【対談】Psycho le Cému × cali≠gari、「僕らが知ってるヴィジュアル系ではなかった」

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■cali≠gariが止まったのって
■飽きが原因だったので

──青さんも当時のバンギャの気持ちに戻っていると。

桜井:そうそう。17歳のバンギャの気持ちになってるわけですよ。

DAISHI:青さんが一番好きなバンドってどこなんですか?

桜井:UP-BEATとBUCK-TICK。2大巨頭ですね。

DAISHI:なるほど。僕は高校生で初めて組んだコピーバンドが、D'ERLANGERとBUCK-TICKですから。seekなんて、ヴィジュアル系シーンでやるなんて思ってなかっただろう頃に誘ってますから。最初に会ったときはライヴハウスで働いてて、頭にタオルを巻いてて、見たこともない汚いTシャツに見たこともない汚いパンツを履いてて。

seek:たまたまそういう環境下におったからそういう格好してたわけで、別に望んで着てたわけじゃないから(笑)。

DAISHI:僕らの照明をやってくれてたんですよ。「THE BLUE HEARTSとかTHE BOOMが好き」って言ってて。パッと見て勝手にヴィジュアル系の子じゃないと思ってたけど、話をしたら「ヴィジュアル系も好き」って言うから。

桜井:1990年代の終わりの頃にそういう人ってちょっと珍しいよね。

seek:姉ちゃんがいるので、今言ってたTHE BLUE HEARTSとかTHE BOOMとかのバンドブーム系は姉ちゃんの影響からで、友達関係はヴィジュアル系みたいな世代やったんかなと思います。

桜井:なるほどね。

▲seek [B / Psycho le Cému]

──お話をかなり元に戻しますが、そうやってお互いに意識しながらも、ずっと接点のないままここまで来た、ということなんですよね?

DAISHI:そうです。超意識はしてましたけど。

seek:時代的にもcali≠gariさんはデビュータイミングが同じで、cali≠gariさんが活動休止された後に僕らも活動休止することになって。やっぱりそこも似てるのかなって。

DAISHI:あの頃も“一回、対バンせなあかん”って思ってたけどね。タイミングがなくて今になりましたけど。一緒にライヴやってないってすごい不思議ですよね。

seek:不思議。雑誌にも同じタイミングで載ってたはずやし、リリースも同じタイミングなのに、ここまで絡みがなかったのって。その当時のファンの人らも含めて、cali≠gariとPsycho le Cémuはどういうイメージで見られてたのかなって、結構気になってるんですけど。

DAISHI:当時、青さんとキリトさんはよくPsycho le Cémuをいじってくれてたというか、ディスってくれてましたよね(笑)。キリトさんは“うちの事務所はPsycho le Cémuが入ってから、Psycho le Cémuの衣装代で金がない”とかMCで言ってくれてたんで。

──キリトさんは同じ事務所だからとしても、青さんはなぜ?

桜井:敵だから。

DAISHI:戦ったこともないのに?っていうところでの面白さがありましたよね(笑)。僕らは全員その話を聞いて“おいしいよね”ってなってましたから。

seek:青さんはやっぱりヴィジュアル系の世界が好きなんやなと、当時思ってました。いろんなバンドのことを見てるし。

桜井:さっきも言いましたけど、曲がダメだったら興味はないんで。だからひどいこと言いますけど、名古屋系って全体的にあんまり好きじゃなかったんですよ。数十本は名古屋系のデモテープ聴いたけど、名古屋系パイオニア達とその直系以外は量産型過ぎて区別が付かなかったもん。


DAISHI:当時の名古屋シーンはすごかったですよ。姫路よりバンドも多かったし。

seek:初めて名古屋でやった時にコテンパンにされましたからね。パンパンに人が入ってるのに、お客さんは誰一人うちに興味ないみたいな空気感で。

DAISHI:なんであんなことするんやろ。ほんとにお客さん満席やのに、むす〜っとしてて。

seek:僕らは当時、振りの提示をしてたから、“それ、やりません”ってなるとね。心を閉ざしてるのがわかる。

桜井:だからね、今、“名古屋飛ばし”っていう言葉があるんじゃない? でも名古屋はたぶん、“TOO SHY SHY BOY”なの。

DAISHI:観月ありさ、出た(笑)!

桜井:以前、名古屋のライヴハウスのオーナーに同じような事質問したことあるのね。そしたら…(※掲載出来ない内容をトークしています)…だからなのかやっぱりシャイよね。新しい文化を受け入れるのに決意が必要みたいな? あと名古屋系を生み出したプライドもあると思うしね。外様の文化に興味は無い!名古屋系が一番だ!みたいな。実際リアタイで名古屋系通ってる人は名古屋系天下の時代は忘れられないでしょ。

DAISHI&seek:ふ〜ん。

──あの、姫路、名古屋と徐々に東に来てはいるんですが、そろそろ東京に戻ってきてもらってもいいでしょうか。過去の印象はそれぞれにありつつ、今のお互いのバンドについてはどんなふうに見ているのでしょうか?

seek:僕が初めてcali≠gariのCDを買ったのは『第4実験室』なんですけど、その時から見てまったく別のバンドやなと思ってるんです。やってることがいい意味でぶっ飛んでるなと常に思いますし、メンバー3人の個性が全然交わってない。なのにやっぱりcali≠gariという名前のもとにまとまってると思うんです。それぞれの活動もされてるけど、集まった時にcali≠gariとしてカッコいいなあっていう、その主軸は全然変わらない。ステージを見ててもいまだにゾクゾクするのは、そういうところなんだなと思います。

桜井:緊張感みたいなものがステージに出ちゃうんですよ、大してリハもやらないから。だから、バンドなんだけど毎回セッションみたいな感じで。僕も研次郎くんも同じフレーズを弾かないし、CDとは全然やってることが違うから。だから飽きもこない。以前、cali≠gariが止まったのって、飽きが原因だったので。そういうところがあるから、カッコいい言い方をすると、きっと緊張感みたいなものがにじみ出てるのかなと。

DAISHI:いや、ビンビンとがってますよ。ロックンロールやなと思うし。冷静に考えたら、cali≠gariをヴィジュアル系シーンで例えていいのかわからないですけど、あんなギターの音を出してる人ってまずいない。その時点でもうとがってますもん。例えばGLAYさんとかLUNA SEAさんとかL'Arc-en-Cielさんとかを聴いて育ったら、青さんのギターの音を聴いた時に違和感を感じると思う。

桜井:アハハハハハ。

DAISHI:だけど青さんはそんなの関係ねーですから(笑)。ファッションですら関係ねーですから。僕らにあの勇気はないですよ。

桜井:弾かないギタリスト同士、AYAくんには近いものを感じるけど(笑)。でもAYAくんの根本にはハードロックがあるんだろうなって垣間見えますよ。

seek:それをエンターテインメントと呼ぶのか、ロックと呼ぶのかはわからないですけど、さっき言ってた王道とは違う道をいってるのは確かで。時代も一緒のはずやのに、やり方が常に真逆なんですよね。そのスタイルの違いみたいなものは観ていただきたいなと。

桜井:真逆であり、近いものはありますよね。

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