【インタビュー】グレタ・ヴァン・フリート「心臓の鼓動の共鳴があって一体になれる」
第61回グラミー賞授賞式にて、最優秀新人賞を始め最優秀ロック・パフォーマンス、最優秀ロック・ソング、最優秀ロック・アルバムにエントリーを受け、見事に最優秀ロック・アルバムを受賞したのが、グレタ・ヴァン・フリートだ。
ヒップホップとR&B一色の米音楽状況の中で、突然変異のように、あるいは大きなぶり返しを体現するかのように、グレタ・ヴァン・フリートはピュアでザクザクとしたロック原石の魅力を放つ。楽器が放つサウンドを自らの肉体でブーストさせ、初期衝動そのままに空気を震わせる彼らのバンド・サウンドは、世界中のロックファンを大いに歓喜させている。
平均年齢弱冠二十歳の彼らは、果たしてどのような若者なのか。初めて日本を訪れた彼らをキャッチ、話を聞いた。
──初来日公演はいかがでしたか?
サム・キスカ(B):本当にスペシャルだった。いつもと違ったのは、みんなが敬意を払って真剣に聴いてくれるところだよ。
ジェイク・キスカ(G):来日する前から「日本人はとにかく一生懸命聞いてくれる。時にはものすごく静かになるんだけど、それは音楽に集中しているからなんだよ」って聞いていたんだ。それもよくわかったけど、一方でものすごく楽しんで飛んだり跳ねたりしてくれている様子もわかった。
サム・キスカ(B):確かに。何より日本人のリズム感は最高だよ。手拍子が絶対にずれないんだ。アメリカじゃああは行かないよ(笑)。
──日本公演の経験が、これからの作品作りにも影響を与えそうですか?
ジェイク・キスカ:もちろんだよ。ものすごく刺激を受けているからね。実際今回のツアー中にもたくさんの曲を書いているんだ。だから日本でも曲が書けるかもしれないね。
サム・キスカ:今回のアルバムがリリースされたことによって、自分たちが世界に飛び出して様々な文化に触れることができるようになった。そういう全ての経験がセカンド・アルバムにつながっていくんだと思うよ。
──バンド結成してから6年ですよね?
サム・キスカ:そう聞くと年をとったな、って思っちゃうけど(笑)。
──6年前、今のような状況を想定していましたか?
ジェイク・キスカ:いやいや全く思ってもいなかった。でもなにか特別なものはあるんじゃないかという気持ちはあった。それが具体的に何なのかどういうことなのかは分からなかったけどね。
サム・キスカ:今、状況が整ったんだと思う。文化的にもアートの面でもいろんな革新があって、これまで注目されないようなアートや日の目を浴びなかった文化も、今だったら注目され手が届くことが可能になった。そういう状況が、僕たちにとっても良かったんだと思うんだ。
──6年後はどのようなイメージを描きますか?
ジェイク・キスカ:それは難しいなあ…。6年前に今の僕らを予想できなかったように、今から6年後どうなるかはちょっとわからないなあ。
サム・キスカ:風の吹くままだよ。鶏と卵のような話でね、その頃にはもうダメだったら、それはそれでいいんだよ(笑)。
──世界中のロックファンがグレタ・ヴァン・フリートのライブを歓迎していますが、バンドにとって“いいライブ”とはどういうものでしょうか。
サム・キスカ:いろんなファクターがあるよね。細かいことを言ったら「その日の朝に何を食べたか」から始まって、どんなお客さんたちがいてステージはどうなっていて、電気の具合や照明の具合…すべてが関わってくるからね。でも僕らは、いいショーを行うために本気で夢中になって取り組んでいるんだよ。
ジェイク・キスカ:そう。そしてその日の僕らの気分にもよってくる。でもね、本当に大事なのは人間的要素だよ。僕らだけじゃなくてお客さんも含めて、その時の条件の中でこそ飛び散る火花のようなものが、ショーの出来に関わってくるんだと思う。その場にいる人達の気持ちは人によってみんな様々だし、曲によっても受ける印象はみんな変わってくるだろうから、その時の条件で状況は大きく変わっていくよね。
──最高の演奏ができたのに盛り上がりが今ひとつだったり、逆に納得行かない演奏だったけどものすごく盛りあがったり…と、ギャップを感じることはありませんか?
サム・キスカ:それはあるだろうね。僕らは「音楽」という部分に関しては一生懸命演っているけれど、観ている側からすると、演奏だけじゃなくて、例えば照明だったりスモークが焚かれていたり…とそういう要素が半分くらいあってのショーだと思う。僕らはステージに立ったらもう目を閉じて音楽に入り込んじゃっているような状況だから、そこから先はなかなか難しいよね。
ジェイク・キスカ:お客さんが5人でも5000人でも、自分たちが取り仕切れるのは演奏部分だけなんだよ。演奏の能力というところだけに関していえば、僕らは自信を持って安定したプレイをしていると思う。
──自分たちが表現したいミュージシャンシップと、オーディエンスが求めるエンターテイメントとの間にギャップを感じることはありますか?
サム・キスカ:そこは面白いところだと思う。確かにオーディエンスの期待に応えなくちゃいけないと思うけど、だからといってアートが犠牲になってはいけない。でも結局、アーティストというのはファンのおかげで存在できているわけだから、例えば「You're The One」という曲は、シンプルだからこそみんな素直に反応してくれるし、誰もが持っている心臓の鼓動の共鳴があって一体になれる。突き詰めると、そういうところにたどり着くような気もする。
ジェイク・キスカ:曲を書いている時は、僕らは僕らなりの動機づけがある。でも出来上がった後に聴いた人が何を感じるか、その多様性というのは面白いところだと思っているよ。
──残りの日本公演も素晴らしいものになりそうですね。
サム・キスカ:スパークするよ。ものすごく楽しみだからね。
ジェイク・キスカ:どんなお客さんなのか、それに応じて自分の演奏がどう変わるか、自分でも楽しみにしているところがあるんだ。僕らはライブでは空間/広がりを大事にしているから、喜びや悲しみや怒りといった人間の幅広い感情見たいなものを、このセットを使って表現できたらいいな。
──これからの活躍も期待しています。ありがとうございました。
Photo by Yuki Kuroyanagi
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
グレタ・ヴァン・フリート『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』
UICU-1298 ¥2,200+税
※日本盤ボーナス・トラック4曲(衝撃のデビューEP「ブラック・スモーク・ライジング」全曲)収録
1.エイジ・オブ・マン
2.ザ・コールド・ウィンド
3.ホエン・ザ・カーテン・フォールズ
4.ウォッチング・オーヴァー
5.ラヴァー、リーヴァー(テイカー、ビリーヴァー)
6.ユーア・ザ・ワン
7.ザ・ニュー・デイ
8.マウンテン・オブ・ザ・サン
9.ブレイヴ・ニュー・ワールド
10.アンセム
*11.ハイウェイ・チューン
*12.サファリ・ソング
*13.フラワー・パワー
*14.ブラック・スモーク・ライジング
※11-14:日本盤ボーナス・トラック(デビューEP「ブラック・スモーク・ライジング」全曲)