【インタビュー】ALICE IN MENSWEAR、1stアルバムリリース決定「頭を振るより、踊れる曲を」
■メロディはテクニカルな動きだけど
■それがキャッチーに感じるから不思議
──その「オートマタ -鋼鉄少女A-」はサイバーでダークなテイストに民族音楽の要素も採り入れることで、独自の世界観を作り上げていますよね。
KOJI:奇跡的にサッとできたんです(笑)。それに2人の相乗効果もあって、僕が作った土台に「ここにセリフを入れよう」とか「このギターが鳴っているところに民族っぽいコーラスを入れよう」というアイディアをmichi.が出したり、「ちょっとヤバいもの作ってるね」と言い合って。尖った曲は視点が違うと的外れなエッセンスが入ってボヤけてしまうこともあるんですけど、2人が見ているところが同じだということを強く感じましたね。
michi.:こういう曲なのに、「キャッチーなサビをつけよう」とか言い出したりする事故もなく(笑)。ヴィジョンが見えていなかったら途中で迷子になってしまうタイプの曲だけど、ビタッとハマった。
KOJI:より世界観が深まったよね。この曲のリーディングは声にエフェクトを掛けて、SFっぽくなっているじゃないですか。そこは映画『CASSHERN』みたいに美しい世界と荒廃した世界が混ざり合っているイメージ。michi.と組んで良かったなと改めて思ったし、本当に好きな曲ですね。で、ALICE IN MENSWEARを結成して最初の頃に作ったのは、中世ヨーロッパっぽい世界観の「ハジマリノウタ」だったんです。そこからいろんな曲を作って、「オートマタ -鋼鉄少女A-」ができた時に、「ハジマリノウタ」と対極に位置するALICE IN MENSWEARが形になったことを感じたんです。ここで、今回のアルバムの枠はできたなと。その上でアルバムの全体像を見て、あと必要なものを2曲くらい作ることで全部のピースを揃えました。
michi.:ある程度曲が揃ってくると1枚のアルバムに対して、“こんな曲が欲しい、あんな曲も欲しい”というのが明確に見えたんですよ。だから、制作の後半のほうが狙い撃ちはしやすかったですね。
KOJI:そうだね。僕の中では「capture -捕食者-」ができた時もひとつのポイントになりました。わりと早めにmichi.に提案した曲なんですけど、Aメロとかサビがぶっ飛んだメロディなんですよ(笑)。michi.はそれをメロディを追うだけにせず、流暢に話すように歌ってくれたんです。Aメロは半音階を使って不安定な感じの、ちょっと難しいメロディなんだけど、この曲が形になった時、“もっとメロディや曲調の幅を広げてもいいんだな。このメロディが歌える人なら、いろんなメロディーにチャレンジできるんじゃないかな”と思ったんです。
──たしかに、ALICE IN MENSWEARのメロディは結構キテますね。
michi.:ですよね(笑)。KOJIが考えるメロディはデモの段階からテクニカルな動きなんですけど、いちリスナーとして聴いた時、それがキャッチーに感じるという不思議なところがあるんです。
──KOJIさんのメロディセンスも、michi.さんの歌唱力もさすがです。それにmichi.さんはメロディやリズムに対する言葉の乗せ方も絶妙で、「capture -捕食者-」はそれが光っています。
michi.:言葉の響きを大事にしたいというのがあって。“ライム”と言われるラップの世界の韻の踏み方とか、その辺を大事にして作ったのが、「capture -捕食者-」です。
──“食うか 食われるか”という切迫感に溢れた歌詞を、マザーグースっぽく仕上げていることもポイントです。そういう手法を採ることで状況を楽しんでいるようなアブナさが漂っていますね。
michi.:デモを聴いた時に連想したのが“サイバースペース”で、未来的な歌詞が浮かんだんですけど、野生動物の息吹きも融合させたかった。そこから派生して、サイバースペースだけど、血が通っているモンスター達がそこに生きているというロールプレイングゲームの世界をイメージした部分もありました。ダンジョンで勝てない敵に遭遇して慌てふためいているような(笑)。そういう歌詞に対して、自分を笑い飛ばせるような振り切っておどけた歌い方をしているから、ヤバさが漂っているんだと思います。
──たしかにSF的な歌詞を乗せてしまっていたら、ここまで面白いものにはならなかったでしょうし。
michi.:楽曲のイメージにインスパイアされたんです。逃げていたり焦っていたり、でも生きようとしていることも感じ取れた。KOJIの曲は言葉がない状態で、いろんなイメージを喚起させてくれるんですよ。
──KOJIさんの曲はカッコいいリフにメロディを乗せて、というだけではなくて、世界観を表現したものが多いですよね。
KOJI:リフ主体の曲を作れないことがコンプレックスだったんですよ。そもそも、“いわゆるギタリスト”からイメージするリフものをカッコ良く弾けない。昔はそれを克服しようとあがいていたけど、今はそこを目指すよりも、世界観や雰囲気をギターで作れることが武器だと自分でも認識しているんです。だから、「リフが下手なんです」って言えるようになったし(笑)。もし器用にいろんなギターが弾けたら誰かのバックでも楽しめただろうけど、僕はそういうギタリストだからバンドを組まないとダメで。今はそれが原動力にしかなっていない。
──その話とも関連しますが、今作のギターは効果的なフレーズを厳選した感じがあって、少ない音数で成立させていることが印象的です。
KOJI:トラック数は少ないですね。“いっぱい入れても聴こえないじゃん”という思いもあるんですよ。だから、シンセとかストリングスに任せたほうがいいところはそうしつつ、ギタリストとしての魂もあるから、隙間を見つけたらズバッと突っ込むという。
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