【インタビュー】果歩が奏でる3つの物語

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シンガーソングライターの果歩が、6月から3ヶ月連続でアコースティック音源を配信シングルとしてリリースした。「きみは美しい」、「街と花束」、そして「ロマンスと休日」。短編小説のような雰囲気を漂わせるタイトルがなんともチャーミングで、これまで以上に表現者としての存在感や個性を輝かせたソングライティングの力にも納得の3曲だ。MVで描かれる世界観と合わせて、ぜひじっくりと味わってみてほしい。

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■生きているだけで素敵なこと

──4月から3ヶ月連続で行うはずだった自主企画は延期になってしまいましたが、6月20日に、配信でのワンマンライブ<Laguna Webcast!『きみは美しい〜夏を迎えに〜』>が行われました。実際にやってみてどうでしたか?

果歩:普段はなかなか来られないような遠方の方もたくさん見てくれて、それはすごく嬉しかったです。あとは、新潟にいる家族も(笑)。でもやっぱり、早く普通にお客さんを入れてライブしたいなって思いましたね。

──そのライブの翌日から「きみは美しい」という楽曲の配信が始まり、7月には「街と花束」、8月は「ロマンスと休日」と3ヶ月連続で配信もスタート。今日はそれぞれの楽曲についてじっくり聞いていきたいと思うのですが、「きみは美しい」はどういうきっかけで生まれた曲ですか?

果歩:3ヶ月連続で自主企画をやるにあたって、まずそのイベントを「きみは美しい」というタイトルにしようと決めたんです。人が生きているということ──ひとりひとり違う生き方だけど、生きているだけで素敵なことなんだよなというところから、人の人生を歌うというか、そんな壮大なものではないけどちょっと小さい物語を歌っていけたらなと思い、何かきれいな感じのタイトルをつけたかったから。曲は、そのあとで作りました。

──そういう発想に至ったのはどうしてだったんでしょうか。

果歩:身近にいたある人が、結構悩んじゃう人だったんですね。もうちょっと楽な考え方だってあるのになって思うくらい。それに、人前で泣けるって素晴らしいことだと思うし、それくらい心を開いてくれていることも素敵なことだと思うけど、本当によく泣く人で。私は真逆のタイプで感情を表に出したりすることがあまりないから、こういう人って人間ぽくていいなあというか、一生懸命生きてる感があってなんだかすごく美しいなって思ったんです。

▲果歩/「きみは美しい」

──そこから歌詞にするにあたっては?

果歩:歌詞にもあるんですが、私、海月が好きなんですよ。海月って死ぬ時に水になって消えちゃうんですが、跡形もなく消えてしまうって儚いし、なんだかきれいでグッと来るから。「きみは美しい」というタイトルで曲を作ろうと思った時に、透明感とか儚さ、きれいに生きているけど最後はちょっと悲しいみたいなところが海月にも通じるところがあるかなと思って、そこから広げていったんです。

──儚いけど、決して弱いわけじゃないところがこの曲の持ち味でもあるなと思いました。

果歩:そうなんです。弱くても強いみたいなところって、すごくいいなと思うんですよ。弱いところがあってもいいんだけど、芯の強さみたいなものは絶対に無くしたくない。それは例えば常識だったり、誰かを傷つけないみたいな当たり前なこととかも含めた上で、自分のこだわりをちゃんと持って生きていけたほうが絶対にかっこいいと思うから。大事にしたいところはひとつでもちゃんとあったほうがいいなと思って、私はそういう強さっていう部分を大事にしているんです。

──曲を作っていた時はまだ世の中がこういう状況になる前だったそうですが、結果的には、外出自粛期間を経て気持ちが落ち込んだり、不安や悩みを抱えてしまった人達にも響く歌になっているんじゃないかなと思いました。

果歩:そうなんですよね。6月の配信ライブの時、私も同じことを思いながら歌っていました。この曲は人を応援するというか、人間的な強さみたいなところを認めて背中を押してあげられるようなところもあるのかなと思うので、改めて書いてよかったなと思いました。



──では次に7月の「街と花束」についてですが、まずMVがすごく可愛かったです。いわゆる彼氏目線みたいな感じでカメラが果歩さんを捉えているんだけど、それだけじゃない空気感みたいなものが感じられました。

果歩:嬉しい!実はここだけの話なんですが、あの映像は妹が撮ったんですよ。将来映像監督になりたいらしいので、じゃあその第一歩としてやってみない?って言ってやってもらいました。撮っているのは身内だし、映っているのは自分だけだから完成したものを見ても感覚がよくわからなかったんですが、そう言ってもらえてよかったです(笑)。


──この曲は何かきっかけがあって生まれたんですか?

果歩:去年、引越しをしたんです。東京に出てきて初めて住んだ街から引っ越すことになった時、散歩をしていたら急に寂しい気持ちになって。第2の故郷じゃないですが、この街でいろんな初めてを経験したし思い入れもあったから、何か曲を書きたいなと思いながら歩いていたらサビの部分が降りてきました。

──別れの切なさみたいなものもあるけど、全体としてはすごく軽やかな印象ですね。時間の経過や季節の変化も盛り込まれていて、街の息吹が感じられるような言葉遣いも新鮮だなと思いました。

果歩:時間の感じ、いいですよね。この曲、私も大好きなんです。別れって人間同士もそうだけど、住み慣れた街との別れだったり、この街に置いていく思い出とかもたくさんあったりして。だけどそういうことを経てまた成長ができるってことでもあると思うから、旅立ちの時、この街に花束を贈りたいなと思って書いた曲になります。

▲果歩/「街と花束」

──東京にしばらく住んでみて、果歩さんの東京観みたいなものも変わりました?

果歩:新宿と渋谷はやっぱり行きたくないかな(笑)。そこだけはどうしても苦手です。

──じゃあ何か、自分が住む場所に求めるものはありますか?

果歩:私は喫茶店が好きなので、いい喫茶店があると嬉しいなって思います。喫茶店では本を読むことが多いんですが、そこでインスパイアされたり、「今、曲が書けそう!」と思った時に喫茶店に入って書くこともありますよ。

──果歩さんもそうですが、いい喫茶店を知っている人は街の歩き方や見方が独特で、素敵だなと感じます。

果歩:あ、確かにそうかもしれないですね。ちなみにこの曲のギターなんですが、街を歩いているような感じを表現したかったから、ちょっと軽めというか柔らかい感じにしてみたんです。これまではストロークが多かったけど、この曲は指弾きで、静か目で淡々としたお散歩感が出たらいいなと思いながら弾きました。

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