【特集 インタビュー vol.1】植田真梨恵、ライブを語る「物語の主人公として、心を空っぽに」

ポスト

■当時の弾き語りと今とでは
■全然違うものになってるかな

──いろいろな形のライブのなかでも、いちばん暑苦しいライブですかね(笑)。そういう<UTAUTAU>と、弾き語りライブはまた違うものですよね?

植田:全て私がやっているものなので、そんなに差はないと思うんですけど(笑)。でも、なんでしょうね。2018年は<たったひとりのワンマンライブ vol.3 “good-bye stereotype”>というアコギ1本持って回る弾き語りツアーが3年ぶりにあって。それこそ、自分の手の届く範囲のライブだったんです。もちろん一番後ろの人に届くように大きな声でも歌うけど、その空間で聞こえるだけの音量でしか歌を発さない瞬間もあったり。テンポも揺れながらだったり、その時々で歌詞に自分で疑問をもってみたり。そういう意味では、気づきがあったツアーだったんです。これも泥臭いんですけども、“イエーイ”っていうタイプのものではないんです。

──もっと自分と向き合うようなものですかね。

植田:ひとりずつと目を合わせながら、聞こえる音量で届ける。昨年のツアーはそれがすごく良かったんです。今までも、リリースイベントとかで弾き語りをやってきたんですけど、弾き語りって、それこそリハーサルを見ているお客さんから「あの曲やって」って言われたらやる、みたいな。そのくらいの距離感での歌というか、私がお守りみたいに思っている歌を歌う時間ですね。私が、そこにそのままいるだけのライブを見てもらうというか。

▲植田真梨恵 画像ページ【3】へ

──お客さんからリクエストが来たらやっちゃう感じなんですね。

植田:最初から最後までそれだと緊張感はないですけど(笑)。場所にもよりましたが、昨年のツアーではその場所場所でリアルな反応があったんですよね。それってリリースイベントから繋がっているラフさというか。ほんとにね、ただ歌ってるだけのお姉ちゃんなので(笑)。そういう距離感も気持ちいいんですよね。

──もともと植田さんのライブの原点って弾き語りで歌うような感じですよね。

植田:言われてみれば、そうかもしれません。さすがに、アコギを持って弾き語りをはじめた17歳とか18歳の頃に、お客さんから「あの曲やって」と言われて、それをやる強さはなかったですけどね(笑)。当時は、“こうありたい”とか“こうあるべき”という憧れに対する意識が強かったし、それこそお芝居じゃないけど、ひとりで世界観を作り上げるのに必死だったので。当時の弾き語りと今とでは、全然違うものになってるかなと思います。

──“ひとりで世界観を作り上げるのに必死だった”感じから、“歌ってるお姉ちゃん”とか“歌うのを楽しんでいる”感じになるのって結構な違いじゃないですか。どんな変化があったんでしょう?

植田:メジャーデビューをさせてもらってからというもの、キャンペーンでラジオ局とかいろんなところを回って、その1日の終わりに、夜7時とか8時にインストアライブをさせてもらうことが多いんですけど、そのアコギで歌う時間が大好きで、本当に自分にとってご褒美だなっていつも思うんです(笑)。

──「ようやく歌えるぞ!」って。

植田:「やっとこの時間が来た!」って(笑)。お客さんと会って「歌います!」って歌える時間がとても楽しくて嬉しくて、緊張している場合じゃなかった。その感じが、弾き語りツアーに繋がっていったんでしょうね。楽しいだけになりすぎないように気をつけたりもしてますけど(笑)。そういう気持ちになれたメジャーデビュー以降、弾き語りがすごく好きになったかもしれない。

▲植田真梨恵 画像ページ【3】へ

──ギター1本と歌とで勝負するんだ!みたいな、変な緊張感はなかったんですね。

植田:そういう緊張感は、マネージャーから「弾き語りでライブをしましょう」って提案された10代の頃はあったと思います。最初は本当にイヤで(笑)。なんでイヤかというと、私は歌手になりたかったからで。アコースティックギターを弾き語りするシンガーになりたいわけじゃなかったんですよ。自分のイメージしている歌手像とは違ったんですよね、弾き語りは。でも、自分で作った曲を自分でアコースティックギターを持って歌うという行為は、とても手軽で自然な流れじゃないですか。最初は違和感があったんですけど、“やるならちゃんとやろう!”と思って練習をして。

──そこから、弾き語りを練習したんですね(笑)。

植田:アコギすら持ってなかったですからね(笑)。初めてアコギを買って練習して、そこからライブハウスのブッキングをしてもらって出演、という。

──マネージャーさんは、どうして植田さんに弾き語りを勧めたのでしょうか?

マネージャー:当時、“歌さえ聴いてもらえたら惹きつけられる”と思っていたので、植田真梨恵を知らない人がいる場所、特にオープンスペースで歌える場所を探していて、弾き語りがいちばん身軽でした。結果的に、年間50本以上のライブを行うようになっていったので、その全部をバンド形態でまわることが難しかったということもあります。でも、植田さんはすぐにギターを弾きたがるクセがあったので、嫌がっていると当時は全く思ってなかったですね(笑)。

植田:武者修行的にアコギをはじめたら、段々と弾き語りが大好きになったし、むしろそれでしか出せない空気感もあるということを知りました。昨年のツアーは本当に面白かったですしね。


◆インタビュー(4)へ
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報