【インタビュー】柴崎浩 [WANDS]、『BURN THE SECRET』ギターサウンドを語る「さらに多面的に」

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■ノブで音が変わるって知ってます?
■みんな信じないんですけど

──今回のアルバム制作でのメインギターは、nishgaki guitars (ニシガキ・ギターズ)ですね?

柴崎:基本的にはnishgaki guitarsで、シングルコイルの音がいいなと思ったらフェンダーのストラトだったりJames Tylerのストラトタイプに替えてみたり。あと、nishgaki guitarsがリペア中のときは、わりとシュッとしたディストーションサウンドが出せそうなSuhrを選んでみたり、ピエゾの音が欲しいときはJohn Petrucci Signature(アーニーボール・ミュージックマン)、もうちょっと丸みのあるハンバッカーの音が欲しい時はギブソンのレスポールにしてみたり。リードはほとんどnishgaki guitarsかJames Tylerかのどっちかですね。リア(ハムバッキング)をタップしたクランチサウンドを出したいときはPRS (ポール・リード・スミス)のDGTを使います。

──ハムをタップしたシングルの音と本物のシングルコイルの音にはどんな違いが?

柴崎:シングルコイルのほうがもうちょっと丸みがあるイメージですね。タップしたほうがノイズがあるイメージで、線が少し細くなる感じがないこともないんだけど、なんか好きな音なんですよね。使いやすいっていうか。

──せっかくのハムバッカーがかわいそう(笑)。

柴崎:はは(笑)、そうですよね。「Burning Free」のイントロで弾いてるのがPRSのリアをタップしたシングルの音です。

──ストラトじゃダメなんですね?

柴崎:ストラトは違うんですよね。イメージ的にPRSのタップのほうがやや小ぢんまりはするけど歯切れよくまとまる感じ。

──James Tylerとかnishgaki guitarsのボリュームを下げるのでは太すぎる?

柴崎:ハムバッカーした音だとムームーしすぎるんですよね。中低域……ミッドローあたりが豊か過ぎてそんなに要らないなあって。それがタップするといい具合になる。

▲Gibson Les Paul Classic 4-9014
カスタムショップ製のレスポールクラシックは、1960年製のスリムネックを採用、キルテッドメイプルトップの木目が美しいモデルだ。「1995年くらいに入手した」という1994年製。「Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.] 」で使用。


──レスポールはどこで使っているんですか?

柴崎:“そんなところで使うんだ?”って感じかもしれないんですけど、「Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.] 」のサビだけに入っている右側パートがあるんですけど、それがレスポールのミックストーンです。

──センターの音なんですね?

柴崎:そうです。それが合うかなって思って。

──柴崎さんにレスポールはちょっと意外でした。

柴崎:買ったのは1995年くらいだったかな。どうしても必要に迫られたというわけではなかったんですけど、「いいレスポールが入った」と楽器屋さんに言われて、“確かにレスポールは知っといたほうがいいな”っていうのもあって。3本くらい弾き比べて音が良かったのと弾きやすくていいなと思ったから買ったんですけど、後々に必要になってきて“やっぱり買っておいてよかったな”みたいな感じです。

▲Fender Stratocaster Relic R2534
カスタムショップ製のストラトキャスターは、使い込まれた風合いを再現したレリック。フレイムメイプルの綺麗な木目が浮かび上がったネック裏も豪華な印象。「Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.] 」「明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.] 」で使用。


▲James Tyler Classic
1990年代中盤から使用しているストラトタイプ。前述のフェンダーカスタムショップ製ストラトがアルダー・ボディでローズ指板という仕様に対して、こちらはアッシュ・ボディでメイプル指板。リアピックアップがシングルコイルからハムバッキングに交換されたほか、ブリッジやコントロールにも改造点がみられる。「David Bowieのように」「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「賞味期限切れ I love you」「Burning Free」「アイリメンバー U」で使用。


──フェンダー・カスタムショップのストラトは、どこで使用したんですか?

柴崎:これは単純にリアのシングルコイルでアルペジオしたいなと思ったときと、ローズ指板の感じが欲しいなと思って使った……かな。

──メイプル指板じゃなくてローズ指板の感じ?

柴崎:最近は、基本的にローズ指板のほうがメイプル指板よりも好きなんです。アタックがあんまりパツンと言わなくて、ちょっとジュっていう感じの……なんていうんですか、ちょっとコンプレッションというか、そういう感じが好きで。

──メイプル指板のほうがオープンに開いた感じがしますよね。

柴崎:そうですよね。あと、James Tylerは、フロントのシングルコイルでソロを弾くときとか、「I remember you」のイントロでも使いました。nishgaki guitarsがリペア中で普通にハムバッカーの音が欲しいときにも使います。

▲Suhr Modern Limited Edition2008 071 of 100
100本限定生産された2008年モデル。フィギュアドメイプルトップ、マホガニーボディーバック&ネック、アフリカンローズウッド指板を採用。ブリッジにはGOTO製フロイドローズタイプを搭載している。「Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.] 」「Burning Free」で使用。


──Suhrは?

柴崎:Suhrもnishgaki guitarsがなかった時、白玉のディストーションサウンドとかで使いました。

──このギターは、唯一のフロイドローズ仕様ですね。

柴崎:そうです。そもそもこのギターはドロップCチューニングとかで弾くために買ったんです。ローチューニングで弾くときは弦を太くするんですけど、そうするとそのつどナットの溝の幅を変えるために、そのゲージ用のナットに交換しなきゃいけないでしょう? でもフロイドローズであれば関係なくて、どのゲージでも張れるから、そういう時にフロイドローズがいいなと。

──なるほど、そこに注目してのフロイドローズか……。アコギはコリングスOM-2Hですね。

柴崎:アコギは二択しかなくて、コリングスかコール・クラーク。コール・クラークはもうちょっと大きいボディのギターで、そっちのほうがドンシャリっぽくて、コリングスはもうちょっと伝統的……というか、いわゆるマーティン的な音がする。これは2〜3年前に手に入れました。

▲Collings OM2H
スプルース・トップ、ローズウッドサイド&バック、マホガニーネック、14フレットジョイントを採用。L.R.BaggsのピックアップAnthemを装着している。「世界中の誰よりきっと [WANDS 第5期ver.] 」で使用。


──OM-2Hは、ボディはコンパクトですけど、スケールはロングなんですよね。

柴崎:そう。ボディだけがちっちゃい。トラスロッドがすごく重いのか頑丈なのかわかんないけど、ほとんどネックが動かないんです。その分、マーティンみたいな軽やかな音色というよりはもうちょっとダークな音になっている印象ですね。でもすごくいい音がします。

──コリングスって、なんでヘッドのエッジがこんなにとんがっているんでしょうね(笑)。

柴崎:そう、なんであんな角材みたいなんだろ?って思いますよね(笑)。でもギターって、リペアマンとかビルダーに話を聞くと“え、こんなことが音に影響すんの?”ってところが結構あるんです。だからもしかすると、あれも音を考えて角ばってるのかもしれないですよ。ソリッドのエレキギターも、ボディのエッジが角ばっているのと丸いのとでは反響の仕方が違うとか聞いたことがあります。

──ボディ内での音の反響に影響するんでしょうね。テレキャスとストラトの大きな違いもそこですよね。

柴崎:そうですね。あとね、ノブで音が変わるって知ってます?

──え?ノブ? ボリュームつまみのこと?

柴崎:みんな信じないんですけど(笑)。

──だってノブでしょ(笑)?

柴崎:大体、みんなそういう反応で、僕の先輩のギタリストに話した時も同じリアクションでしたけど、後から「柴ちゃん、ほんとだね」って。いろいろ試したみたいですよ。

──まだまだ奥は深いですね。

柴崎:音が如実に違うんですよ。僕の場合はSuhrがそうで、せっかく高いお金で買ったのに音が良くなくて“なんで悪いんだ?”って追及していったら、ノブだった。

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