【レビュー】洋楽ヒット曲を総まとめ『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』
▲『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』
各音楽メディアから今年のベストアルバムなどが発表されるこの時期。例えば洋楽のポップスが好きだけど、各アーティストのアルバムまでチェックできないという人にオススメなのが、年の瀬にリリースされる洋楽ヒット編集盤的な作品だ。ここで紹介する『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』はヒップホップやR&B、ダンス系のポップチャートを賑わせた楽曲をCD2枚にわたって収録している。
本作を聴きながら今年一年間の洋楽ポップ界を振り返ってみると、ヒップホップ勢の人気の巻き返しが大きな流れと言える。すでにさまざまな音楽メディアで今年のベスト男性アーティストにドレイクが選ばれているほか、昨年のグラミー賞でベストビデオを受賞したケンドリック・ラマー「HUMBLE.」をはじめとしたインテリジェント系アーティストとは別の流れで、トラップの暗いビートとギャングスター然としたリリックで人気を博したアトランタ出身の3人組ミーゴスの大活躍も、今年のUSポップを語る上では欠かせない。本作に収録されるファレル・ウィリアムスがプロデュースする「Stir Fry」もヒットを記録した。今年登場した新たなラップ・アイコンは何と言ってもポスト・マローンだろう。今年リリースしたアルバム『Beerbongs & Bentleys』から「Better Now」を含んだシングル・カットの9曲を全米チャートトップ20位以内に送り込み、ザ・ビートルズの記録を破ったことでも話題となったが、入れ墨だらけながらに愛くるしいキャラクターと哀愁のある声質が大人気となった秘訣だ。また、「Lucid Dreams」がスティングのサンプリングでヒットを記録したエモ・ラップの新鋭、ジュース・ワールドの成長にも期待したい。
▲ケンドリック・ラマー
▲ミーゴス
▲ポスト・マローン
これは今にはじまったことではないが、90年代回帰の流れはヒップホップ/R&Bシーンには今年も色濃く出ていた。そのなかでも「Boo'd Up」が大ヒットを記録した女性シンガーのエラ・メイに加えて、ベルリン出身の女性シンガー、アンバー・マークも今後の注目株だ。DJキャレドの秘蔵っ子としてヒットを飛ばしたケント・ジョーンズ「Merengue」は、ジョージ・ベンソンをサンプリングした、これまた90'sテイスト溢れるトラックで人気を博した。また、ポップ・シンガー勢だと、アリアナ・グランデが自身の4th作『Sweetener』を代表するシングル「no tears left to cry」がロング・ヒットを記録したほか、ジャスティン・ビーバーはブラッドポップとの「Friends」で安定感のある歌声を披露している。
▲エラ・メイ
▲ジャスティン・ビーバー
今年のポップ系のサウンド的なトレンドはずばりラテンだ。現在チャートを席巻しているプエルトリコのバッド・バニー「MIA」をはじめ、10年以上前に「ガソリーナ」をヒットさせたレゲトンのラッパー、ダディー・ヤンキーが「Dura」で大復活を遂げている。またジャスティン・ビーバーのストリーミング再生記録を破ったプエルトリコ出身のルイス・フォンシの「エチャメ・ラ・クルパ」などもヒットを記録した。レゲエ界の人気者ショーン・ポールもデヴィッド・ゲッタと組んで「Mad Love」でレゲトン風味のトラックに挑戦しているほか、DJスネイク「A Different Way」でも同じくレゲトンのビートが聴ける。
▲ダディー・ヤンキー
▲ショーン・ポール
ダンス・ポップに関しては、ハードなEDMサウンドの衰退が始まったのは、すでに昨年からの流れだが、さらにメロウかつポップな路線へと推移している。EDM界のポップス職人でもあるゼッドが、マレン・モリス&グレイと制作した「The Middle」は清涼感あふれるポップ・チューンで大ヒットを記録し、来年のグラミー2019の最優秀楽曲にも選出されている。トロピカル・ハウスの新旗手として注目されているカイゴの台頭(本作ではセレーナ・ゴメスとの「It Ain't Me」を収録)のほか、ハードなエレクトロ・サウンドが売りだったティエストも、ジェコとの「Jackie Chan feat. Preme & Post Malone」では、ブルーノ・マーズ的なEDMファンク・チューンを聴かせているあたりも、今年の流れと言えるだろう。よりストレートなEDMらしいダンス・ミュージックだとマシュメロの活躍がめざましかった。カイゴと同じくセレーナ・ゴメスをフィーチャーした「Wolves」は今年のヒットナンバーのひとつ。EDMシーンにおいては最重要アーティストであったアヴィーチーの逝去は、エレクトロ・ポップを愛する世界中のリスナーを悲しませた。本作にも収録されている「Lonely Together feat. Rita Ora」をはじめ、活動再開後の彼の作品にはEDMという枠を超越した個性が滲み出ていただけに、余計にその死が惜しまれる。
▲ゼッド
▲アヴィーチー
さて、2018年のポップスを振り返ってみたが、ここで取り上げたアーティストのほとんどは冒頭に触れた作品『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』でチェックできる。本作を片手に2018の洋楽ヒット曲をチェックしてみてはいかがだろう?
文◎伊藤大輔
¥3,240(税込)
UICZ-1700/1
[DISC 1]
01. Ariana Grande / no tears left to cry
02. Maroon 5 / Girls Like You
03. Lady Gaga / The Cure
04. Justin Bieber & BloodPop® / Friends
05. Zedd, Maren Morris & Grey / The Middle
06. Avicii / Lonely Together feat. Rita Ora
07. 5 Seconds Of Summer / Youngblood
08. Marshmello & Bastille / Happier
09. Selena Gomez & Marshmello / Wolves
10. Kygo & Selena Gomez / It Ain't Me
11. Jonas Blue / Rise feat. Jack & Jack
12. Shawn Mendes / Lost In Japan (Remix) feat. Zedd
13. Liam Payne / Bedroom Floor
14. Tiësto & Dzeko / Jackie Chan feat. Preme & Post Malone
15. Jax Jones & Mabel / Ring Ring feat. Rich The Kid
16. MNEK / Colour feat. Hailee Steinfeld
17. Ellie Goulding × Diplo / Close To Me feat. Swae Lee
18. DJ Snake / A Different Way feat. Lauv
19. Nicki Minaj / Bed feat. Ariana Grande
20. Cashmere Cat, Major Lazer & Tory Lanez / Miss You
21. SZA x Calvin Harris / The Weekend (Funk Wav Remix)
22. Ella Mai / Boo'd Up
[DISC 2]
01. Kendrick Lamar / HUMBLE.
02. The Weeknd, Kendrick Lamar / Pray For Me
03. Post Malone / Better Now
04. Juice WRLD / Lucid Dreams
05. French Montana / Unforgettable feat. Swae Lee
06. Lil Dicky / Freaky Friday feat. Chris Brown
07. Chris Brown / Questions
08. Sean Paul&David Guetta / Mad Love feat. Becky G
09. Daddy Yankee / Dura
10. Luis Fonsi & Demi Lovato / Échame La Culpa
11. Zaeden / Tempted To Touch feat. Rupee
12. Unicq / Mercy (Shy Guy)
13. Kent Jones / Merengue
14. The-Dream / Summer Body feat. Fabolous
15. Rae Sremmurd, Swae Lee & Slim Jxmmi / Guatemala
16. Justine Skye / Back For More feat. Jeremih
17. Amber Mark / Put You On feat. DRAM
18. Lil Wayne / Uproar feat. Swizz Beatz
19. Migos / Stir Fry
20. Quavo / WORKIN ME
21. Lil Jon / Alive feat. Offset, 2 Chainz
各音楽メディアから今年のベストアルバムなどが発表されるこの時期。例えば洋楽のポップスが好きだけど、各アーティストのアルバムまでチェックできないという人にオススメなのが、年の瀬にリリースされる洋楽ヒット編集盤的な作品だ。ここで紹介する『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』はヒップホップやR&B、ダンス系のポップチャートを賑わせた楽曲をCD2枚にわたって収録している。
本作を聴きながら今年一年間の洋楽ポップ界を振り返ってみると、ヒップホップ勢の人気の巻き返しが大きな流れと言える。すでにさまざまな音楽メディアで今年のベスト男性アーティストにドレイクが選ばれているほか、昨年のグラミー賞でベストビデオを受賞したケンドリック・ラマー「HUMBLE.」をはじめとしたインテリジェント系アーティストとは別の流れで、トラップの暗いビートとギャングスター然としたリリックで人気を博したアトランタ出身の3人組ミーゴスの大活躍も、今年のUSポップを語る上では欠かせない。本作に収録されるファレル・ウィリアムスがプロデュースする「Stir Fry」もヒットを記録した。今年登場した新たなラップ・アイコンは何と言ってもポスト・マローンだろう。今年リリースしたアルバム『Beerbongs & Bentleys』から「Better Now」を含んだシングル・カットの9曲を全米チャートトップ20位以内に送り込み、ザ・ビートルズの記録を破ったことでも話題となったが、入れ墨だらけながらに愛くるしいキャラクターと哀愁のある声質が大人気となった秘訣だ。また、「Lucid Dreams」がスティングのサンプリングでヒットを記録したエモ・ラップの新鋭、ジュース・ワールドの成長にも期待したい。
▲ケンドリック・ラマー
▲ミーゴス
▲ポスト・マローン
これは今にはじまったことではないが、90年代回帰の流れはヒップホップ/R&Bシーンには今年も色濃く出ていた。そのなかでも「Boo'd Up」が大ヒットを記録した女性シンガーのエラ・メイに加えて、ベルリン出身の女性シンガー、アンバー・マークも今後の注目株だ。DJキャレドの秘蔵っ子としてヒットを飛ばしたケント・ジョーンズ「Merengue」は、ジョージ・ベンソンをサンプリングした、これまた90'sテイスト溢れるトラックで人気を博した。また、ポップ・シンガー勢だと、アリアナ・グランデが自身の4th作『Sweetener』を代表するシングル「no tears left to cry」がロング・ヒットを記録したほか、ジャスティン・ビーバーはブラッドポップとの「Friends」で安定感のある歌声を披露している。
▲エラ・メイ
▲ジャスティン・ビーバー
今年のポップ系のサウンド的なトレンドはずばりラテンだ。現在チャートを席巻しているプエルトリコのバッド・バニー「MIA」をはじめ、10年以上前に「ガソリーナ」をヒットさせたレゲトンのラッパー、ダディー・ヤンキーが「Dura」で大復活を遂げている。またジャスティン・ビーバーのストリーミング再生記録を破ったプエルトリコ出身のルイス・フォンシの「エチャメ・ラ・クルパ」などもヒットを記録した。レゲエ界の人気者ショーン・ポールもデヴィッド・ゲッタと組んで「Mad Love」でレゲトン風味のトラックに挑戦しているほか、DJスネイク「A Different Way」でも同じくレゲトンのビートが聴ける。
▲ダディー・ヤンキー
▲ショーン・ポール
ダンス・ポップに関しては、ハードなEDMサウンドの衰退が始まったのは、すでに昨年からの流れだが、さらにメロウかつポップな路線へと推移している。EDM界のポップス職人でもあるゼッドが、マレン・モリス&グレイと制作した「The Middle」は清涼感あふれるポップ・チューンで大ヒットを記録し、来年のグラミー2019の最優秀楽曲にも選出されている。トロピカル・ハウスの新旗手として注目されているカイゴの台頭(本作ではセレーナ・ゴメスとの「It Ain't Me」を収録)のほか、ハードなエレクトロ・サウンドが売りだったティエストも、ジェコとの「Jackie Chan feat. Preme & Post Malone」では、ブルーノ・マーズ的なEDMファンク・チューンを聴かせているあたりも、今年の流れと言えるだろう。よりストレートなEDMらしいダンス・ミュージックだとマシュメロの活躍がめざましかった。カイゴと同じくセレーナ・ゴメスをフィーチャーした「Wolves」は今年のヒットナンバーのひとつ。EDMシーンにおいては最重要アーティストであったアヴィーチーの逝去は、エレクトロ・ポップを愛する世界中のリスナーを悲しませた。本作にも収録されている「Lonely Together feat. Rita Ora」をはじめ、活動再開後の彼の作品にはEDMという枠を超越した個性が滲み出ていただけに、余計にその死が惜しまれる。
▲ゼッド
▲アヴィーチー
さて、2018年のポップスを振り返ってみたが、ここで取り上げたアーティストのほとんどは冒頭に触れた作品『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』でチェックできる。本作を片手に2018の洋楽ヒット曲をチェックしてみてはいかがだろう?
文◎伊藤大輔
『WHAT'S UP 〜GREATEST HITS 2018-2019〜』
¥3,240(税込)
UICZ-1700/1
[DISC 1]
01. Ariana Grande / no tears left to cry
02. Maroon 5 / Girls Like You
03. Lady Gaga / The Cure
04. Justin Bieber & BloodPop® / Friends
05. Zedd, Maren Morris & Grey / The Middle
06. Avicii / Lonely Together feat. Rita Ora
07. 5 Seconds Of Summer / Youngblood
08. Marshmello & Bastille / Happier
09. Selena Gomez & Marshmello / Wolves
10. Kygo & Selena Gomez / It Ain't Me
11. Jonas Blue / Rise feat. Jack & Jack
12. Shawn Mendes / Lost In Japan (Remix) feat. Zedd
13. Liam Payne / Bedroom Floor
14. Tiësto & Dzeko / Jackie Chan feat. Preme & Post Malone
15. Jax Jones & Mabel / Ring Ring feat. Rich The Kid
16. MNEK / Colour feat. Hailee Steinfeld
17. Ellie Goulding × Diplo / Close To Me feat. Swae Lee
18. DJ Snake / A Different Way feat. Lauv
19. Nicki Minaj / Bed feat. Ariana Grande
20. Cashmere Cat, Major Lazer & Tory Lanez / Miss You
21. SZA x Calvin Harris / The Weekend (Funk Wav Remix)
22. Ella Mai / Boo'd Up
[DISC 2]
01. Kendrick Lamar / HUMBLE.
02. The Weeknd, Kendrick Lamar / Pray For Me
03. Post Malone / Better Now
04. Juice WRLD / Lucid Dreams
05. French Montana / Unforgettable feat. Swae Lee
06. Lil Dicky / Freaky Friday feat. Chris Brown
07. Chris Brown / Questions
08. Sean Paul&David Guetta / Mad Love feat. Becky G
09. Daddy Yankee / Dura
10. Luis Fonsi & Demi Lovato / Échame La Culpa
11. Zaeden / Tempted To Touch feat. Rupee
12. Unicq / Mercy (Shy Guy)
13. Kent Jones / Merengue
14. The-Dream / Summer Body feat. Fabolous
15. Rae Sremmurd, Swae Lee & Slim Jxmmi / Guatemala
16. Justine Skye / Back For More feat. Jeremih
17. Amber Mark / Put You On feat. DRAM
18. Lil Wayne / Uproar feat. Swizz Beatz
19. Migos / Stir Fry
20. Quavo / WORKIN ME
21. Lil Jon / Alive feat. Offset, 2 Chainz
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