオリジナル曲を作って歌う中学生の女の子がいたり。そういう人たちがいるスクールに通わせてもらえたことが、まずは嬉しかったですね。
──通い続ける中で、どのようなことを感じていました?
Ran:正直、「歌が上手い」と言われたことはあまりなくて。「声がいいね」とは言われたりしたんですけどね。それが悔しかったというか。だから、それよりも“自分を表現したい”と思って、曲を作るようになっていったんです。
──曲作りはギターで?
Ran:私、幼い頃にピアノを習いたかったんですけど、やらせてもらえなくて。だったらギターしかないと思って、勉強しました。
──コードを覚えたり、好きな曲のコード進行を追ってみたり?
Ran:最初の頃はFコードが押さえられなかったので、とりあえずFコードがない曲をネットで探して(笑)。ローコードのCとGばかりを弾く感じでしたね。でも、ギターを弾くというのは、“新しいおもちゃを見つけた”みたいな感覚があって楽しかったです。
──楽しみながら、“コードを並べてメロディをつけたり、メロディーにコードを当てはめていくと曲になるんだ”っていうことを知ったんですね?
Ran:そうでしたね。いろいろな方々の曲をコピーしながら、“コード進行は似たものがあって、そこに自分のメロディをのせたり、歌詞を書くことによってオリジナル曲が生まれるんだ”ということを学びました。
──ギターを始めた頃に練習した思い出の曲は?
Ran:阿部真央さんの「ストーカーの唄」です。
──パンチの効いた曲名です(笑)。
Ran:阿部真央さんのライブは主にバンド編成なんですけど、アンコール明けにギター1本で登場してこの曲を弾き語ることがよくあるじゃないですか。それが印象に残っていて、“弾いて歌いたい”と思って取り組んでみたら、コード進行がシンプルだったのでやりやすかったです。
▲ミニアルバム『世存』
──ギターを弾きながら歌うことには、すぐに慣れました?
Ran:めちゃくちゃ大変でした(笑)。“歌とギターを一緒になんてできないよ……”と思った覚えがあります。でも、やっていくうちにできるようになりましたね。そうやってある程度コードを覚えたところでオリジナル曲を書くようになったんです。
──作った曲のデモ音源をオーディションに送ったりして、デビューを目指すようなことも?
Ran:そういうことはしていなかったです。スクールのオーディションに出たりはしていたんですけど。
──作った曲は、スクールの先生に聴いていただいたんですよね?
Ran:配信リリースしたことがある「ねえ」という曲を聴いてもらったときは、「めっちゃいいね!」って言っていただきました。それがすごく嬉しかったんです。
──歌詞や文章を書くことは、音楽を始める前から好きだったんですか?
Ran:作文とかはあんまり得意ではなくて(笑)。それよりも何かを読んだり鑑賞するほうが好きでしたね。中高生の頃は東野圭吾さんのミステリー小説をよく読んでいました。
──自然に吸収してきたことが、歌詞に反映されるようになったんでしょうね。
Ran:そうなんだと思います。
──デビューのきっかけは、どのような感じでした?
Ran:私は福岡の柳川出身なんですけど、高校生の時に地元のタウン誌『月刊くるめ』さん主催の『いちごグランプリ』というミスコンに出たことがあって。そのコンテストの協賛を今の事務所さんがしてて、声を掛けていただいたことがきっかけになった感じです。で、高校を卒業してからすぐに上京して。
──デビュー前の2019年から東京や福岡を中心に7つ大学から学園祭への出演オファーを受けたそうですが、そのきっかけとなったのが、デジタルアーティストwatabokuさんがデザインを担当したTシャツやMカードのヴィレッジヴァンガード限定バンドル商品が話題となったことだったそうで。
Ran:そこから学祭とかにも出させていただけるようになりました。学祭は同世代の人ばかりで、楽しかったですね。
──2020年2月、Eggsにアップロードした曲が現在まで26万回以上再生されたり、デビュー前から順調でしたね。
Ran:ありがたいことに。作った曲への反応をいただけることが嬉しかったです。「蘇生」という曲を出したのがコロナ禍の前だったんですけど、コロナ禍の中でさらに聴いていただけるようになって。地方のラジオ局の番組にリモート出演した時に「あの曲、好きです!」とか言っていただいたり、広がっているということを実感しました。
──曲を作って表現することに憧れて音楽を始めたわけですから、やりたいことが着々と形になっているじゃないですか。
Ran:“やれてるな”という感覚があります。歌い始めた当初は、人前で歌えなかった私が、今こうなっていることを振り返ると、“すごいなあ”って自分でも思います(笑)。
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