【インタビュー】田澤孝介 (Waive)、3度目の再演で「燃え尽きることができたら」

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■最初の再演はもう懺悔でした
■再再演ではごめんなさいは言わないと

──人生を長く歩んで来た分、分母が大きくなるというか、ちょっと仲違いした時期もあったけれど、全体の長い時間の中で捉えるとそのインパクトが薄まっていく、みたいなことですかね?

田澤:そういうことなんですかね? そこにこだわっていると前に進まない、というのもあったでしょうし。だから……最初の再演はもう、懺悔でしたよ、僕は。自分が“辞める”と言ったことでWaiveは解散したので。解散以来初めてのWaiveのステージに立って、曲が鳴って、現役の時には聞いたことないぐらいの歓声が聞こえてきて。ライヴが進むにつれて、ファンのみなさんが笑顔になっていくわけですよ。“あぁ、俺はこの笑顔を奪ったんだな”と。それに、再演当初は杉本くんとの関係も今ほど円滑じゃなかったから、やっぱりちょっと意識をする、というのもあったしね。

──生々しい怒りとかじゃなくても、すんなりはいけない、みたいな感じが……?

田澤:うん(笑)。でも“再演するってことは決まったんだし”というのがもちろんあったので、ちゃんとやったんですけど、お互い“理由”は必要だった気がします。

──もう一度集まることへのハードルが高かったわけですね。

田澤:そうそう。“こういう理由があるからやっているんだ”という大義名分が、自分的にも対外的にも必要だった。今はそういうの、別に要らないですもんね。

──その懺悔の第1回を経た、第2回目の再演に向かう際は、やはり全然意識が違ったってことですよね?

田澤:傷付けたという事実は消えないけれども、新しい想い出ができることで、少しでも和らげば、とは思えていましたね。これはあくまでも、僕の個人的な感覚ですよ? それで、5年後にチャンスがいただけたので、“じゃあ、懺悔に特化していて前回はできなかったことを、今度はやろう”と。もう“ごめんなさい”は言わない、と決めて。見せたいのはそんな姿じゃなくて、解散する前、要は“より良かった頃のWaive”を、今までのファンの方はもちろん、今現在の自分らの活動を通じてWaiveを知ってくれた新しいファンの方にも見てもらおう、というのが僕の中ではテーマでした。だから、(2016年の再再演は)いい感じで終われたんだと思います。

──田澤さんの心境の変化は、かなり大きかったんですね……。

田澤:そうですね。今もそう思えば、すぐ懺悔モードになるんですけどね。

──消えはしない?

田澤:消えない消えない。再演だって、別にそこを許したからOKになったわけじゃなくて、そこはそこで許さないけど、そうではない他の部分でやれてるんだよ?みたいな。分かんないですけど、僕はそう思っとかなあかん、と思ってる。僕は“全部許された”と思ってはいけない。許すかどうかは周りの人たちが決めることで。僕は一生抱えるんだと思ってます。

──十字架を背負って……。

田澤:いやまぁ、そう言ったら被害者っぽく聞こえてしまうから、イヤですけど。

──表現が難しいですね。そういった複雑な想いは根底にありながら、再再演では曲も新しく生まれていましたよね? そういう“次に繋がるもの”があったのも大きかったですか?

田澤:どうだろう? その時はまだ“次がある”とは思っていなかったのでね。だから、曲が生まれたのは、その時の“思いっきり悔いなくやった”という結果の1つですね。

──なるほど、活動の実りとして。“次どうしたいから”という希望としてではなく?

田澤:うん。もしかしたら次への願いはそこに籠ってたのかもしれないですけど。あの時は“次やるなら何年後かねぇ?”みたいな話だったので。だから、今回は“早いなぁ”と思ってますよ(笑)。

──ははは。まだ2年しか経ってないですもんね。

田澤:現状、やらない理由がないので。きっと、やらない理由ができたらやらないんでしょう。でも今回の話が出た時、誰もNOとは言わなかったですから。すんなりと、“いいんじゃないですか?”という感じだった記憶があります。そんなふうにまた活動できるのも、ファンの人らのおかげですけどね。それを受け入れてくれてる、というか。だって結構勝手な話じゃないですか?“解散中”って(笑)。弄ぶようなことをするつもりはさらさらないですけど、動いたり止まったりというところに、もしかしたらドギマギしてる方もいらっしゃるかもしれないですし。でも、いざ“やります”と言った時は喜んで来てくれる人たちがいて。 そういう人たちがいてくれるから、自分らも集まったり、「またやろう!」と言えたりするんでね。それは、忘れたつもりはないです。今後も忘れずにやっていかねばなぁと思っているところです。

──そういったファンの方たち、“Waiveを観たいんだ”と求める方たちに“じゃあ何を見せたらいいんだろう?”というふうに、気持ちが今はシフトして来ているのでしょうか?

田澤:それはもう、再再演の時と今と変わらず、ですかね。言い方が難しいんですけど、その質を上げるというか、より良いものになればいいと思ってます。あと、今回あえて何も考えずにWaiveのステージに臨んだのも実はもう一つ理由があって。現役当時って、そこまで何かを守ろうとしてなかったんですよ。

──それはどういう意味ですか?

田澤:期待に応えなきゃ、とか感動させたいとかって気持ちは当然必要なんですけど、あまりそれを背負い込み過ぎるとやっぱりちっちゃくなるんですよね。現役当時は若かったので、そういう方向でのプレッシャーを抱えて小さくまとまる、ということがなかったから。もちろんエンタメとして必要最小限のクオリティーを守るのは大前提としてあるんですけど、もうちょっと解放してね。“むちゃくちゃやったろう!”ぐらいの気持ちでちょうどいいんじゃないかな?と。それを“現役の頃を意識してる”と表現してしまえばそれまでなんですけど、“当時やっていたことをなぞる”のではなく、あの頃のステージに立ってた心持ちを今持ってステージに立ったら、どうなるんだろう?っていうね。そういう方向に気持ちが変わっている、と思います。

──いい意味で野性味を取り戻す、というニュアンスですかね?

田澤:ああ、そうです、野性ですね。

──頭で考えすぎず枠に捉われないでやろう、というマインドは取り戻しつつ、スキルは前よりもグッと高まっていて、という。最強ですね。

田澤:そう、それができたら最強でしょ? それを今回はお見せできたらいいな、と思って。その第1回目というところで、この間の<MUD FRIENDS>をやってみた、という。

──すごくいい滑り出しだったんじゃないですか?

田澤:はい、すごく良かったと思います、楽しかったし。

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