【ライブレポート】加藤和樹、「みんなのために生きると決めました。俺は歌い続けます!」

ポスト


2018年7月にリリースした自身名義では約9年ぶりとなるフルアルバム『Ultra Worker』を携え、<Kazuki Kato Live “GIG” TOUR 2018-Ultra Worker->と題し、“LIVEHOUSEバージョン”と“全席指定バージョン”からなる全国11か所15公演のツアーを開催した加藤和樹。ここでは、オリジナル楽曲はもちろん、ミュージカルナンバーやキャラクターソングも織り交ぜた“全席指定バージョン”のうち、ツアー最終日である11月11日(日)の豊洲PIT公演の模様をお伝えする。

  ◆  ◆  ◆

ステージを覆う赤い舞台幕がゆっくりと開くと、そこにはスーツ姿の加藤が。ピアノの音にそっと彩られながら歌い出したのは、今年1月から2月にかけて大阪と東京で上演されたミュージカル『マタ・ハリ』の「普通の人生」。彼が演じたアルマンが、愛する人との“ありふれた暮らし”を夢見て歌うナンバーだ。なんて心を動かす歌声なのだろうか、と既に魅了されずにはいられない。

サンバ・テイストのアッパーなナンバー「Ultra Worker」へなだれ込むと、着席していたオーディエンスはいっせいに立ち上がり、加藤と一緒になってタオルをぐるんぐるん回したり、大きくコールしたり。彼もステージを右に左に大きく動きながら、サポートバンド・THE DRASTICSのメンバーにマイクを向けたりとアグレッシヴなパフォーマンスを見せる。“憧れた未来じゃなくても 今を生きる”というメッセージが、音源に増して力強く背中を押してくれるようだ。



かと思えば、紫のライトの下、マイクスタンドを手にしてグッとオトナっぽい歌声を響かせた「Venom」。ハンドマイクに持ち替え、コール&レスポンスでも昂らせてくれた「WARNING」。さらには、「LADY GO!!」ではフロアを指さしながらテンション高く歌い、日ごろのストレスや生きづらさから解き放ってくれたり、「Hang Glider」ではオーディエンスのジャンプとクラップに大きな笑顔を見せたり。貪欲な表現者の歌とステージングは実に多彩で、目も耳も心も満たされていく。

「よう集まってくれたね! どうしよう、もう楽しい!」と感激しつつ、「……最初、自分にとって役者とアーティストは別物だと思っていたけど、別の人生を歩むことで貰うものも多いんです。ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』でロナンを演じれば……諦めない心、真っ直ぐさをもらったりして」と、演技と歌という異なる表現がお互いによい影響を与え合っていることを示した加藤。その上で、「中でも好きな楽曲です、聴いてください」という前置きをして歌ったのは、『1789 -バスティーユの恋人たち-』を彩るドラマティックな「サ・イラ・モナムール」「肌に刻み込まれたもの」だ。“血と汗と涙の記憶”を胸に奮い立つ美しく気高いロナンの姿が、確かにそこに在った。

また、変わることのない愛を求める「魂」、自問自答し進もうとする「Calling Me」、自分の存在意義を見出そうともがく「L∞P」といった、『Ultra Worker』の中でも“影”を色濃く感じさせるナンバーでは、心の動きを繊細に表現し、役者としての経験値を存分に生かしていたように思う。

その後のMCでは、THE DRASTICSのメンバーと笑い合いながら、加藤は素直な気持ちを述べた。

「このツアーで、笑顔は人を救う!ってあらためて思いました。ライヴ前は捨てられた子犬みたいに震えている僕だけど(笑)、みんなの笑顔を見ると不安も緊張も吹っ飛びますから。みなさんと幸せな時間と空間を共有できて、本当に嬉しいです」



オーディエンスにとっても嬉しい言葉に続いては、クイズRPG『魔法使いと黒猫のウィズ』で演じるラディウスとして歌う挿入歌「Razor-Will」、『B-PROJECT』で演じるアイドルグループ“THRIVE”のメンバー・愛染健十のキャラクターソング「LOVE GAME」を披露した。加藤は鍛えられた腕や胸元をあらわにしながら、疾走感あふれるロックナンバー「Razor-will」ではとても激しく、「LOVE GAME」ではミラーボールがきらめく中でセクシーに魅せてくれる。さらには、EDMの曲調に艶のある歌声がマッチする「Butterfly」にしても、ドキドキさせられっぱなしのターンとなった。

また、「今日が終わると憂鬱な月曜日だけど、ぶっ飛ばしていこうぜ!」という頼もしい一声から、明日からまた頑張ろう!という力を受け取った「BLUE MONDAY」のパフォーマンスも、この夜のハイライトのひとつであった。

バンド演奏「DRASTICSのテーマ」のあいだに衣装チェンジをした加藤は、秋らしい赤いチェック柄のシャツをまとい登場。そして、“自由に羽ばたけばいいのさ”と高らかに歌ったのは「DIAMOND」。キャッチーで高揚感たっぷり、とんでもなくライヴ映えしていた新曲「Answer」。さらには、サマーチューンらしくウォーターガンを手に、客席後方まで発射して廻るというサプライズも飛び出した「BEACH」。その一方で、包容力に満ちた温かな歌声に桜色のライトがぴったりだったのが「君はFragile」だ。本当に、加藤和樹というアーティストは変幻自在だ。

本編ラストを飾ったのは「HERO」である。“憧れていたヒーローのようじゃなくても”“想い描いた未来とは違っても”“誰もが皆 自分の夢を叶えるHERO”“カッコなんてつけないで ありのままで挑むんだ”という彼自身が紡いだ歌詞には、生きるためのヒントとなる言葉ばかりが歌われる。再び客席に降りて、あふれる想いをひとりひとりに届けようとするその姿には、どうしたって胸が熱くなった。

さらにアンコールで加藤は、「みんなが生きている実感を与えてくれる。だから、俺はみんなのために生きると決めました。これからも俺は歌い続けます!」と、決意を口にした。歌に対して、ファンに対して、あまりにも誠実な人だ。

ステージ上でもアナウンスされたように、そんな彼はこの実り多きツアーを経て、2019年3月から4月にかけて再び音楽の旅へと向かう。まずは、初めてたったひとりで各地のファンに会いに行く原点回帰ツアー<Kazuki Kato Road TOUR2019~Thank you for coming!~>に臨み、その後も間髪入れずに、加藤和樹&THE DRASTICSによるスタンディングライヴ・ツアー<Kazuki Kato LIVE"GIG"TOUR2019~Thank you for coming!~>を開催する。加藤和樹は、まだまだ進化していく。

取材・文◎杉江優花
撮影◎Minamoto Katsumi

  ◆  ◆  ◆

■【SET LIST】

M1. 普通の人生
M2. Ultra Worker
M3. Venom
M4. WARNING
M5. LADY GO!!
M6. Hang Glider
M7. サ・イラ・モナムール〜肌に刻み込まれたもの
M8. 魂
M9. Calling Me
M10. con・fu・sion 〜心の叫び〜
M11. L∞P
M12. Razor-will
M13. LOVE GAME
M14. Butterfly
M15. BLUE MONDAY
M16. 欲情 -libido-
M17. DRASTICSのテーマ
M18. DIAMOND
M19. Answer
M20. BEACH
M21. 君はFragile
M22. HERO
〜アンコール〜
En1. Heart Beat
En2. to you

■<Kazuki Kato Road TOUR2019~Thank you for coming!~>

加藤和樹が初のたった一人でしばらくいけていない場所会いに行く「原点回帰」TOUR
・3月29日(金) 福岡DRUM Be-1
・3月30日(土) 熊本B.9 V2
・3月31日(日) 宮崎SR BOX
・4月2日(火) 山口LIVE rise SHUNAN
・4月4日(木) 広島セカンド・クラッチ
・4月6日(土) 高松DIME
・4月7日(日) 岡山IMAGE
・4月9日(火) 札幌DUCE SAPPORO
・4月13日(土) 柏PALOOZA
・4月14日(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
・4月17日(水) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
・4月18日(木) 仙台MACANA
・4月20日(土) 新潟GOLDENPIGS RED
・4月21日(日) 金沢AZ
※詳細は後日発表。

■<Kazuki Kato LIVE"GIG"TOUR2019~Thank you for coming!~>

加藤和樹&THE DRASTICSで贈るスタンディングLIVETOUR
・4月25日(木) 心斎橋BIG CAT
・4月26日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
・4月28日(日) 新宿BLAZE
※詳細は後日発表

■最新アルバム『Ultra Worker』

2018年7月18日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD) TECI-1591 \3,704+税
通常盤(CD) TECI-1592 \2,778+税

<CD収録曲> 初回・通常 共通 全10曲
01.HERO ※リードトラック   作詞:加藤和樹  作曲:河田貴央  編曲:河田貴央
02.Ultra Worker   作詞:加藤和樹  作曲:鈴木 賢二  編曲:清水哲平
03.knock knock knock!   作詞:コヤマヒデカズ  作曲:中野雄太  編曲:中野雄太
04.L∞P   作詞:石川絵理  作曲:佐々木裕  編曲:佐々木裕
05.魂   作詞:浦島健太  作曲:山元祐介  編曲:山元祐介
06.Calling Me   作詞:深川琴美  作曲:倉内達矢  編曲:倉内達矢
07.DIAMOND   作詞:浦島健太  作曲:山元祐介  編曲:山元祐介
08.stay by your side   作詞:大沢圭一  作曲:大沢圭一  編曲:大沢圭一
09.Butterfly   作詞:加藤和樹  作曲:本田光史郎  編曲:本田光史郎
10.BLUE MONDAY   作詞:石川絵理  作曲:渡辺未来  編曲:渡辺未来

<DVD収録内容> 「HERO」ミュージックビデオ+メイキング映像


この記事をポスト

この記事の関連情報