【インタビュー】Ｊ、11thアルバム『Limitless』完成「だから誰にも止められないんです」

■可能性の扉がバンバン開いてる感じがする
■この感覚、わかってもらえるといいんだけど

──“生まれ変われ”という言葉が出てくる「Come Alive」も印象的でした。しかもこの曲を書いているのがごっちんさんで、「Fever」をmasasucksさんが作曲している。これは、Ｊさんから彼らに宿題を出した成果ですか？

Ｊ：ははは！　そうですね。アルバムを作っていくうえで、やはり彼らの楽曲というものを使わせてもらいたいな、と思ったんです。実際、近年ずっと一緒にライヴをやっていて感じることがあって。ごっちん、masasucks、そしてドラムのMasuo君、彼らはみんな僕より年下なんですけど、ここ最近、3人のミュージシャン、プレイヤーとしての成長の度合いの大きさを、ものすごく感じるんですよ。しかも各々に自分のスタイルをもって、より彼らにしかない世界を作り上げてきている感じが、近くにいてすごく伝わってくるんです。だからこそ彼らの力を借りたかったというか、そういう気持ちになったんですよね。

──作曲について持ち掛けた時、２人はビビッてませんでした？　「Ｊ先輩が今さら何を言い出すかと思えば」みたいな（笑）。

Ｊ：ははは！　でもね、実際、ホントに彼ららしい曲を書いてきてくれたし、アルバムのなかでものすごく力を放つ曲たちになったと思います。

──正直、作曲クレジットのない状態で、「このなかにあの2人が作った曲があります。どれでしょう？」と問われたら、答えるのは難しいと思うんですよ。それぐらい彼らもＪさんの世界を理解しているというか、そこに溶け込んでいる。彼らがＪさんに着て欲しいと思う服は、元々似合うものだったということかもしれません。

Ｊ：そうですね。とはいえ随所に、僕にはないフレーズ、実に彼ららしい要素もたくさん入ってたりするんです。もう現時点ですでにツアーが始まっていて、そこでプレイしていても、やはりどちらの曲もものすごい力を発揮してくれていて。なんか頼もしいですね。

──面白いですよね。今作について興味深いのは、そうしたものすごくバンド然とした部分と、Ｊさん自身がひとりで突き詰めた部分が同居しているという事実なんです。

Ｊ：なんかそれぐらい、漠然としているようで実は明確なものがあったんでしょうね、目指すべきものというのが。僕が鳴らそうとしてる音についても、そのアウトラインみたいなものが見えていた。そういう意味では孤独な作業とかも当然のようにたくさんあったんですけど、ひとつひとつ作り上げていくなかで、“あ、間違ってないな” “よし、来た来た”みたいな確信も膨れ上がっていったんです。正直、大変な作業ではありましたよ、時間的にもね。なにしろ僕の場合、ベースだけ弾いてりゃいいという話じゃないので、いつも“あ、また次は俺だ”みたいなことになる（笑）。そんなプロセスのなかで、いちプレイヤーとして何通りも、何回も、何年も曲を聴いてきたわけです。ベーシストとしてばかりじゃなく、ギタリストとしての視点もあったり、ヴォーカリストとしての視点もあったり。そういう意味でも、すべて確信的に作ることができたアルバムだと思います。

──ヴォーカルという意味では「Falling Star」「Fly Again」という2曲のロッカバラードも印象的でした。こうした楽曲が然るべき場所に配置されていることで、すごく“アルバム”としてのたたずまいが強く感じられるようになってくる。

Ｊ：嬉しいですね。僕自身の世界観のなかで、やはり欠かせない部分だったりするんですよね。ガンガンなばかりではなくて、深みや静寂のなかにも熱さや強さを感じさせるようなもの。それも僕のロック観のなかには存在していて。それを表現したいな、といつもトライしてきたんです。今回、「Falling Star」も「Fly Again」もそうですけど、なんかこう、ふっと力が抜けた時に、そこに自然に存在するような、そんなサウンドの曲というのを目指して作って……。うまくいったかなあ、とは思うんですけど。

──うまくいってますよ、間違いなく（笑）。最初からすっと入り込むことができて、そのまま愛着が湧いてくるような感触があります。

Ｊ：もしかしたら僕のルーツのひとつにあるフォーキーな部分というか、そういったものを蘇らせてる部分があるのかな、とも思っていて。単純なコードのループ、そのなかでの抑揚、コード感の響きみたいなものというのは自分でもよく感じることがありますね。でもなんか、似てますよね、ロックとフォークって。

──グランジの時代に、それがわかりやすくなりましたよね。

Ｊ：確かに！

──さて、話は尽きないところですが、とにかく確かなのは『Limitless』が2019年のアルバムであり、しかも同時にこれまでの過去すべてとも繋がっていて、未来に向かうためのものなんだ、ということ。今日の取材を通じて改めてそう感じさせられました。

Ｊ：そう言ってもらえて嬉しいです。なんかホントに可能性の扉がバンバン開いてる感じがすごくするんですね。この感覚、みんなにもわかってもらえるといいんだけど。

──気が付いたらこの先の信号がずっと青、みたいな。

Ｊ：ははは！　そう。だから誰にも止められないんです。

取材・文◎増田勇一
撮影◎西角郁哉







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