【対談】ガラ(メリー)×ナオ(首振りDolls)、転がり続ける“バケモノ”達の想い
新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図るため、多くのアーティストやバンドが、開催予定であった公演の中止や延期を決めた。今回対談ゲストに迎えたガラがボーカルを務めるメリーもだ。
メリーは、今年の2月1日にギターの健一が5月を以って脱退することを発表し、ファンをはじめ、メリーに関わる多くの者達に、その先のメリーの活動を憂虞させた。1度もメンバーチェンジをすることなく結成から19年を迎えたバンドからの脱退の発表は、並大抵の決断ではないことが計り知れるため、受け取る側の心境も相当である。
彼らは後日、5人での最後のツアーを告知したが、その直後に新型コロナウイルス感染症の影響等を鑑み全ての業種に自粛が言い渡され、さらに4月7日に緊急事態宣言が発令されたことで、“5人での最後の全国ツアー”<5 Sheep Last Tour>の延期を余儀なくされた。
他ならぬ“5人での最後の全国ツアー”の延期はガラ達にとって如何なるものだったのか。そして、約1年半前にメンバー脱退を経験した首振りDolls・ナオは、現在のガラの心境をどう受け止めているのか。
今年2020年の2月21日に行われたナオ主催のアコースティックライブ<釘裂〜メリーに首ったけ〜acoustic & talk live〜>(大阪千日前・紅鶴)での共演を振り返りながら、久しぶりにじっくりと向き合って話してもらった。
──2人が会うのは久しぶり?
ガラ:そうだね。今年の2月にナオにアコースティックライブイベントに呼んでもらって、それからすぐに対談したいねって話になっていたんだけど、コロナで流れちゃって。
ナオ:そうでしたね。本当に何もかもが止まっちゃいましたからね。
ガラ:本当にそうだね。
ナオ:2月21日にガラさんと大阪でアコースティックライブ(大阪千日前・紅鶴で行われた<釘裂〜メリーに首ったけ〜acoustic & talk live〜>)させてもらったあたりも、なんか不穏な空気は既にあっというか。
ガラ:そうね。まだ自粛まではいかずとも、あまり軽視できない状況にあることは言われはじめていたからね。ナオと大阪でライブしてから、メリーとして1本都内でイベントやって、3月1日にアコースティックで1人で出て以来、全くライブしてない。ナオは?
ナオ:私は、ガラさんとアコースティックライブをソロでやらせてもらって、28日に首振りDollsで初めて仙台でワンマンをしたのを最後に3ヶ月ライブしてないですね。28日のライブもやるかやらないかすごく迷ったんですけど、初めて行く土地でのワンマンだったんで、ぶっちゃけソールドアウトしていなかったこともあり、ハコの方と相談して、衛生面を強化して頂きつつ、この人数ならってところで最善の注意を払って決行したんです。
ガラ:そっか。でも、ホント、改めて振り返ってみると3ヶ月ライブしてないんだね、俺達。こんなこと無いでしょ? 今まで。
ナオ:無いです無いです。最初、2、3週間ライブができないだけで、“バンド人生の中で、こんなにライブしなかったこと無いよ〜!”って思ってたのに、まさかそこから3ヶ月もライブできなくなる状況が待ってたなんて、思いもしなかったですからね。
ガラ:本当だね。今やもう、いつライブができるか分からない状態だからね。
ナオ:そうなんですよね。なんか、試されている気すらしてきますよね。
ガラ:そうだよね。変わらないいけない節目に来てるからね。
ナオ:でも、こんな時だからこそ、チャンスを感じていたりもするんです。首振りDollsは、約1年半前にメンバーチェンジがあって、新たにバンドが生まれ変わって、まだまだ始まったばかりのバンドなので、ここからのし上がっていかなくちゃいけないバンドでもあるんですけど、多くの先輩バンドもオーバーグラウンドで活躍されているバンドも、今回の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、同じ状況に立たされることになった訳じゃないですか。こんな言い方したら、おこがましいかもしれないですけど、“できること”“やれること”が同じになったというか。この状況の中で、俺たちみたいなのがいろんなことを勉強させてもらいながら、参考にしつつ吸収しながらめちゃくちゃ頑張っていったら、少しでも差が埋められるんじゃないかなって。
ガラ:なるほど。たしかにそうなのかもしれないね。この先、今まで通りに我武者羅にライブをやってたらいいっていう時代じゃなくなって行くだろうし、アイディア次第というかね。みんな同列だから。バンド業界だけに限らず、タレントや俳優・女優、全てにおいて同じ状況だから。こんなことって、今まで生きてきた中でも経験のないことだから、誰も正解が分からない。決まった正解なんてないんだろうし。
ナオ:本当にそうですよね。
──本当に全く先が見えないけど、そんな中でもできること、やらなくちゃいけないことって、“歩みを止めないこと”だからね。
ガラ:そう。やり続けなくちゃね。
ナオ:そうですね。
ガラ:ナオ達なんて、上京してまだ1年経ってないんでしょ?
ナオ:7月でちょうど1年かな?
──2019年の7月10日の夜中、日付が変わった頃に九州を出発して、ハイエース1台で上京してきたんだよね。今年の7月11日で1年。
ガラ:1年ズレてたらバンドの未来は変わってたね、きっと。
ナオ:ですね。上京できてなかったですね。でも、きっと、だからこそ、そこにも意味があった気がしてるんです。上京できたことに意味があったのかなって。
ガラ:本当にそうかもしれないね。全部に意味があるんだと思うよ。
──そうかもね。出逢いにも別れにも意味があるんだと思う。ガラとナオの出逢いにも意味があると思う。今回、新宿を選んだのは、2人が初めて一緒にご飯を食べた場所でもあったからだよね。あれは、2018年の9月だったかな。
ナオ:そう。まだ上京前。初めてガラさんとご飯に行ってもらったのが、新宿だったんですよね。
ガラ:そうだったね。あの日、ナオはずっと俺が飲んでたお酒を、同じペースで飲んでた。それがすごく印象的で。
──そういえば、ガラに“ナオっていつもジャスミンハイ飲むの?”って聞かれたね。ガラに言われるまでそんなこと気にしたことなかったけど、ジャスミンハイ飲んでる印象ないなと思ったから、それをガラに言ったら、“やっぱり。アイツ、俺に合わせて同じお酒飲んでたんだね。同じペースで飲んでたんだよ。合わせてたんだと思う。俺に対する気遣いだったんだと思う”って。私はその言葉を聞いて、ガラもナオもすごいなって思った。そういう気遣いができるナオもすごいけど、その気遣いに気づいてあげられるガラは本当にすごいなって。
ガラ:いやいやいや。でも、俺が後輩の立場として気を付けてきたことを、そのときのナオがしてたから気付いたというかね。いろんな若い子たちと飲む機会もあったりするけど、あんまりそういうのなかったから、おっ、って思った。
ナオ:そんな風に思って下さってたなんて、すごく嬉しいです! 私はその日、ガラさんの全ての気遣いに一つ一つ感動してましたからね。一緒に初めてご飯に行ってもらったとき、ガラさんはイベントライブ終わりだったのに、ツアーで東京に来ていた私とのご飯に来てくれて、その後、そのイベントの打ち上げに“仲間紹介してあげるから行こう”って、私を連れてってくれたんですよね。そこには逹瑯さん(MUCCのVo)竜太朗さん(Plastic TreeのVo有村竜太朗)とか居て。そこに私を連れてってくれたのも、ガラさんの優しさだなって感じたんです。次の日、私は逹瑯さんとの対談だったから、緊張しないように、会わせてくれようと思ってくれたんだろうなって。それに、ガラさんの仲間を紹介してくれようとしたんだろうなって思ったら、本当に感動しちゃって。さらに、そこのお会計までもこっそり払ってくれてて、さらに! 後輩である私がガラさんのためにタクシーを止めなくちゃいけないのに、タクシーを止めてくれて、運転手さんに1万円渡して“この子送ってあげて下さい”って言ってくれて。もぉ、何、このカッコイイ人!? って、すっかり虜でしたからね。その男気に感動したんです!
ガラ:あははは。俺、そんなことしたっけね(笑)。
──ガラ、カッコ良すぎ、それ(笑)。男前だわ〜。でも、ガラらしい。先輩の気持ちも後輩の気持ちも分かる優しさと思いやりを持ってるガラだからこそ、みんなに好かれるし、愛されてるんだと思うからね。
ガラ:いやいや、そんなイイもんじゃないけどね、俺なんか。けど、俺も先輩の背中を見て育ってきたから、ナオもそれを後輩が出来たときにしてあげたらいいんだよ。
ナオ:はい! 実は俺、そのときガラさんがタクシーの運転手さんに渡してくれた1万円、今も持ってるんです! 大切に取ってあって。いつか私に後輩が出来たら、その1万円で、ガラさんが私にしてくれたようにしてあげたいなって。
ガラ:うん。それでいいんだよ。
──いい話だね。初めてゆっくり話せたのは2018年の9月だったけど、それ以前にメリーと首振りDollsは共演してるんだよね。
ガラ:そうそう。
ナオ:ガラさんとは2018年の6月に東京キネマ倶楽部でやった、ストロベリーソングオーケストラ主催の<怪帰大作戦〜第6怪『帝都奇譚』>で初めてご一緒させて頂いていたんですよね。もちろん、メリーの存在は知ってましたし、楽曲もカッコイイなって思っていたんですけど、ライブを観たのはそのとき初めてで。本当にめちゃくちゃカッコイイな! って思って。終演後にちゃんとご挨拶したいなと思ったら、ガラさん忙しくて先に出られちゃったんですよね。
ガラ:あー、あのときそうだったね! 誘ってくれたストロベリーソングオーケストラの座長さんには本当に申し訳ないんだけど、歌のレコーディングが間に合ってなくて。先に出ちゃったから、全然話せなかったんだよね。本当に挨拶したくらいだったかな。
ナオ:はい、そうでした。だから、ゆっくりちゃんとお話しさせてもらったのは、そこから3ヶ月後で。そこでガラさんがバンドマンとしてだけじゃなく、人間的にも本当にカッコイイ人だったことを知ることになったんです!
──ガラは本当にいい人だからね。
ガラ:あ、それ。それねぇ、本当によく言われる。いい人すぎてダメなんだって。もっと貪欲になって、人を蹴落としてでも上に這い上がろうとするくらいじゃなくちゃ、この世界ではやっていけないんだって言われる。
ナオ:俺なんて、まだまだガラさんとの付き合いは浅いと思いますけど、そんな俺でもガラさんが優しすぎるくらい優しい人なのは伝わってきますからね。本当に絶対にこの人は、人を蹴落とすようなことはしない人だなって。こんなこと言うのは失礼に当たるかもしれないけど、人のために自分が損をする人だなって思うくらいいい人。本当に優しいなって思うんです。
ガラ:よく言われる(笑)。
ナオ:けど、こうやって深くお話ししてもらうようになる前は、めちゃくちゃ怖い人っていう印象でしたけどね。九州にいた頃にメリーといえば、もうそりゃ誰もが知ってる有名なバンドだったけど、墨汁吐いてて喋らないイメージが強かったから、本当に怖かったですもん。
ガラ:喋るとボロが出るからね、俺(笑)。
──良い人が出ちゃうからね(笑)。
ガラ:そうそう(笑)。
ナオ:でも、なんやろ。俺、ガラさんが何かのために俺を蹴落とすようなことがあったとしても、俺はガラさんのこと嫌いになれないです。今、本当に親身になって向き合ってくれて、自分のことのように話を聞いてくれたり、アドバイスをくれたりするガラさんに、感謝しかないし、本当にこんな先輩になりたい、こんな男になりたいって思ってるから、例えばガラさんがガラさんのために俺を蹴落とすようなことをしたとしても、俺はガラさんが好きです。ずっと。きっとその先もずっとガラさんのこと慕っていると思うし。
ガラ:ナオねぇ〜、そこよ。そういうとこ。俺がナオのことを自分に置き換えて考えてしまったり、重なるなぁって思ったりするところは、そういうとこなんだよ。ナオはまだ知らない未来がたくさんある。でも、俺はその未来を既に歩いてきたから知ってたりする。もちろん、人によって未来は違うものなんだけど、自分が経験したことで失敗してきたことはナオに教えてあげたいと思うし、通り過ぎてきたことであとあと後悔したことも、アドバイスしてあげたいなって思うんだよね。余計な失敗はしない方がいい。もちろん、失敗することで学ぶこともあるし、反省することで失敗しなくなるんだと思うから、実際に自分が痛みを知ることも大事なことなんだけど、取り返しのつかない選択をしないようにだけは助言してあげたいなって思うというかね。無駄に傷付かせたくないから。
ナオ:ガラさん! 好き!
ガラ:あははは。そうやってすぐに人を信用し過ぎるところも、俺と似てる。そこも気を付けた方がいいね、ナオは(笑)。本当に後から気付くんだよね、人間って。愚かだなって思うよ。そのときは、自分たちのことで必死だったり、過信があったりするから、“なんでもっとやってくんないの!?”とか、“もっとこうしてくれよ!”とか、いろいろと勝手なことを思うんだけど、過ぎてみたら、その人がすごく自分たちが思ってた以上に自分たちのために動いてくれていたことを知って後悔してみたりね。自分たちには見えないところで動いてくれていたりする場合もあるから。人間ってダメだなって思うよ。渦中にあるときは、俯瞰で見れなくなっちゃうから。でも、いい人ばっかりじゃないからさ。すごく信じていたのに裏切られる場合だってあるし。本当に経験しないと分からないよね。忠告されていても、実際に傷付いて痛い思いをしないと分からない生き物だったりもするからね。
ナオ:深みを感じます。やっぱりいろんな経験してきたから言える言葉ですよね。深いな。たしかに、俺なんて飛びこんじゃってましたからね。自分1人のことならいいけど、メンバーのことを考えたら、自分がしっかりしなくちゃいけないし。
ガラ:そう。バンドだからね、俺たちは。
──ちょっと立ち入った話をしてもいい? 昔、ガラと話したことあったよね、“いくつまでバンドを続けるか”って。ガラはそのとき、具体的な年齢を言ってた。もうその年齢を過ぎたけど、今はどう考えているの?
ガラ:実際にその年齢になってみて思うのは、やっぱり辞められないなってこと。自分にはバンドしかないんだって、その歳になってみて思った。期限決めて辞めるものじゃないなって。それにね、止めたらそこで終わるんだよね、全てが。もうその先はない。でも、続けてさえいたら、その先はあるんだよね。今回のコロナだってそうだけど、人生なんて何があるか分からない。だから、続けてさえいたら、何かがあるかもしれない。止めてしまったらそこで終わっちゃうから。それまで続けてきたことが0になってしまうからね。それに、やっぱりステージに立つ度に、自分の居場所はここだなって思うんだよ。
──例えそれが、メリーのガラというバンドマンではない個人の幸せを圧迫することになっても?
ガラ:己が幸せになったらアーティストとして良いものが作れなくなるっていう?
──そう。
ガラ:それ、よく言われてるやつだよね。
──個としての幸せを犠牲にしても、アーティストとして、バンドマンとして、自分たちの音楽を聴いてくれる人たちを幸せにしたいか。というところだよね。
ガラ:難しいよね。満たされてるとなかなかギリギリな感じは描けなかったりするから。
ナオ:安定なんて一生ないですからね、バンドマンなんて。満たされていないところを作品で補う感じというか、だからちょっと背負ってる感じの方がいいっていうことでしょ? それもすごく分かるんですけどね。
ガラ:でも、ぶっちゃけ、幸せになりたいけどね、俺も(笑)。
ナオ:あははは。ですよね(笑)。でも、バンドマンだって普通に幸せ掴んでもいいと思うんですよ。バンドマンだって1人の人間なんだもん。けどね、バンドとしてステージに上がるときは、バケモノになっていないといけないと思うんです。自分だけの幸せを求めることで、バンドとしてステージに立ったときにバケモノになれないなら、ダメだと思う。バンドは1人じゃないからね。自分の幸せよりも、聴き手の幸せを願っているのか? という質問に答えるとするなら、もちろん、音楽を作ったり、なんで歌っているのかって言ったら、目の前の笑顔のためなんです。ライブに自分たちの曲を聴きに来てくれる人たちを笑顔にするために頑張っているんです。
ガラ:そうだね。世界中を幸せにすることなんて無理なんだから、本当にその都度、目の前に居る人の幸せだけを願ってライブするよね。この人たちを、この場所から幸せにして帰してあげようって思ってライブしてるもんなぁ、いつも。
ナオ:私もです。だから、両方なんですよね。わざわざ作品作りのために自分が幸せになるのを拒むことはないと思うし。それに、自分が幸せじゃないと、人のことを幸せにはできないと思うんです。荒んでるときにハッピーな歌は歌えないでしょ。荒んでる人に寄り添うことはできても、その人を幸せに導いてあげることはできないと思うから。荒んでる人に寄り添うためのライブはできても、幸せにはできない。もちろん、その形も必要だとは思う。だからと言って、“自分は幸せになっちゃいけないんだ!”っていう十字架を背負い続けるのは、またちょっと違うんじゃないかな? って思う。みんなも自分も幸せになれるのが1番理想。でもね、バンドをやることによって、必然的に自らの“普通の生活をおくる”という人生は確実に犠牲になってると思いますよ。そこは身を削ってやってたりしますからね。でも、それは自分が選んだ人生なんです。だから、そういう意味で自分の人生を犠牲にしてる感じはあると思うし、それは必要なことだと思うんですよね。自分のことが不幸で、かわいそうな奴なんて、カッコ良くないですもん。貧乏だって、傷付いてたって、我武者羅になれるものがあるってことは一つの幸せのかたちですよね。贅沢は言えない。どこか割り切って生きる必要はあると思いますけどね。
ガラ:なんか妙に説得力あるな、今日。
ナオ:ちょっと、ガラさん〜、やめてくださいよ!
ガラ:いやいや、本当にそうだよね。ついつい自分に対してだけストイックになってしまいがちだったりもしちゃうからね。追い込んで追い込んで、とことん追い込んじゃう。
──そういうところもガラらしいね。これは持論でもあるんだけど、ルサンチマン的感情が自らを奮い立たせる根源となる場合もあると思うんだよね。でも、そこが強過ぎるのも、もちろん問題なんだけど。
ナオ:うんうん。すごく分かる。でもね、それって、さっき言った“荒んでる人に寄り添うこと”だと思うんですよ。でも、俺たちが目指したいのは、“荒んでる人に寄り添って、そこから先にその人も笑顔にしてあげること”だと思うから。そこまでしてあげられないとプロじゃないと思うんです。寄り添うことができて、さらに笑顔にしてあげられるってことは、自分にも余裕がないとダメだと思うんです。だから、そういう意味でも、自分に余裕がないといけないなって思ってますね。多くの人を幸せにしてるオーバーグラウンドのアーティストさんたちは、きっとそれぞれに思い悩むこともあるかもしれないけど、ちゃんと人を幸せにできる余裕を持っているんだと思う。
ガラ:そうだね。人を幸せにしてあげられるだけの器を持っている人っていう意味だよね。すごく分かるよ。ただただ自分の幸せを追求しちゃったりしだすと、またそこはバランスが崩れて行くんだろうしね。難しいバランスではあるけど。
ナオ:本当に難しいバランスですよね。バンドマンもアーティストも人間だから、“変わらずに居ること”って不可能だと思うんですよ。
ガラ:分かるよ。人間だから成長するからね。その成長によって歌詞も曲も変化したりするからね。
ナオ:そうなんです。そこで“昔と変わった”って言われても、ずっと成長しないで昔のままでいられるわけもなくて。
ガラ:たしかに。もっと言えば、成長のない奴の言うことに説得力はないからね。
ナオ:そうなんです。求められてない変化は退化と捉えられることもあるけど。そういう意味で言うと、昔からのファンの人たちを11人残らず離さず未来に連れていくことなんて、不可能だと思うんです。突き放した言い方に聞こえちゃうかもしれないけど、そうじゃなくて、“昔と変わらずにいなくちゃ”ってしようとするがために、バンドが解散しちゃうんです。永遠に昔と全く変わらずに居られることなんてできないから。
ガラ:そうだよなぁ……。
ナオ:ロックンロールとして転がり続けるなら、自分の変化も含めて受け入れていかなくちゃいけないんです。生き様を語るならばですよ。転がり続けていかなくちゃいけないって俺は思っているんです。自分の立たされてる境遇も全部受け入れて、ロックに昇華しなくちゃいけない。それが、俺の思うロックバンドの生き方なんです。求められていることをやる、というのは、ビジネスにおいては必要なことなのかもしれないですけどね。
ガラ:そうだね、そこをビジネスと割り切らなくちゃいけない場合はね。ロックバンドを始めたきっかけはそこじゃないからね。自分のためにやってたというか。自分が叫ぶ場所を探してたというか。
ナオ:歌いたくないことは、心を込めて歌えないですからね。そこに気持ちが乗っているから、聴く人は心が動くんでしょ。
──そうだね。
◆インタビュー(2)へ
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