【特集 インタビュー vol.5】植田真梨恵、『W.A.H.』ディレクションを語る「私たちの日常のそばにある“和”」

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2019年にメジャーデビュー5周年を迎える植田真梨恵が、『祝5周年!5作連続リリース!』と題して濃度の高いアニバーサリーを展開中だ。わずか4ヵ月間の間にリリースされる作品群は、2つの配信シングル、ライブ映像作品、2つのコンセプトミニアルバムという全5作。集大成というにはあまりにも現在進行形を駆け抜ける植田真梨恵自身が反映されたリリース攻勢となる。BARKSでは、“5周年”“5作連続”に重ね合わせて、“5本のインタビュー”から植田真梨恵のパーソナルに深く迫る。その最終回は“サウンド&ディレクション”。4月17日リリースの最新ミニアルバム『W.A.H.』について、たっぷり語るロングインタビューだ。

◆植田真梨恵 photo-gallery

2ヵ月前の前作『F.A.R.』のテーマが“大人の成長と旅立ち”ならば、『W.A.H.』のテーマは美しくも儚い“和”の情景。CMソングとして話題をさらった「勿忘にくちづけ」を筆頭に、タイアップ曲も多数含む、しっとりとした音像と美しいメロディに込めた深い思いとは? アーティストとして「今が一番幸せ」と言う、植田真梨恵の胸の内を覗いてみよう。

なお、BARKS『祝5周年!5作連続リリース!』特集ページでは未公開カットを掲載中だ。こちらも併せてお楽しみいただきたい。

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■『F.A.R.』は乾いたようなイメージ
■『W.A.H.』のほうはもっとウェット

──基本的な質問です。最初からミニアルバム2枚に分けて出そうと思っていたのかしら。

植田:5周年ということで、“どんなふうに活動していきたいですか?”という話をする中で、ここから何かにまとまっていくのではなく、今までで一番いろいろ作って、アートを追いかけられる年にしたいなと思ったんです。そこで、たとえば2枚のコンセプトミニアルバムで、対になるような作品をリリースしたらどうだろう?と。

──はい。なるほど。

植田:それと、「勿忘にくちづけ」という曲を、いい形でアルバムに入れたかったので。「それぞれにコンセプトをはっきりつけた2枚のアルバムを出したいです」という話をさせてもらってから、コンセプトを考え始めました。

▲植田真梨恵 画像ページ (※画像9点)

──はっきり分かれてますね。『F.A.R.』は大人の成長で、今度の『W.A.H.』は、和?

植田:和です。ジャポニズムの和。テーマとしては、実は和のほうが先に決まっていました。なにせ「勿忘にくちづけ」を良い形でお届けしたかったので、「勿忘にくちづけ」を中心にして、現代の日本を生きる私たちの“和”を表現したミニアルバムになればいいなと思っていました。和と言っても豪華絢爛な和ではなくて、私たちの周りにまだ残っている和というか、そういう日常に寄り添ったミニアルバムにしたいなと思っていました。

──結果的に、花鳥風月が盛り込まれて、伝統的な和の要素も入って来て。

植田:そうですね。入って来ましたね。

──音楽的には、『F.A.R.』の洋楽性と、『W.A.H.』の邦楽性の対比というテーマもあったとか。

植田:はい、それも意識したところではあるんですが、それ以前に、『F.A.R.』には乾いたようなイメージがあって、『W.A.H.』のほうはもっとウェットな、しっとりした感じが出るといいなと思いながら作っていましたね。

──そのへん、すごくうまくできてると思う。起用したミュージシャンは2枚とも、そんなに変わらないのに。

植田:そうですね。大きな違いは、『F.A.R.』は普段<Lazward Piano>でピアノを弾いてくれている西村(広文)さんが不参加なんです。西村さんのピアノは私の中で、しっとりした濡れたイメージがあるので、乾いた感じを求めた『F.A.R.』で弾いてもらうイメージがなかったんですよね。逆に、『W.A.H.』のほうで、これぞ!というピアノをたくさん弾いていただきました。

▲植田真梨恵 画像ページ (※画像9点)

──何はともあれ「勿忘にくちづけ」。CM曲としてヒットしてから1年ぐらい経ちますけど、これって書き下しでしたっけ?

植田:もともとは、「久留米絣(くるめがすり)のPR動画用に書き下ろして欲しい」とお話をいただいて、久留米絣をイメージして書いた曲です。久留米絣って昔からあるもので、伝統のものなんだけど、今の若い人たちにも親しんでもらえるように、ポーチだったり、パンツやジャケットだったり、いろんな新しいアイテムをどんどん作っているんですよ。それに、伝統といっても高級品というわけではなくて、とても丈夫だから、畑仕事をする時のモンペに使われていたりもするので、“デニムみたい”と思ったんですよ。そんなふうに私たちの日常のそばにあって、だけど昔から伝わる日本的なものという感じが、「勿忘にくちづけ」という曲に出たらいいなと思って書きました。

──その時点ですでに、和のイメージがあった。

植田:そうなんです。絣にもらった、和というコンセプトでした。それが巡り巡って、チョーヤ『夏梅』のCMソングとして使っていただくことになって、シングルとしてリリースできることになって。いっぱいライブで歌っていたら、「勿忘にくちづけ」という曲の心地よさというか、エネルギッシュではないけれど、空気がちょっと変わるような、そんなパワーに気づいたんです。日本人ならではの琴線に触れるというか。なので、心地よい中にパワーのある歌を作りたいなというところから始まった、『W.A.H.』でした。

──歌詞はとても美しい言葉が多くて、情景描写に心情を重ねるような、繊細な表現が素敵です。

植田:絣というものと、そのとき私が心の中に抱えていたものと、テーマがリンクしているんですけど、この曲のテーマは“受け継がれてゆく愛情”です。人から人へ渡ってゆくものがテーマになっています。たとえば誰かと一緒にいた時に、知らず知らずに移っている口癖とか、習慣とか、その人がいなくなってもまだそれが残っている。そういうことってあるよなと思ったんです。物事が移り変わること、気持ちが移り変わることは止められないけど、それこそ命もそうですけど、それを抱えて日常を丁寧に歩くようなイメージの曲です

◆インタビュー(2)へ
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