【インタビュー】鈴木研一 [人間椅子]、高円寺の20年を語る「モラトリアム的に楽しむ街」
■若いから住んでいられた街かもしれない
■バンドをやりながら1人で好きなように
──街の移り変わりも激しいんですね。現在の東高円寺もすごくキレイな街ですよね。
鈴木:駅前なんか、すごくオシャレになっちゃって。僕の知ってる東高円寺と全然違いますね。当時は駅を出てすぐにアーケードがあって、長屋みたいなのがずっと繋がる商店街だったんです。その裏の、一階が天ぷら屋の二階に住んでました。すごく油の匂いがきついアパートだったけど(笑)。安くて量の多い飲食店は結構あるんだけど、全然美味しくない店もあって。まぁ食べられればいいかみたいな(笑)。
──もしや、高円寺エリアにあまり楽しい思い出がない、とか(笑)?
鈴木:いや、そういうのがまた楽しかったんですよ。バイトで最低限のお金をもらって、バンドをやりながら、1人で好きなように暮らしていたなって。
──個性を認めてくれるような寛容さが高円寺という街にはあるような気がします。鈴木さんのまわりにも、そういうミュージシャンがいっぱいいたんでしょうね。
鈴木:いましたね。ただ、僕は和嶋君とかとばかりつるんでたし、それが僕のまわりということになるんだけど(笑)。高円寺は、“この人、どこかのバンドのメンバーだったよな”みたいなミュージシャンともしょっちゅうすれ違うし、たとえ夜中の3時とか4時でもいつも外に人がいるから、そんな時間にコンビニでエロ本を立ち読みしても、その姿をお客さんに見られちゃう(笑)。引っ越したのは、そういうのが嫌になっちゃったというのもあるんですけどね。
▲ルック商店街 HPより
──活動が長い分、鈴木さんを知ってる人も増えていったんですね。今も通う高円寺のお店はありますか?
鈴木:ルック商店街の「中華料理 天王」のラーメンと野菜炒めが大好きで、いまだに食べに行きます。あとロック喫茶とかロックバーが多いんですよ、高円寺は。昔はプログレとハードロックがかかるロック喫茶があって、僕は酒が飲めないのに夜中によく行ってましたね。引っ越す直前に北口の「喫茶プログレ」に行ったら、すごく喜ばれてサインしたのを覚えてます。変な音楽の店はいっぱいありましたよ。
──中央線でいうと隣駅となる中野に思い出はありますか?
鈴木:売れる前に中野の「陸蒸気」という飲み屋でバイトしてたので、中野もよく行ってましたよ。青森でその日上がった魚を炭火で焼く店なんですけど、僕の地元・青森というところがいいなと思ってバイトしていたんです。東高円寺に住んでいた頃に、自転車で通ってたから、裏道にも詳しいですよ。メインストリートを行くとすごく時間がかかりますけど、裏道を行くとすごく早く着くんです。東高円寺から中野まで斜めに一本突っ切る細い道があるんですよ、それがすごく便利で。
──中野エリアも詳しそうですね。
鈴木:東中野から阿佐ヶ谷までがセットというかテリトリーだったかな。今はもうないんですけど、東中野の駅前に中国の人がやってるすごく美味い餃子屋さんがあったから東中野にはよく行ってたし。あと中野にクラシックを聴かせる古い店で、名曲喫茶「クラシック」というのがあったんですよ。大正から昭和初期みたいな雰囲気がすごくよくて。そこに行って時間を潰したりしましたね。
▲中野サンプラザ/高円寺裏路地
──中野も昔からロック色が強い街だったんですか?
鈴木:特にそんなことはなかったと思いますけどね。中野サンプラザがあるからオジー・オズボーンのライブを初めて観たりしましたね。
──高円寺・中野エリアをテリトリーとしていて、一番楽しかったのはいつ頃でしたか?
鈴木:やっぱりノブの3軒隣に住んでいた頃かなあ。バイトがあるから朝も夜もない感じで、時間なんてあってないようなものだったんですよね。ただ、銭湯が閉まるのが午前0時だったから、どんな用事があってもそれまでに行かなくちゃダメで、いつもギリギリだったんです。その銭湯もマンションに建て替えてなくなっちゃたんだけど、よく覚えているのは脱衣所に細川ふみえさんのポスターが貼ってあったんですよ。それを見ていつもドキドキしていて、番台のおじさんに「あのポスターが欲しい」って言ったら、「あげられない」って断られ(笑)。だけど、閉店するときに「これ、欲しいって言ってたよね」ってくれたんです。今、そのポスターはどっかいっちゃいましたけど(笑)。
──いい話ですね(笑)。そういうエピソードも含めて、高円寺には青春の思い出が詰まっている感じですか?
鈴木:そうですね。本当に、若いから住んでいられた街かもしれないです。今の高円寺にも大好きな店はまだ残っているし、美味しいチェーン店も増えてて、「すた丼」と「天下一品」という僕の2大好きな食べ物チェーン店があるのは大きいですよ。どちらも、尿路結石になってから食べないようにしてますけど(笑)。
──では、これから上京して高円寺に住んでみたいという人に向けてメッセージをお願いします。
鈴木:学生とかバンドマンには良い街だと思います。練習スタジオも安いところがあったし。若くて金がない世代が、モラトリアム的に楽しむ街。それが高円寺だと思います。
取材・文◎岡本貴之
撮影◎西角郁哉
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