Tempalay流のドープなエンターテインメントショー、<続・ゴーストツアー>ファイナル

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Tempalayが11月30日、東京・Zepp DiverCityで<続・ゴーストツアー>のファイナル公演を開催した。そのオフィシャルレポートをお届けする。

◆Tempalay画像

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それは、それは、非常に刺激的で濃厚な音楽体験だった。ステージから放たれる、比類なき音楽性を持つバンドサウンドだからこそ現出させられるグルーヴと呼ぶべきそれは、オーディエンスの空間認知と時間知覚にねじれを起こすようにしながらときに深く潜り込むようにうごめき、ときに爆発するように解き放たれ、ときにまったく新しい大衆性というものを提示するようにして会場に渦巻いた。何かものすごい表現の塊を直接的に触れたときに人は固唾を飲んで緊張すると同時に痛快な感覚が込み上げ、思わず笑ってしまうということがあるが、そういった妙趣に富んだカタルシスがこの日のライブにはあった。いやはや、Tempalayは完全に新次元に到達していた。

Tempalayは2021年3月に『ゴーストアルバム』をリリースし、その後、5月に全国11都市を回るツアーを実施。さらに9月にはバンドにとって初のCDシングルとなる「あびばのんのん」を発表し、この11月から名古屋、大阪、東京のZeppを巡る<続・ゴーストツアー>の開催に至った。『ゴーストアルバム』という作品は、Tempalay特有のサイケデリアにまみれた音像やリズムの快楽、そして不可思議なポップネスをまとった歌が、日本の古来の祭り事を想起させるようなオリエンタルかつプリミティブな気配をまといながら、「肉体的に死なないために脳内をあの世に飛ばしながら音楽の悦楽にひたる」というようなイメージを浮かばせる作品だった。さらに「あびばのんのん」は表題曲がテレビドラマのタイアップ(テレビ東京系ドラマ25『サ道』エンディングテーマ)という側面を持ちながら、カップリングも含めた新曲群はサウンドにおいても歌の面でもTempalayが次のフェイズに行く前にリラックスしてクリエイトした橋渡しのような役割を担っている印象がある。

「あびばのんのん」のリリース時のインタビューで小原綾斗は「『ゴーストアルバム』も時間が経過することで聴こえ方が変化していくのが面白いと思うから。作品がお店で展開されるタームって長くて3ヶ月周期だと思うんですけど、それを引き伸ばしたいという気持ちがあって。そのためのアプローチをちょっと考えてます。アルバムを忘れさせないことをしてみたいなって」と語っていたが、なるほど、その試みが今回の<続・ゴーストツアー>というわけだ。

11月30日、Zepp DiverCity。全公演ソールドアウトの中で迎えたツアー最終日の様相は、1曲目「甘蕉」から文句なしに仕上がっていた。ステージに立つメンバー──小原綾斗(Vo,G)、藤本夏樹(Dr)、AAAMYYY(Cho,Syn)、サポートメンバーのBREIMENの高木祥太(B)に加え、このツアーの全行程にはTempalayにとってクリエイティビティを共振する盟友であるPERIMETRON所属のMargtと神戸雄平の映像チームが帯同。ライブ冒頭の挨拶は彼らが作り上げた人権を得た人工知能という設定のロボットが担当した。めくるめくTempalay流のドープなエンターテインメントショーへ誘導するこういった舞台装置も含めて、オーディエンスがそこに没入していくのに時間は一切かからなかった。「あびばのんのん」に収録されている「甘蕉」は作詞をAAAMYYYが、作詞作曲を夏樹とAAAMYYYが手がけた楽曲で、まさにドープネスを極めるようなサウンドプロダクションが施されているが、これを1曲目にもってくるのも<続・ゴーストツアー>ならではであるし、恍惚とヨレている音楽像が生演奏で立体的に浮かび上がる気持ちよさは格別だった。続くM2「人造インゲン」では、まさに人造人間が跋扈するサイバーパンク的な世界を映し出す映像とライティングを効果的に使いながら、不穏な中毒性にまみれたサウンドスケープを描いた。M3「EDEN」の後半では楽曲全体がヘヴィなリフとなって転がっていくような迫力を響かせ、小原のボーカルの輪郭がこれまで以上にグッとクリアになっていると感じさせたM4「ああ迷路」という流れの序盤から、実に濃密だった。

M5「未知との遭遇〜my name is GREENMAN」の合体曲は、流浪の民のアフロミュージックとでも形容したくなるディープなアンサンブルによってシラフで十二分に酩酊できるトリップ感があった。あるいはオイルアートの映像美とともにどんどん深淵なグルーヴを作り上げていったM8「Festival」、レトロウェーヴ的なシンセワークと郷愁が脳内をくすぐるメロウな歌メロがひたすら心地よかったM9「Odyssey」、フリーセッション的なイントロからとびきりストレンジかつキャッチーな聴き応えを湛えたM10「忍者ハッタリくん」(MONO NO AWAREの玉置周啓が『ゴーストアルバム』のために描き下ろした漫画もビジョンで躍動した)など、中盤の流れも『ゴーストアルバム』の楽曲と過去曲を有機的に共存させてみせた。そして、「あびばのんのん」収録のM11「とん」を皮切りに、今やシンボリックな存在感をまとっているM12「大東京万博」、名状しがたい清涼感させ覚えたM13「シンゴ」やM14「GHOST WORLD」という後半の流れは、まさしく小原がインタビューで言及していた「時間が経過することで生まれる聴こえ方の変化」=ライブで楽曲を練り上げることでブラッシュアップされるアルバムの世界を見事に体現するものだった。







M15「あびばのんのん」前のMCで小原はこのツアーに関わったすべてのスタッフへ感謝を述べると、こう続けた。

「今年最後のライブです。2021年が終わりますね、あっちゅうまですね。お尻を拭いてたら、年が明けてますわ。あっちゅうまに10年、20年経って死にますんで、精一杯、今を無理くり楽しんでいただけたらと思います。ありがとうございました」

それはなんとも彼らしい口ぶりで、『ゴーストアルバム』の核心を言い当てるような言葉でもあったと思う。アンコールのない今回のツアーのラストに用意されたのは、2018年9月にリリースした『なんて素晴らしき世界』から、「Last Dance」。演奏を終えたメンバーがステージから去ったあとも鳴り止むことないロックバンド然としたフィードバックノイズは、2021年の最後にTempalayが到達した新次元を、そのさらに向こう側へと導く福音のようでもあった。

なお、本公演のセットリストのプレイリストはApple Music、Spotify、LINE MUSICの各音楽配信サービスで公開されている。

さらに、Twitterでは「#ゴーストライター」企画も実施中。Twitterでハッシュタグ「#ゴーストライター」をつけて、<続・ゴーストツアー>の感想やレポートを投稿すると、投稿者の中から抽選で30名に「ゴースト」にちなんで製作された「Tempalay特製 消えるボールペン」がプレゼントされる。ライブの興奮冷めやらぬ方も、ネタバレを避けてSNSでシェアを我慢していた方も、ゴーストライターとなって自由にツアーの感想をシェアしていただきたい。 

文◎三宅正一
撮影◎鳥居洋介

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プレイリスト“「続・ゴーストツアー」セットリスト”

https://tempalay.lnk.to/reghosttour

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