【ライブレポート】今なお健在、ストライパーの“イエロー&ブラック・アタック”
本来は2018年8月に予定されていた来日公演であったが、ギタリストのオズ・フォックスの健康上の理由により延期/振替となり、前回から約3年ぶりとなる来日公演が2月9日、10日とクラブチッタ川崎にて行われた。
オリジナルメンバーのベーシスト、ティモシー・ゲインズが脱退し、後任には元ファイアーハウスのペリー・リチャードソンが加入している状況だが、1985年の初来日公演を完全再現する企画がベースとなっており、そのうえでグレイテスト・ヒッツ+ファン・フェイバリットを日割りで追加しながら、2ndアルバム『To Hell With The Devil』を完全再現するライブ内容となっていた。
初日はグレイテスト・ヒッツ+ファン・フェイバリット、二部構成からなるステージは、まずは初来日の『Live In Japan』完全再現からスタートする。
開演まで幕が下りたままのステージも昨今では珍しい気もするが、ステージへの期待感は高まるばかり。ほぼ定刻に幕が上がりメンバー登場でまずはオズ・フォックス(G)の元気そうな姿に安堵した。「Makes Me Wanna Sing」から一気に空気は1985年へタイムスリップ、「初来日公演へ来た人いる?」とマイケル・スウィート(Vo、G)の問いに挙手した者へ「君たちオールダーだね(笑)」と場を和ませる場面も見せ、「みんな1985年へ戻ろう」と怒涛のナンバーが続く。
マイケルの高音域の伸びは衰えず、独特のヴィヴラートも健在だ。ロバート・スウィート(Dr)はもちろんステージに対して横向きのドラムセット、背後からの扇風機でロングヘアをなびかせながら終始ヘドバンでのドラミングスタイルも変わらず。決してテクニック重視のドラマーではないのだが、彼のノリ/リズムは真似ができないところが不思議だ。
ほとんどMCも挟まず、前曲のエンディングから続くパターンも多い為に余韻に浸る間もなく次々と初期の名曲が繰り広げられていく。第一部のセットリストは事前に公開されているとは言え、彼らのデビューEP『The Yellow And The Black Attack』と1stアルバム『Soldiers Under Command』の収録曲は今もライブでの代表曲になっているし、当時が青春だったであろうオーディエンスはフルコーラスで歌い、コールアンドレスポンスも完璧な光景を見せる。
オズ(G)とペリー(B)のコーラスワークも抜群に、マイケルとオズのエッヂの効いたツインリード、ハモり、当時まだ荒削りだった部分の全てにおいて、今の彼らが優っている。全ての楽曲の流麗なメロディと美しいハーモニーは30年以上経っても色褪せない事を見事に証明していた。
ジャスト1時間で一部の『Live In Japan』完全再現を終えると、一旦20分ほどのインターバルが設けられた後、二部が開幕する。ここからは果たして何がプレイされるのか?すでに第一部でも満足感に達していたが、2018年にリリースされたニューアルバム『God Damn Evil』から2曲を披露、そして再びタイムスリップする。
「今度は1986年だ。1986年と言えばコレだろ?」とオズがスコーピオンズの「Rock You Like A Hurricane」のリフを一部プレイ、「W.A.S.P.なんてどう?いや、冗談だよ(笑)」とマイケルが観客を楽しませ、MTV時代の代表曲「Calling on You」から「Free」「More Than A Man」への流れはライブの鉄板、やはりここは外さない。驚いたのは『Against The Law』アルバムから「Lady」を披露した事だ。これまでの日本公演では初披露だったはずと記憶している。
「In God We Trust」もオリジナルVer.でプレイしたのは1989年の武道館公演のみ、今回も「I.G.W.T.」の方ではあったが、「Always There for You」とともに日本ではとても人気が高い事にステージ上のメンバーも驚いていた。
彼らのお約束である聖書を投げるパフォーマンスも健在、当時はクリスチャン・メタルというカテゴライズで色物扱いをされていた部分も否めないが、このスタイルを貫きながら、正統派で美しく優れた楽曲を武器に唯一無二の地位を確立した。アジア圏ではクリスチャンが多い韓国で大人気であったが、日本でも当時はもちろんのこと、2000年代の再結成以降にも新たなファンが増え続けている。
今回、マイケルもオズも愛機を長年のジャクソンからワッシュバーンに変えていたが、カラーリングはギターもベースも衣装もイエローアンドブラック、このカラーリングも彼らが主張するひとつである。
終盤にもニューアルバムからの2曲をプレイ、懐かしいだけではない、現役のバンドとしてコンスタントにアルバムを出し続けるからこそ、こういう企画のライブも生きるのだろう。「To Hell With The Devil」で幕を閉じた初日公演は、新作も含め誰もが聴きたかった曲を網羅しており、グレイテスト・ヒッツとファン・フェイバリットに相応しい内容となった。終始マイケルは全身全霊のプレイ、オズの病み上がり感は皆無であり、ロバートの華やかさはモトリー・クルーのトミー・リーに匹敵する。ペリーもすっかりバンドに馴染んでおり、今後も何年経とうとも彼らのイエロー&ブラック・アタックは続くのだと確信した。
文:Sweeet Rock / Aki
写真:Takumi Nakajima
<STRYPER Japan Tour 2019 ~Rock'n The World~ Live In Japan II 2019.2.9 CLUB CITTA' Kawasaki>
【一部:Live In Japan in 1985】
1.Makes Me Wanna Sing
2.Loud 'N' Clear
3.From Wrong to Right
4.You Know What to Do
5.Surrender
6.Together Forever
7.First Love
8.Loving You
9.Soldiers Under Command
10.Co'mon Rock
11.Battle Hymn Of The Republic
【二部:Greatest Hits & Fan Favorites】
1.Yahweh
2.Valley
3.Calling on You
4.Free
5.More Than A Man
6.Lady
7. I.G.W.T.(In God We Trust)
8.Always There for You
9.God Damn Evil
10.Sorry
11.To Hell with the Devil