【ライブレポート】wyse、充電完了一発目「ずっと思ってたのは一緒になりたかったってこと」
wyseが2月15日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで結成21周年の幕開けであり、充電期間完了のライブ<wyse 21st anniversary live「RAYS」>を開催した。
◆wyse 画像
客電が落ち、LEDスクリーンに映し出されたのは、本公演のタイトル<wyse 21st anniversary live「RAYS」>の文字と、充電期間完了のアナウンスとともに2019年12月に発表された『手塚プロダクション』制作のアニメーション映像。充電の理由、始動の理由についてはBARKSインタビューでも語られているが、約束どおり、wyseは「RAYS」をはじめとする新曲を持って帰ってきた。月森、TAKUMA、MORI、HIROの4人がいかにwyseとファンを大切にしているかが練られたセットリストとメッセージから伝わってきたのが、思い出深いLIQUIDROOM (2011年に再始動ライブを開催)でのアクトだった。
ステージの両脇までスクリーンで覆われたホールのようなゴージャスな演出とフロア半ばまで伸びた花道。オープニングは充電期間に入ることを宣言した2019年2月17日の渋谷ストリームホール公演で配布された楽曲「Flowers」だ。LEDスクリーンに美しい花々が映し出され、スモークがたかれる中、MORIが花道先端でギターを弾く「D&D」へと移行し、後奏でMORIとHIROがツインリードを響かせる。懐かしいナンバー「Blue Days」では月森とTAKUMAのツインボーカルの掛け合いで聴かせ、HIROが曲にピッタリの夏の日差しのようなギターソロを奏でた。やはり、wyseが放っている光は明るい。充電前のラストシングル「蘇生」では月森が花道で歌い、どんどんフロアを惹きつけていく。
「お待たせしました。wyseです。充電期間完了の一発目、しかも21周年初日の夜です。この大切な日を最高の夜にしたいと思っているので力を貸してくれるか? 楽しんで行こうぜ!」──月森
月森が煽ってwyse初期からのライブのキラーチューンが立て続けに投下されていく。「MORAL」「Miss t×××」「 And≦Crash!!」。月森がTAKUMAの肩を抱いてひとつのマイクで歌い、MORIがエッジーなギターで高揚させ、歌いながら多彩なベースフレーズでwyseの曲をグルーヴさせるTAKUMAが「リキッド! もっと行こうぜ!」と煽る。ロカビリーテイストのロックンロール「やってらんねぇ」はwyseには珍しい怒り爆発のナンバーだが、初期に書かれた曲の衝動をそのままに叫び、演奏する彼らに充電完了を待っていたファンの熱気も上がる一方だ。前半戦にして後半戦のような盛り上がりから、“ここが始まりのとき”と歌う「BLAST」(2016年に発売された12年ぶりのシングル収録曲)に繋げた。
「充電完了ということで帰ってきましたけど、その間、僕らもただボーッとしてたわけじゃなくて、いろんな曲を作り続けて進んでいくことが僕らができることかなと思って、新曲を持って帰ってきました。その中から聴いていただきたいと思います」──月森
イメージ映像とともに月森の柔らかなボーカルが映える未音源の新曲「暝色」が初披露され、普遍的な魅力を持つwyseのメロディに浸りつつ、ヒリヒリした季節が蘇る「パンジー」へ。TAKUMAが1コーラス目を歌い、月森のボーカルへと移行し、“この想いは何だ 胸が痛いや”とシャウト気味に歌う箇所で胸が締めつけられる。なぜ、wyseのピュアネスは汚れてしまわないのか? 色鮮やかな光が踊っているような演出の中、「ヒカリ」が会場を照らすように鳴らされた。
「楽しんでくれてますか? 久々やね、この感じ。21年間、こんなにいろいろあったバンドも他にはないんじゃないでしょうか? もちろん、良くないこともありましたけど、今日という日があるので結果的には全てここに繋がってた選択だったと思います。いろんな想いをさせながら、その都度歩いてきて、僕ら、悩んで悩んでいちばんいい選択をして、もしかしたら間違っていたかもしれないけど、間違ってると思えたら、もっと良くなるように変えていくしかないと思ってます。たくさん集まってくれてありがとう」──TAKUMA
TAKUMAが月森に「21歳の頃、どうでした?」と問いかけると「思ったんだけど、俺とHIROは今年でちょうど人生半分wyseやってることになるんだよね」と返し、場内は驚きの歓声。そのリアクションに「僕の人生、半分以上、wyseなんですけど」とややひがみ気味のTAKUMAに笑いが起きる。そんな流れから4人を支えてくれているサポートのキーボーディストとドラマーが愛情たっぷりに紹介された。
「大切な曲です」と前置きして披露されたwyseのデビュー曲「Perfume」(2002年発表)では春を感じさせる風が吹き抜けるような歌と演奏を届け、手塚アニメのコラボシングル収録曲の「LINK」へ。ジャングルビートを取り入れた大自然の息吹が感じられる躍動感に観客もハンドクラップで応え、ビートに身体が自然と反応するセクションに移行する流れ。人気曲「終わらない夜のマーメイド」ではみんなジャンプし、EDMをwyse流に昇華した「Calling…」ではイントロで大歓声。花道に4人が揃う華やかなステージングで魅了し、大合唱に。そこから1990年代のダンスミュージックの要素を取り入れ、キラキラしたシンセの音色が印象的な未音源の新曲「Parasite City」になだれこむ流れも新しいwyseを感じさせてくれた。
「楽しんでますか? ただいま。wyseのMORIってこんな感じでしたでしょうか(笑)? 僕の記憶が確かなら、2011年の再始動ライブでこのステージに立ったときにあまりにみんなの反響がデカすぎて、それまでの俺の空白の6年間は何だったんだろう?と怒りすら覚えた記憶がございますが(笑)、今回はすごくあたたかい雰囲気に包まれて心地いいです。ありがとうございます」──MORI
MORIが「月森も立派な大人になりました」と場内を沸かせ、持ち上げたかと思ったら、「今日、オマエ、冒頭で“渋谷!”言うたやろ?」と突っ込みを入れ、「言ってないって」と月森が返すと「言うた!」と断言し、言った言わないのやりとりに爆笑。グッズデザインを一手に請け負うMORIの裏エピソードも明かされ、珍しく饒舌と思っていたら、HIROに機材トラブルが起きていたことが判明。TAKUMAが20年前なら、こんなふうにアクシデントを乗り切れなかったと感慨深げに話した。
「僕ら個人個人の気持ちをすり合わせたことはないんですけど、きっと、どこかで一緒になりたかったんだと思うんですよね。wyseって特殊なんですよ。絶妙なバランスで保たれているというか。充電期間中、ずっと思ってたのは一緒になりたかったってことなのかなって。みんなの中にはポジティヴな想いもネガティヴな想いもあるかもしれないけれど、今日がそれを示せる日だと思ってましたし、ここから先、また未来があると僕らは信じているのでついてきてください。全部大切な曲ですけど、この曲作ってよかったなと思います。wyseの曲です。よかったら一緒に歌いましょう」──TAKUMA
届けられたのはwyseのことを“4色の空”に例えた希望が満ちるナンバー「Primal」だった。2011年に再始動した自分たちのことを歌った曲に繋げるようにして、交わって太く強くなってまっすぐに進んでいく4本の光線をイメージして作られた最新シングル「RAYS」では、離れても揺るぐことのないメンバーの絆を感じさせ、スクリーンに夕暮れの空が映し出される演出の中、演奏されたミドルチューンの新曲「雨上がりの空」は日常の景色に溶け込むラブソング。“その胸に残したいのは いつも雨上がりの空”というフレーズがファンに向けたメッセージのようにも響いてきた。
「本当に素晴らしい夜になったと思います。どうもありがとう。さっきTAKUMAも言ってたけど、wyseって本当にいろいろありすぎたぐらいにあって、みんなはわかってると思うけど、俺らはwyseを惰性で続けてないから、生きた活動をしたいからこそ、いろんなことが起こるんだなと思ってます。気持ちは25周年、30周年と続けていきたいなと思ってますが、そんな僕らなので、もしかしたら今後もいいことも悪いこともあるかもしれません。けど、本気でバンド活動をやりたいからこその僕らが出していく結論じゃないかなと思っています。こんなバンドですけど今後もよろしくお願いします。最後にこの曲を届けます。一緒に歌ってください」──月森
本編最後に届けられたのは月森のメッセージとシンクロするような儚さも希望も孕んだ「I believe」。wyseがいつまでも色褪せない理由を知っているから、ファンも彼らを信じ続けているのだろう。
盛大なアンコールに応えて、4色のグッズTシャツに着替えて再びステージに登場したメンバー。「Feeling」にはじまり、「Scribble of child」からボサノバテイストの「Swella para Scyallu para Sail」、「am00:00の警笛の中で」とwyse初期からのファンを歓喜させるレアな曲も盛り込まれ、代表曲のひとつ「With…」では沁みてくる歌声と歌詞に場内が感動に包まれた。
「やりたい曲はたくさんあって、全部まとめてやるのはいつかどこかでやればいいと思って厳選しました。僕たちの思い出はもはやどうでもよくて、来てくれる人、時間を共有する人がどういう想いになるか、どういう時間を辿れるか、これから先を進めるか。そんなことを考えて曲を決めました。本編は21周年なので21曲にしました。wyseは“ここ”という日に大雪だったり、台風だったりしましたけど、今日は天候に恵まれて……。北海道、沖縄、全国から来てくださってること知ってます。本当にありがとうございます! ちょっとずつ未来に繋げたら、やりたかったこと、届けたいこと、1つずつ実現できるって信じてます」──TAKUMA
スクリーンに雪が降る演出の中、「無色の雪」が演奏され、エンディングは充電前ラストライブでも最後に演奏された「Glorious Story」。みんなが歌う声が未来に光を照らすように新しい色を添えるように響きわたった。
余韻が残る場内に終演後、スクリーンを通して5月20日に3年ぶりのオリジナルアルバム『Thousands of RAYS』をリリースすること、アルバムを引っ提げての東名阪ツアーを開催することが告知され、幸せな空気に包まれてライブは幕を閉じた。
取材・文◎山本弘子
■<wyse 21st anniversary live「RAYS」>2020年2月15日@恵比寿リキッドルームSETLIST
02. D&D
03. BLUE DAYS
04. 蘇生
05. MORAL
06. Miss t×××
07. And≦Crash!!
08. やってらんねぇ
09. BLAST
10. 瞑色
11. パンジー
12. ヒカリ
13. Perfume
14. LINK
15. 終わらない夜のマーメイド
16. Calling…
17. Parasite City
18. Primal
19. RAYS
20. 雨上がりの空
21. I believe
encore
22. Feeling
23. Scribble of child
24. Swella para Scyallu para Sail
25. am00:00の警笛の中で
26. With…
27. 無色の雪
28. Glorious Story
■3年ぶりオリジナルアルバム『Thousands of RAYS』
※全10曲収録予定
価格:3,000円(税抜)
販売元 / 発売元:コロムビア・マーケティング
■<wyse tour2020「Thousands of RAYS」>
5月24日(日) 愛知・SPADE BOX
5月31日(日) 東京・Veats Shibuya
▼チケット
全公演 5,000円
一般発売:2020年4月12日(日)10:00~
【FC先行受付】
受付開始:2020年2月15日(土)21:00~
この記事の関連情報
wyse、月森が綴る<Voice>への想い「今の僕らの限界に挑戦したのが、25周年ツアー」
<VOCAL SUMMIT 2024>開催決定、栄喜(ex.SIAM SHADE)が初参戦
wyse、手塚プロダクションと6年振りコラボ実現+7ヵ月間のロングツアー決定
wyse25周年イベント<ROCK BATTLE>、FANTASTIC◇CIRCUS、fuzzy knot、中島卓偉、石月努、THE MICRO HEAD 4N'Sを迎えて4days開催
wyse、ツアー<IV>ファイナルにて新曲音源「DOWN」「Beautiful Life」を無料配布
【レポート】wyseライブ活動再開、「死ぬまでここに立っていたいと思います」
wyse、4都市全12公演ツアーを10月より開催「今、伝えたいものを体感しに来て欲しい」
【短期連載インタビュー 最終回】wyseが語る第四期「求め合いながら、輝き続けながら進んでいきたい」
【短期連載インタビュー Vol.3】wyseが語る第三期「正直、このまま自然消滅すると思ってました」