【ライヴレポート】cali≠gariが真冬の野外、日比谷野音での30周年記念公演に「感無量です」
1年のうち最も寒いとされる大寒の2024年1月20日、cali≠gariが東京・日比谷野外大音楽堂で<30th Caliversary“1993-2024”「青春の抜け殻」>を開催した。日比谷野外大音楽堂は、2003年6月の無期限活動休止や、2014年9月の第7期cali≠gari終了と、cali≠gariの歴史の中で大切な節目を迎えた場所。その会場が2024年10月から老朽化による改修に入るとのことで(※2024年1月25日に使用期間の変更を発表。2025年9月末頃まで利用可能となった)、真冬の野外公演を敢行した。
◆cali≠gari 画像
開場とともに流れ始めた客入れBGMはTUBE。大寒の上に、今にも雨がこぼれ落ちそうな悪天候の中、少しでも暖かい気持ちで待ってもらえれば、という配慮だろうか。会場の照明が落ちると、一転してダンサブルなSEが流れる。ステージセンターには[cali≠gari]の大きな電飾が掲げられ、その下に緩やかな坂が設置。その坂の両脇をこの日のサポートメンバー、パーカッションの大家一将、ドラムのササブチヒロシが陣取り、上手に桜井青(G)、下手に村井研次郎(B)、そしてセンターに石井秀仁(Vo)と、きれいなシンメトリーのV字フォーメーションを組んだ。
桜井の「野音行くぞー!」の煽りから、「淫美まるでカオスな」へ。ササブチの繰り出すタイトなリズムと、大家の小気味良いパーカッションがダンサブルな打ち込みサウンドに色を添え、「マッキーナ」ではステージでもフロアでもジュリ扇が乱舞。「-踏-」「ケセ」とアップナンバーの連発で、冷えた身体を熱く乗せていく。
ライトで真っ赤に染めたステージで放ったのは力強くグルーヴするメタルナンバーの「赤色矮星」。フロアからは「オイ!オイ!」と拳が上がった。
雨または雪の予報で過酷な状況を予想していたが、小雨が降ったり止んだりの比較的穏やかな状況に「よかったね、やれたよ。感無量です」と桜井も安堵した様子。「今日は思いっきり一緒に遊んでいただけたら幸いです」と、「隠されたもの」へ。この曲は「16 補足版」として、ファンクラブの更新特典として2023年に配布されたもの。エキゾチックなラテンのリズムに、石井のエモーショナルな歌が響く。続く「汚れた夜」もラテンをベースにしたロックチューンで、イントロのティンパニーやパーカッションが盛り立てていった。
ステージが暗くなり硬質なビートのSEが始まると、ポツポツと観客が手にしたライトが灯り始めた。石井がトランシーバー型のマイクのアンテナをグンと伸ばすと「狂う鐫る芥」へ。光の海のようになったフロアの中を、石井、桜井、村井と順に演奏をしながら闊歩する。そのまま、こたつが設置されたサブステージへと移動したメンバー。ステージに腰掛け「冬の日」を披露。メインステージにいる大家のカホンから入るバージョンは、この日のために新録してリリースした「冬の日 野音記念盤」のM2「冬の日 -うたごえ喫茶篇-」。桜井の軽やかなストロークと、村井の情感豊かなベースの響き、溜めや抑揚をつけ表現力の増した石井のヴォーカルが、冷たい冬の夜空に染み込んでいった。
花風吹く効果音の中、メインステージに戻ると、ピンクとグリーンの桜色のライティングの中で「春の日」、騒々しい蝉の鳴き声から「夏の日」、そして「一つのメルヘン」で“秋は忘れ また冬が”と、ぐるりと季節を巡る流れが秀逸だった。
メンバー紹介を受けて、村井は「やっぱりcali≠gariといえば野音ですよね。思い出がいっぱい詰まってますよね」とコメント。「この寒い中わざわざ来てくれるということは、相当cali≠gariが好きなんだなということですよね」と言うと、会場からは大きな拍手が沸いた。桜井がハート型の鏡を持って、「みんなの心がこのハートに、一つになったら、野音もう一回できるよな! この胸の高鳴りを、この胸の高鳴りを!」と煽る中、ステージを降りた石井が最前列にいた子供と戯れていて、それに気を取られた桜井もその子に向かって「お前に幸あれ」と投げかけると、「禁断の高鳴り」へ。中盤の“握り返してやるぜ”を“握り返してくれよ”と歌詞を変えて歌ったのは、そういう気分だったのだろうか。観客との距離をグッと縮めたような気がした。さらに「ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛」でドッカンとフロアのボルテージを上げると、「野音!燃えるぞ!」と「燃えろよ燃えろ」へ。天まで焦がすような熱量の高いパフォーマンスで本編を締めくくった。
アンコールで披露されたのは「銀河鉄道の夜」と、同じ世界線にある「廃線された未来駅にて」。夜空の下で聴くこの2曲は格別だ。晴れた星空だったらもっと気持ちが良かったのかもしれないが、小雨が降る中で聴くというのも貴重な体験だったと思う。青いサーチライトが会場を照らす「廃線された未来駅にて」での、スコンと抜けるササブチのドラムが心地良い。エンディングでは石井のスキャットに合わせてクラップが沸き上がり、一体感を作り上げた。
ダブルアンコールで再びステージに登場したメンバーから、6月15日の村井研次郎50歳のバースデーから始まる<ツアー「17」>の開催が発表された。ということはアルバム『17』が制作されるということで、「頑張ってこれから作ります」と桜井。「また野音に立ちたいと思っております。みなさんまたご一緒してください。まだまだ青春しないとね」と語ると、「野音で青さんと言ったらこれですよね」(村井)と、桜井と村井が向き合って「グッド・バイ」イントロを弾くと、拍手喝采。ここからはcali≠gariのアンセムを畳み掛けた。
「野音、青春してますかー?」と「青春狂想曲」を披露し、その勢いのまま「ブルーフィルム」のイントロに入ったものの、石井が歌に入れず「もう一回やろうかな。もう一回」と止めると、「このバンド30年よ。大丈夫?」と桜井が苦笑いしながらもやり直す場面も。「あなたたち、セックスは大好きですか?」とセックスコールを煽るとラストナンバーの「エロトピア」へ。先程この4曲をcali≠gariのアンセムと記述したが、同時にこの野音での思い出深い曲でもあった。過去の野音での名場面が、曲とともに走馬灯のように頭をよぎったのは言うまでもない。「たくさんの野音の思い出をありがとうございました。またここで遊びましょう。おやすみなさい」。名残惜しそうに桜井が言葉を残し、ステージを後にした。そんなしみじみとした余韻をぶっ壊すように、終演するやいなや冬の女王・広瀬香美の「promise」が流れたのもcali≠gariらしいか。
現在cali≠gariは結成30周年のアニバーサリーイヤーを邁進中。<30th Caliversary“1993-2024”>を共通タイトルに、5月までは毎月30日(2月は29日)に企画の違うライヴを予定している。そしてステージで告知されたように、6月から<cali≠gari TOUR 17>がスタート。果たしてこの事前告知がアルバム『17』制作に向けて彼らの首を絞めることになるのか、はたまた尻に火をつけることになるのかは分からないが、バンドとして円熟味の増してきたcali≠gariが作る最新作『17』がどんな作品になるのか、今から楽しみだ。
取材・文◎大窪由香
撮影◎マツモトユウ
■<cali≠gari 30th Caliversary “1993-2024″>
1月30日(火) Shibuya eggman
▼「同級生は13歳」
2月29日(木) Spotify O-WEST
▼「カリ≠ガリ vs プロレス」
3月30日(土) 新宿FACE
▼「FC強制更新GIG」
4月30日(火) 横浜7th AVENUE※FC限定
▼「0」
5月30日(木) 中野ZERO小ホール
▼「cali≠gari TOUR 17」
6月15日(土) 小岩ライブシアターオルフェウス ※FC ONLY(2部制)
6月22日(土) 柏PALOOZA
6月28日(金) 新宿LOFT ※2部制
6月30日(日) 名古屋Electric Lady Land
7月06日(土) 徳島club GRINDHOUSE
7月07日(日) KYOTO MUSE
7月14日(日) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
7月15日(月/祝) 仙台MACANA
7月20日(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
7月26日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
8月03日(土) 岡山image
8月04日(日) 梅田バナナホール
8月11日(日) 水戸ライトハウス
8月17日(土) 福岡DRUM Be-1
8月24日(土) 札幌cube garden
8月25日(日) 札幌cube garden
9月07日(土) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
■ニュウアルバム『17』
■「冬の日」
MSNB-143 ¥2,000(税抜¥1,818)
▼収録曲
1. カリ≠ガリのコマーシャル〝青春の抜け殻〟
2. 冬の日
3. 月に吼えるまでもなく
▼Bonus Track
4. 冬の日 -うたごえ喫茶篇-
5. 冬の日 -No Synthesizer ver.-
▼特別教材1週間でマスター!ボーカリスト養成講座
6. 冬の日(カラオケ)
7. 月に吼えるまでもなく(カラオケ)
8. 冬の日 -うたごえ喫茶篇-(カラオケ)
※リリース同日(2/28)には、LittleHEARTS.新宿店にてインストアイベント開催
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