【レポート】雨のパレード、10ヵ月ぶり有観客ライブ<Face to Face>が有機的な理由
12月25日、雨のパレードが一夜限りの有観客ライブ<ame_no_parade LIVE 2020 "Face to Face">をZepp DiverCity(Tokyo)で開催した。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。
◆雨のパレード 画像
2020年の彼らのストーリーが思い浮かぶようなステージだった。そのストーリーとは…。この年の1月、3人はライブを意識したアルバム『BORDERLESS』を発表した。そして翌月、アルバムツアーへ。主要都市はソールドアウト、他の会場もそれに近い状態。上り坂のバンドならではのムードだ。それがコロナで中断。東京、大阪、福岡、鹿児島の各公演を残して中止になってしまった。
作品づくりの段階からライブを見据え、お客さんの期待もいつになく高まっていた流れが突然断ち切られる。その口惜しさはどれほどのものだっただろう? けれどもそこでバンドが下した決断は痛快だった。“じゃあ、年内にもう1枚アルバムを作ろう”。7月から制作開始。8月には配信ライブを行い、無観客であることの難しさを感じたりもした。そして12月23日にニューアルバム『Face to Face』をリリースして、その2日後、Zepp DiverCity (Tokyo)で10ヵ月ぶりの有観客ライブが行われる運びとなった。
1階のフロアにもイスを並べ、1席ごとに空席を設けた場内はもちろん満員になっている。BGMはクリスマスを意識してかメロウなR&B系が静かに流れる。そこへ降りた幕の向こうからサウンドチェックのブリブリとしたベースが聴こえて、アッと思った。今回はサポートにキーボードとベースを入れてのライブとは聞いていたが、こんなにロック然とした熱いサウンドで演ろうとしているとは! これまでは、その音源と同様に打ち込みまじりが似合うクールなステージを展開してきた彼ら。しかも新作はその打ち込みで出来ることをフルに活用した作品。にもかかわらず、今夜はとても有機的な内容になりそうだ。
果たして。1曲目が始まった瞬間から生演奏を強く感じさせるサウンドになっていた。サポート勢の、特に元Sawagiのベーシスト・雲丹亀卓人の太い音に煽られてか、大澤のドラムもドスドスくる。お客さんの前で叩ける喜びをそのまま表しているかのように。そして福永は「今日は集まってくれてありがとう」を連発。一方で今やギターとキーボードが半々ぐらいになった山﨑は、二つの楽器の間を嬉々として行き来している。
トリッキーな新作の楽曲の変容も印象的だった。アニメのエンディングテーマにもかかわらず歌中で逆回転のストリングスがのたうつ「IDENTITY」。でも当夜のそれは、生身の音たちの中でちょっとしたフックぐらいに聴こえた。それからアルバムの冒頭で、歌より大きい奇妙な音をぶつけていた「scapegoat」。これもその部分がまったく気にならない歌モノに転じていた。また新作でもライブでも中盤で披露された「Have a good night」。これぞ宅録といった作りの同曲も、山﨑がフルートの音でソロを弾き続けることで福永の歌も生々しさが加わっていた。
後半、お客さんが声を出すことを禁じられていることを承知しつつ、福永が煽っていく。その都度、拍手で応える客席。そこには一抹の悲しさも感じたが、いざ曲が始まれば思い思いに踊る人、人、人。隣の席が空いているぶん、かえってみんな自由に体を動かせている気がする。「心の中で歌ってください」というひとことから始まったラス2の「BORDERLESS」も、あたかも全員が“oh, oh, oh”と声を上げているかのような空気だった。
そして最後は「Child's Heart」。新作の中でもっとも“生楽器”を意識したというこの曲は、この日のステージの方向性と相まっていちばん自然に響いた。当夜のテーマ曲のようだった。
バンドのディスコグラフィー中、最高にコンピュータを駆使したアルバム。それを持ってのライブが彼らのバイオ上いちばん有機的だった。作品の方向性を“再びお客さんの前でできる”という喜びが上回った。これは2020年という年だから観ることが出来た、貴重な出来事かもしれない。
取材・文◎今津 甲
撮影◎Ray Otabe
■<ame_no_parade LIVE 2020 "Face to Face">12月25日@Zepp DiverCity(Tokyo) セットリスト
02. Summer Time Magic
03. 1969
04. IDENTITY
05. scapegoat
06. Strange GUM
07. Tokyo
08. partagas
09. Have a good night
10. Dear Friend
11. Shoes
12. resistance
13. one frame
14. new place
15. Count me out
16. Flash Back
17. Ahead Ahead
18. BORDERLESS
19. Child's Heart
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