【特集 インタビュー vol.5】植田真梨恵、『W.A.H.』ディレクションを語る「私たちの日常のそばにある“和”」
■よく思うんですよ、極端な性格なので
■あなたさえいればなんだっていい
──それ、余談っぽいけどすごく大事な話な気がする。話を戻して。ミニアルバムの最後に入ってる「ひねもす」は何の曲だろう。これも歌詞が抽象的に聴こえる。
植田:これは、メジャーデビューしたあとぐらいに書いた曲なんですけど、友達が家に来た時に、よくみんなで歌を歌うんですよ。こたつを囲んで、ギターを持って。歌のうまい友達が多くて、女の子3人の声でハモりが重なった時に、どんな歌がきれいだろう?と思って、三声全部が主旋律っぽい動きをしながらきれいにハモる曲で、そんな時に歌える曲があったらいいなと思って書いた曲です。自分が歌うというよりも、そんなイメージで作ったので、歌詞には説明がないというか、自分の好きな言葉だけで作った曲ですね。
──“ひねもす”って何でしたっけ。永遠だっけ。
植田:“終日”です。終日は“1日いっぱい”という意味だと私は思っていて。1日いっぱいって、すごく満たされてる感じがしますけど、それよりもっと大きな終末観みたいなものがある曲なので、一番最後に入れました。
▲植田真梨恵 画像ページ (※画像4点) |
植田:ありがとうございます。私もこの歌で、そこが一番好きです。
──当時、何か思うことがあったのかしら。
植田:というより、好きな言葉なので。よく思うんですよ、極端な性格なので。生きてればそれでいいし、歌さえ歌えていればなんだっていいし、あなたさえいればなんだっていいのさ、でもあるし。
──アコースティックギターと、和音階を使った、たおやかな打ち込みも素敵。
植田:アレンジは、和室の障子がちょっとだけ開いてて、最後のサビで障子をバーンと開いたら、お庭がめっちゃきれい、みたいな感じでアレンジしたいなと思ってました。
──ああー。開ける感じ。なるほど。
植田:久留米の納骨堂に、ひいばあちゃんが眠っているんですけど、そこのお庭がすごくきれいで、いつも行くのを楽しみにしているんです。和室から庭をパッと見た時の、横に広がる感じって、独特じゃないですか。あの感じで終わりたいと言って、アレンジしてもらいました。
▲植田真梨恵 画像ページ (※画像4点) |
植田:西村さんもそうですね。わかってくれますね。「Bloomin’」を作る時、一緒に公園に行くところから始めましたもんね。
──そうなんだ。
植田:私なりの桜の曲を作りたいけど、全然出来なくて。なぜならバラードにしようと思っていたのに、ミニアルバムに収録する他の曲が全部バラードになってしまったから。力強い、植田真梨恵にしかできない桜ソングをやりたいんだけど「ギターで全然イメージが作れないんです」って言って、会社に来てもらって。その日が春みたいにあたたかい冬の日だったので、公園に行って、「これまでのJ-POPの中で、西村さんが思う“和”がうまく出ている曲って何ですか?」なんてことを話したり。そこで私とわりと近いものが出たので、「ですよね」って思いながら、部屋に戻って「じゃあやってみましょう」という感じでした。
──それは面白い作り方。
植田:和を感じるコード進行とか、定石をやっていくうちに、もっとハネた感じで、もっと繰り返そうとか。サビから突然ポップな感じにしたいので、それまでとは人が変わったみたいにカッコよく弾きましょうとか。そういう感じで、先にイメージから作って行った曲です。
──そんな作り方もするんですね。
植田:初めてです。いつもは歌詞とメロディが必ず先にあるんですけど、この曲は初めてそういうふうに作りました。
──前後しちゃうけれど。イントロの「(entrance)」は、自分で打ち込みを?
植田:はい。自分で作りました。
──前作『F.A.R.』の最後に入っていたインスト「(exit)」とセットになってる。
植田:繋がるものにしたいなとは思っていました。「(exit)」は、さんざん曲の中で、ノスタルジックとか、寂しいとか、そういう部分に触れて、昔の懐かしい風景がいっぱい自分のことを追いかけてくるところから、今の自分の家に帰ってきたら、猫がニャアと鳴いて、パタンとドアが閉まって、思い出に蓋をするようなイメージだったんです。「(entrance)」のほうは、和のテーマに合わせて、心地よさのある、子守唄のような旋律をオルゴールが奏でているようなイメージにしようと思って作りました。
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