【コラム】AIの新曲「アルデバラン」、“朝ドラ放送前からすでに号泣”の声が続出する理由

AIの新曲「アルデバラン」が11月1日(月)よりスタートするNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の主題歌に起用されることは既報のとおり。同楽曲は10月4日放送のNHK総合『うたコン』で初披露されたほか、先ごろ放送されたNHK総合『わが心の大阪メロディー』にて『カムカムエヴリバディ』ドラマセット内での歌唱が実現するなど、11月1日のリリースに先駆けて精力的な露出展開が行われている。その結果、現在SNSを中心に“号泣必至の主題歌” “ドラマ放送前からすでに感動した”という声が続出、話題沸騰中だ。

◆AI 動画 / 画像

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、祖母、母、娘の3世代を描いたファミリーヒストリー。上白石萌音(橘安子役)、深津絵里(雉真るい役)、川栄李奈(ひなた役)の3人が主人公で、岡山、大阪、京都を舞台にラジオ英語講座の発展に人生をかけた姿を描く。主題歌はAIが歌うバラードナンバー「アルデバラン」だ。アラビア語で“後に続くもの”という意味を持つ言葉をタイトルに冠し、3世代・100年に渡る物語に美しく、切実な色合いを添えている。本稿では、『カムカムエヴリバディ』の放送スタートに先がけ、「アルデバラン」の魅力とAIが描き出すメッセージを紐解いてみたい。

「アルデバラン」の作詞・作曲を手がけているのは、森山直太朗だ。石川さゆり、木村拓哉、上白石萌音などへの楽曲提供も多い直太朗だが、AIとのタッグは今回が初めて。“森山直太朗の楽曲をAIが歌う”と組み合わせに意外性を感じる人もいるかもしれないが、相性は抜群。伝統的なフォーク、カントリーに根差した直太朗の音楽性と、R&B、ヒップホップをルーツに持つAIのボーカルが共鳴し、時代やジャンルを超えた普遍性へと結びつく──そのなかで生じる音楽的ダイナミズムもまた、「アルデバラン」の大きな魅力だろう。

アレンジは、桑田佳祐、椎名林檎などの数多くの楽曲を手がけてきた斎藤ネコ。素朴にして壮大なメロディを、クラシカルな弦やピアノを中心にした有機的なサウンドで見事に際立たせている。ゴスペルのテイストをたっぷりと注いだコーラスも魅力的だ。AIのソウルフルな歌唱にはやはり、ブラックミュージックの香りがよく似合う。

さらに記しておきたいのが、「アルデバラン」の核にあるのは“言葉”と“歌”である、ということだ。“君と私は仲良くなれるかな この世界が終わるその前に”から始まる歌詞は、『カムカムエヴリバディ』の物語と重なると同時に、今の社会の在り方とも繋がっているように感じる。たとえば“ペテンな時代に 負けないように もしも君が不確かな明日に心震わせているのなら 私だってそうよ friend”もそう。2020年から始まったコロナ禍によって、パンデミックに対する不安や恐怖だけでなく、その前から存在していた社会の歪みや問題が露わになってしまった。価値観や宗教、人種、国籍などの違いによる分断は広がり、経済的な格差も大きくなる現代において、多くの人々は心の拠り所をに失っているように見える。少し大げさかもしれないが、この状況において「アルデバラン」は、リスナーに対して救いの手を差し伸べているようなイメージをまとっているのだ。

そのことを象徴しているのが、“笑って笑って 愛しい人”というサビの歌詞であり、この言葉に圧倒的な説得力を与えているAIのボーカルなのだと思う。“一人じゃないから 私が君を守るから” (「Story」/2005年発表)、“君が笑えば もっともっと 幸せが広がる” (「ハピネス」/2011年発表)。リスナーに向けて真摯なメッセージを届けてきた彼女だからこそ、“笑って笑って 愛しい人”はこんなにも強く、温かく響くのだろう。

「アルデバラン」に対してAIは、「もちろんドラマの内容にもピッタリで。明るいだけでも暗いだけでもなく、レトロすぎず、新し過ぎず、どんな時代にも当てはまる曲だと思います。最後はポジティヴになっていくところもすごく好きですね」と手ごたえを語っている。

また、放送前にも関わらず、地上波の情報番組で紹介されたり、メイキング動画が公開されるたびに、YouTubeやTwitterには「“笑って笑って 愛しい人”で涙出そうになる。これ『カムカム』の良い場面で流れたら号泣するなー」「直太朗さん×AIさんだから、温かさと優しさと歌の力、最高レベル、最強の歌が誕生したことは間違いないです」「毎朝聴いたらみんな幸せになると思う」など、絶賛、感涙のコメントが数多く寄せられ、すでに反響を集めている。11月1日の『カムカムエブリディ』の放送スタートによって、この楽曲のパワーはさらに多くの人々に届くはず。「アルデバラン」の魅力──温かさ、力強さ、聴く者を包み込み、肯定する力──が日本中に響く。そんな美しい光景が、すぐ間近に迫っている。

文◎森朋之
撮影◎内田将二