【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、ループペダルがもたらした刺激「好きなスタイルを全部集約できる」

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■みんな一緒に戦っているんだ
■っていうところがひとつの軸

──AKIHIDEさんのアルバムには音楽をより楽しめるコンセプトストーリーブックが付いていますが、前アルバム『星飼いの少年』は楽曲と物語が必ずしもリンクはしていなかったですよね。今作はどうでしょう?

AKIHIDE:今回はコロナ禍が軸になっていて、まず“繰り返す”という意味の“LOOP”という言葉が浮かんで、8枚目のソロアルバムなので“8”の文字を横にすると“∞”だし“LOOP”の“OO”だし、メビウスの輪みたいだなって。しかもループペダルという機材にハマっているから、全部がリンクするなと思ったんです。『LOOP WORLD』というタイトルが見つかったときに、いろいろなことが開けたかもしれないですね。

──では今作はストーリーと楽曲がリンクしている?

AKIHIDE:ええ。音楽が物語と並行して寄り添いながら進んでいきますね。

──毎回、現実とファンタジーがクロスする内容とAKIHIDEさん自身の文才に驚かされます。舞台は木の根や枝が張り巡らされ、枝が月の満ち欠けを止めてしまった街ですが、主人公の部屋に突然現れる謎の生物“キノ”と“キコ”も、物語を考えているうちに思い付いたんですか?

AKIHIDE:そうですね。今回は自分が感じていたことをダイレクトに反映させているので、わりとすぐに第一稿が書けたんです。ストーリーの中に出てくる“時樹の木”が今の世界の状況を表しているんですが、メタファー的な表現を多く用いて書いていますね。

──では、楽曲のエピソードについても教えてください。1曲目の「迷子の朝」はガットギターの音色が美しいオープニングにふさわしいインストです。

AKIHIDE:「迷子の朝」の原型は前からできていたんですが、自分でも綺麗なメロディラインだなと思ってとっておいたんです。YouTubeに“絵本動画”をアップしていて、『LOOP WORLD』の種になった物語“迷路の人”という作品をコロナの自粛期間中に作ったんですが、その動画のBGMで使った曲でもあります。アルバムの中では唯一この曲だけループペダルを使っていないんですが、『LOOP WORLD』の入り口のような立ち位置なので、今までの延長線上にある楽曲から始めたいと思いました。

──タイトル曲「LOOP WORLD」は曲調は明るくてキラキラしているのに、“見えない 描けない 想定外の日々” “ため息はマスクの中”という歌詞がコロナ禍の日常を想起させて切なくもあります。

AKIHIDE:この曲自体は去年の暮れぐらいから存在していて、いろいろなバージョンがあったんですが、どこかしっくりこなかったんです。でも、今回の『LOOP WORLD』にハメてみたら、“このアルバムのための曲だったんだ”って。それまではマイナーコードの曲を表題曲に選ぶことが多かったんですが、今作のコンセプト的に“前を向いて一歩でも踏み出せれば”という想いがあったので、明るい曲をチョイスしました。歌詞を書いたのは今年5月ぐらいで、ファンの方々に会えない切ない時期ですね。

──混乱した世界を背景に、少しでも元気を与えられたらという想いがアルバムの根底にあったんですか?

AKIHIDE:そうですね。“一歩を踏み出そう”というメッセージでありつつ、“自分自身が踏み出さないと”という想いがあったと思います。コンセプトストーリーも“共存”というか、みんな一緒に戦っているんだっていうところがひとつの軸になっています。


──ザラついたギターのサウンドや、今までにない歌い方をしている「夜の獣」は新鮮でした。

AKIHIDE:この曲のドラムみたいな音は、ギターのボディを叩いて歪ませて出しているんですが、聴いた人からは「これギターなの?」って聞かれますね。まさにループペダルを使って作ろうと思った曲で。夜って“獣の時間”というか、暗い感情に捉われたり、ネガティヴな考えが増幅されるので、そういう魔の時間を描きたいなと思ったんです。今日がループする街の中にいる主人公も夜は悶々としていたんだろうなという設定で書きました。アコギなんだけど、ソリッドなロックナンバーにしたいと思った曲ですね。

──音もイラついているというか、アルバムの中でいちばん攻撃的な楽曲ですし。

AKIHIDE:いちばん刺々しい曲ですね。苛立ちや負の感情。この曲に関してはポジティヴな要素はなく、負を歌っています。

──「樹海」のイメージについても教えてください。

AKIHIDE:コンセプトストーリーでは街中に木の枝が張り巡らされているんですが、樹海みたいな景色を想像して書いていたんです。とはいえ、おどろおどろしい風景ではなく、コンセプトアートのように水色のポップなイメージ。迷路みたいな場所のお話の中にかわいい“キノ”と“キコ”がいるような暗いだけの楽曲にはしたくなかったんです。僕自身、コロナがあったからこそ配信に挑戦したり、こんなアルバムが生まれたという面があるので。

──オフィシャルサイトに上がっている「樹海」のムービーは自然の風景も美しく、“こうやってループペダルを使って演奏しているんだ”ということがわかる映像になっていますね。

AKIHIDE:そうですね。例えば、お蕎麦屋さんが目の前で蕎麦をこねている実演を見るのが楽しいのと一緒で、“こんなふうにプレイしているんだ”っていう面白さを感じてもらえるかなと思って制作しました。実際にはもっと複雑なシステムでやっているんですけど、“こんなふうに弾いています”っていうのを視覚的に伝えたかったので、アレンジを変えて、ネイチャーな風景の中、鳥のさえずりや虫の声とセッションするようにループペダルを踏んでいる映像になればいいなって。配信に使うために一眼レフのカメラにハマったんですが、絵にこだわりたいから、空気感がちゃんと撮れるレコーダーも買って、そういうものも含めて楽しくなっちゃったんですよね。

──さまざまなことが、ひとりでできるようになっていますね。

AKIHIDE:映像や空気感も込みで、トータルで楽しんでもらいたいんです。もちろん、いちばんこだわっているのはギターなので、中のマイクを変えたり、気になるところは細部まで解消していったし、いい形で届けたいと思っています。興味がある方は使っている機材もYouTubeに記載しているので見ていただきたいし、ネットを介してコミュニケーションをとったり、情報を得る時代にやっと僕自身が追いついてきたので(笑)、そこに面白さを見出していますね。

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