【インタビュー】ビースト・イン・ブラック「夢や情熱のためには地獄もいとわない」

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フィンランドのヘヴィメタル・バンド、ビースト・イン・ブラック。の2ndアルバム『フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ』が2月8日に発売となった。新ドラマ―、アッテ・パロカンガスが加入しての初アルバムでもあり、アニメ/漫画『ベルセルク』と『北斗の拳』をテーマとした個性豊かな作品でもある。

『フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ』が誕生した経緯はどういうものだったのか、リーダーのアントン・カバネンに話を聞いた。



──ニュー・アルバム『フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ』は、デビュー作と比べどのような点が異なっている、あるいは進化していると言えますか?

アントン:さらに1980年代的になったという人もいるけど、俺としては音楽的には大きな違いはないと思う。聴いてもらえれば、すぐにビースト・イン・ブラックだとわかる作品だ。デビュー・アルバムとの一番の違いは、やっぱり制作の過程じゃないかな。とにかくスケジュールがタイトでね。去年のサマー・フェスティヴァルのシーズンは、毎週末フェスに出ていたから、アルバムはその間の平日に作業する必要があった。俺はプロデュースもやったから、その間ずっとスタジオにいなくちゃいけなかったんだ。あと、今回初めて歌詞の共作をやってみた。ヘルシンキに住んでいるイタリア人の友人とね。彼も『ベルセルク』などの漫画やアニメが大好きなんだ。とても助かったよ。同じ特別な対象に真剣な興味を持つ相手との共作は良い経験だった。うまくいったと思うよ。

──「地獄より愛を込めて」というタイトルにしたのはなぜですか?

アントン:このタイトルは、誰もが個人的な内容として受け止められるものだと思うからね。とても愛しているもの、とても愛している人、情熱を感じられる対象に対しては、代償を払うこともいとわないだろ?夢や情熱のためには地獄もいとわないということさ。

──つまり、あなたにとっての音楽やビースト・イン・ブラックということでしょうか。

アントン:うーん、ひとつの内容には限定したくないんだ。誰もがそれぞれの意味を見出せるようなタイトルが好きだからね。確かに俺にとっての音楽というのも、このタイトルに当てはまるだろう。このアルバム自体も地獄のような状況をくぐって、そして愛と献身をもって作られたわけだし。さっきも言った通り、とても厳しいスケジュールは非常にストレスで、まさに地獄だったからね。11月の頭にはナイトウィッシュのサポートでツアーに出たのだけど、アルバムのマスターがやっと完成したのは、そのわずか数日前のことだった。とにかく物凄い労働量とストレスだったよ。愛と献身で作り上げた作品でメンバーみんな誇りに思っている。まあ、このタイトルはそういう意味にもとれるけど、あくまでひとつの例でしかないよ。みんながそれぞれの解釈をしてくれればいい。

──歌詞のテーマは?『ベルセルク』や『北斗の拳』が題材になっていますが、「スウィート・トゥルー・ライズ」などは失恋ソングのようでもあります。


アントン:俺たちの歌詞は、おおまかに分けて2種類ある。漫画についてと個人的な経験についてのふたつだ。今回は5曲が『ベルセルク』についてで、1曲が『北斗の拳』について。『北斗の拳』も素晴らしい1980年代の漫画だよね。オープニング・トラックの「クライ・アウト・フォー・ア・ヒーロー」が『北斗の拳』についてさ。そして残りの半分が、個人的な感情や宣言とか。個人的な内容については、歌詞を読んだ人が好きに解釈してもらえるように書いているよ。俺の人生とか個人的な内容については、過度にオープンにしたいとは思っていないのだけど、読めば共感してもらえると思う。多くの人に起こりうる内容を扱っているからね。「ノー・サレンダー」などは宣言ともいえる内容で、精神的な強さが必要であるときに「諦めないぞ」というとてもストレートな内容だよ。「スウィート・トゥルー・ライズ」も個人的な内容で、おそらくみんなが共感できるものだと思う。ぜひ読んでみてほしい。この曲の歌詞は、非常に1980年代的であるとも思う。音楽同様ね。PVもそんな感じのものにしたんだ。

──『ベルセルク』にハマったきっかけは?フィンランドでも人気があるのでしょうか。

アントン:子供の頃に友達が教えてくれたんだ。2006年のことだったと思う。DVDを貸してくれてね、第1話を見たとたんにハマってしまい、一気に25話全部を見てしまった。終わり方がクリフハンガーだったから。続きが気になって仕方がなくて、我慢できなくて続きを漫画で読んだ。それ以来ずっと『ベルセルク』のファンなんだよ。登場人物たちも素晴らしいし、話の展開も素晴らしい。絵も美しい。主人公の視点で見た世界が魅力的で、とても共感できる。悪魔や魔法みたいな超自然的要素を除けば、非常に人間的なものが核になっているんだ。自分自身とは何なのか、人生の意味、なぜ世の中はこんなに苦痛に満ちているのか、自分の人生はどうなっていくのか、誰を愛し誰を憎むのか、復讐に人生をかけるべきなのか、夢を実現するために生きるのか、とかね。多くの人が直面するとても現実的な内容ばかりさ。だからこそ『ベルセルク』は素晴らしいんだ。ただ暴力的な悪魔を退治する漫画ではなくてね。最も魅力的な部分は、そういう人間的なところだよ。人間のダークな面について触れることもいとわないし、人間が持つ善も悪も、最も善いもの、最も邪悪なもの、そしてその間にあるものすべてが表現されている。だからこそ登場人物に共感できて、曲を書くときのインスピレーションにもなるんだ。

──『北斗の拳』との出会いは?

アントン:これは少々面白い話で、ヘルシンキに引っ越してきて1年後くらいだったかな、街をぶらついていたら、古本や中古ビデオを外に並べて売っているお店を見つけたんだ。俺はVHSのビデオが大好きなので、覗いてみたら、ものすごく安い値段でいろいろ売られていてさ。1本50セントとかだったから、そこにあったVHSをまとめて全部買ったんだよ。いろいろなアニメや映画が混じっていて、その中の何本かが『北斗の拳』だった。その時は『北斗の拳』は知らなかったのだけど、見てみたら「何なんだこれは!」という感じでさ。2008年頃だったと思う。『ベルセルク』にハマった数年後だったはず。『北斗の拳』についての曲は、過去にも書いたことがあったのだけど、アルバムに採用したのは今回が初めてなんだ。とてもパワフルなアニメだよね。

──新ドラマ―、アッテ・パロカンガスが加入して初のアルバムとなりますが、いかがでしたか?

アントン:彼は素晴らしい人間で、とてもつきあいやすいしプロフェッショナルでもある。彼がバンドに加わったときは、彼こそがふさわしいドラマーだと思ったよ。加わる以前から彼しかいないと思っていたのだけど「バンドに正式に加入しないか」と聞いたら、わずか1秒で「イエス」と答えてくれたんだ。彼はステージでもエンターテイナーだし、ただドラムを叩くだけではなく、ショーをクレイジーに演出する術を知っている。常にとても楽しんでドラムを叩くんだ。彼こそがビースト・イン・ブラックのドラマーにふさわしいよ。まさに100%のビーストさ。

──今回モーターヘッドに加え、『ロッキーIV』のサウンドトラックに使用されていたロバート・テッパーの「ノー・イージー・ウェイ・アウト」のカバーも行っていますね。

アントン:このカバーをやろうという話は2年くらい前からしていたんだ。バンドのメンバーみんながこの曲が好きで、特にカスペリは『ロッキー4』のサントラの大ファンでね。俺も、これは最高のサウンドトラックのひとつだと思うよ。この曲についてはメンバー全員のお気に入りということで、これを選んだんだ。モーターヘッドは、ベースのアイデアだった。俺は8歳のころからこの曲を知っていたから、プレイするのは簡単だったよ。モーターヘッドのカバーをビースト・イン・ブラックがやるというのは、少々意外だろ?パワー・メタル的なヴォーカリストがレミーを歌うわけだからね。ヤンはとてもうまくやったと思うよ。興味深く聴いてもらえると思う。

──バンド名をビースト・イン・ブラックにしたのはなぜですか。


アントン:理由は2つある。まず、バトル・ビーストを抜けたあと、バンドのイメージやエッセンスの一部として「ビースト」という言葉はキープしたかった。「ビースト」というのを思いついたのは俺だという誇りもあるしね。「ビースト」についてのストーリーも書いているのだけど、まだこれは発表していない。完璧に仕上がるまでは出したくないからね。それからもうひとつ、バンド名で俺が『ベルセルク』の大ファンであることを示したいというのがあった。『ベルセルク』には「黒い剣士」(Black Swordsman)というキャラが出てきて、彼は「闇の獣」(Beast of Darkness)を抱えている。それで、"Black Swordsman"と"Beast of Darkness"を合体させて、Beast in Blackとしたんだ。

──では最後に日本のファンへのメッセージを。

アントン:まず、このインタビューをチェックしてくれているみんな、どうもありがとう。ビースト・イン・ブラックのニュースをチェックし続けてくれ。ニュー・アルバムは2月8日に出ているから買って聴いてみてほしい。気に入ってくれるといいな。もうすぐまた日本に行けるかもしれないから、ぜひ見に来てほしい。ファースト・アルバムも聴き続けてくれ。

取材・文:川嶋未来


ビースト・イン・ブラック『フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ』

2019年2月8日 世界同時発売
【30セット 直筆サインカード付きCD+Tシャツ】 WRDZZ-828 / ¥6,000+税
【50セット 直筆サインカード付きCD】 WRDZZ-825 / ¥3,500+税
【CD】 GQCS-90684 / 4562387208593 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.クライ・アウト・フォー・ア・ヒーロー
2.フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ
3.スウィート・トゥルー・ライズ
4.リペントレス
5.ダイ・バイ・ザ・ブレイド
6.オーシャンディープ
7.アンリミテッド・シン
8.トゥルー・ビリーヴァー
9.ディス・イズ・ウォー
10.ハート・オブ・スティール
11.ノー・サレンダー
《ボーナストラック》
12.キルド・バイ・デス(モーターヘッド カヴァー)
13.ノー・イージー・ウェイ・アウト(映画『ロッキー4/炎の友情』挿入歌 / ロバート・テッパー カヴァー)

【メンバー】
アントン・カバネン(ギター/ヴォーカル)
ヤニス・パパドプロス(ヴォーカル)
カスペリ・ヘイッキネン(ギター)
マテ・モルナール(ベース)
アッテ・パロカンガス(ドラムス)

◆ビースト・イン・ブラック・レーベルサイト
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