【ライブレポート】Base Ball Bear × キュウソネコカミ、<I HUB YOU>大阪公演で「音楽でHUBの役目を」

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Base Ball Bear主催対バンツアーが、この秋、約9年ぶりにスタートした。タイトルは<Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>。副題の“I HUB YOU”には、“私とあなたをつなぐ” “私があなたをつなぐ” “私であなたをつなぐ”という意味が込められているという。BARKSは東名阪3公演の規模で行われる同ツアーのすべてをレポートしていく。その第一回目は対バンにキュウソネコカミを迎えて行われた初日10月13日(土)の大阪・なんばHatch公演から。

◆Base Ball Bear × キュウソネコカミ 画像

“インディーズ時代の楽曲しばり”や“『C』&『C2』完全再現”など、毎回コンセプトを掲げて行なってきたのが、Base Ball Bearのライブシリーズ<LIVE IN LIVE>だ。2018年5月からは初のツアー形式で、“3ピースでのワンマンライブ”をコンセプトに全8公演を敢行した。ギタリストが抜け3人編成となって2年の間、サポートにさまざまなギタリストを迎えてライブをしてきた彼ら。3ピースバンドとして自立したい、という思いを形にしたそのツアーの最中に発表されたのが、今回の<LIVE IN LIVE~I HUB YOU~>と冠したツアーでもある。

本人たちが、「新人バンドのようなフレッシュさ」や「青春を味わっている」と語る、3ピースでのライブにゲストバンドを迎える対バン形式のツアー。Base Ball Bear主催による対バンツアーは、約9年ぶり(!)だという。その第1弾が、10月13日大阪なんばHatchで開催された。


▲ヤマサキ セイヤ (Vo. G / キュウソネコカミ)

▲オカザワ カズマ (G / キュウソネコカミ)

この日のゲストは、キュウソネコカミ。Base Ball Bearとキュウソネコカミとは、かつてない意外な組み合わせだが、実はギターのオカザワカズマは、学生時代にコピーバンドをしていたくらいBase Ball Bearのファンだということがステージで明かされ、オカザワがキラキラとした表情で「ここにいるみなさんと同じように、今日楽しみに来ました!」と語ると、会場は一気にフレンドリーさを増す。その一方、ヤマサキセイヤ(Vo/G)とヨコタシンノスケ(Key/Vo)が、「クマ対ネズミという分が悪い動物対決」だとMCして会場を笑わせ、“キュウソネコカミ”という名に恥じぬパンクマインド迸るステージでどんどんフロアをかき回していくライブとなった。

1曲目「MEGA SHAKE IT!」で、いきなりクライマックスに突入するロケットスタートを切ったキュウソネコカミのライブは、ステージ上のどこを切り取ってもエネルギッシュ。ヤマサキとヨコタがフロントで跳ねまわりながら大きく声を響かせる横で、オカザワカズマ(G)、カワクボタクロウ(B)がお立ち台に乗りフロアを盛り上げる。ドラマー、ソゴウタイスケはダイナミックなプレイで、前の4人にパワーを注入する。全員が、ステージから飛び出てくるようなアグレッシヴさだ。


▲カワクボ タクロウ (B / キュウソネコカミ)

▲ヨコタ シンノスケ (Key, Vo / キュウソネコカミ)

▲ソゴウ タイスケ (Dr / キュウソネコカミ)

この、頭から120%全開の力で、「ファントムヴァイブレーション」ではおなじみ“スマホはもはや俺の臓器”の名フレーズの大合唱を起こし、「KMTR645」では”キュキュキュ〜“という振り付け&シンガロングで観客を一体化する。アリーナなど大会場でもワンマンを行なっている彼らだが、キュウソの真骨頂は、そのウルトラキャッチーな曲とキャラクターで、イベントや対バン、初見の人が多いライブでもフロアを問答無用で笑顔にするパワーがハンパでないこと。

「僕ら、パッパラパーじゃない曲もあるんです!!」(ヤマサキ)と自虐気味の曲紹介で「秋エモい」を哀愁ダダ漏れでプレイしたかと思うと、「DQNなりたい、40代で死にたい」ではヤマサキが筋斗雲(ボード)に乗り、フロアでDQNコールを指揮するなど、会場をキュウソのペースに巻き込み、観客を感情のジェットコースターに乗せ振り回していく。そのスピード感が、なんとも爽快だ。ラストは、現在の最新曲でありキュウソネコカミのリアルな心情を詰め込んだ「The band」をソリッドなアンサンブルで叩きつける。メジャーで活動しつつも、常に年100本前後のライブをするバンドの底力を見せつけてくれた。


このアグレッシヴなライブを受けてのBase Ball Bear。どちらかといえば、ライブにおいてもスタイリッシュな佇まいで、クレバーなアンサンブルを聴かせるイメージが強いBase Ball Bearだが、3ピースでのライブは3人で音をぶつけ合わせる純粋な楽しみに満ちている。登場し、小出祐介(Vo/Gt)、関根史織(Ba/Cho)が堀之内大介のドラムの元に頭を付き合わせて集まったミニマムな状態から、一気にビッグバンを起こすように「ドラマチック」「PERFECT BLUE」とダイナミックなサウンドを響かせる。その爆発力が圧巻だ。

サウンドの屋台骨を支えながらも、フロアの後方からも見えるような大ぶりなフォームで魅せるプレイをする堀之内、グルーヴもメロディアスな部分も担いながら大きなステップを踏んで観客を煽る関根、エッジーさとキャッチーさのキワを攻めながら歌心あるメロディを伝える小出。3人それぞれの持ち味を最大限にかき鳴らし、かつキリッと引き締まった洗練された音を聴かせるアンサンブルとなっている。フロアは自然とクラップが高鳴り、ジャンプで会場を揺らす。


「キュウソ、素晴らしかったね。いやあ、賑やかだった」(小出)と、彼らから受けたド派手なバトンと関西のバンドらしいノリの良さを称賛しつつ、「東のバンドとして負けないように。せめてもの中年の元気を出していきたい」(小出)と、「SHINE」からはさらに爆発的に、かつこの3人でしか鳴らし得ないポップネスとドライブ感を炸裂させた。

「君はノンフィクション」では、関根がチャップマンスティックという弦楽器で、エフェクティヴな音を生み出していく。その風変わりな楽器のフォルムと幅の広い指板を軽やかにタッピングする奏法に観客は釘付け。3ピースでタイトに魅せるだけでなく、エクスペリメンタルな要素や新しい切り口での見せ方など、しなやかに自由に取り組んでいる感じがまた、いい。


同じ学校で10代を過ごしてきた4人ならではの呼吸感や共通言語で濃密で孤高のロックミュージックを奏でていたバンドからギタリストが抜け、石毛輝(the telephones,lovefilm)や田淵ひさ子(toddle, bloodthirsty butchers)、フルカワユタカ、ハヤシヒロユキ(POLYSICS)などがサポートギターとしてライブに参加し、あまりこれまで窺えなかった意外な人脈の広さを見せ、新たなケミストリーも生み出してきたこの2年間。第三者が入ることで物理的に壊れたバランスや固定概念もあっただろう。その経験を経ての3ピースバンドとしての活動は、それまでとは違う風通しの良さや柔軟性を得て、またそれとは逆により純化されたBase Ball Bearサウンドの面白さも知る時間だったに違いない。約9年もの間、なかなかタイミングもなくできなかったという対バンツアーが実現したのも、激動と呼べるこの2年があったからとも言えるかもしれない。


中盤には、今回のサブタイトルである“I HUB YOU”について小出がMCする。10代の時に友だちがいなかったこと、それまでやっていたバスケをやめてギターをはじめ、そのことでこういう道が開けたこと。人と人や人と音楽とを繋いでいく意味合いでのこのHUBには、「学生時代“ハブられていた”という、切実なダジャレもこもっている」(小出)という。「そんなハブられていた僕が、音楽でHUBの役目を担える。中堅となってきて、そういう音楽の良さというものを改めて思うようになった」と語った。今まであまり絡みがなかったというキュウソのような後輩バンドとの対バンも、こうした思いが湧いている今ならではのことだ。


こうして今回の対バンツアーへの思いを語ったあとは、「不思議な夜」からBase Ball Bearのアイディアが光るアレンジやアンサンブルの妙を堪能できるブロックへと突入する。ダンサブルに跳ねるビートに、関根の幻想的なコーラスが映える「Tabibito In The Dark」、コール&レスポンスで盛り上げて突入した「The Cut」では、小出のラップ、キレのあるギターのカッティングと図太くうねるグルーヴのコントラストでフロアを飲み込む。白熱していくセッションに観客のボルテージもグイグイと上がって、会場の気温も上がる。その余韻に浸らせることなく続けざまに「yoakemae」で、スピードを上げてダンスフロアを生み出した。そしてこの日の本編ラストは、バンド結成17年ということで「17才」で締めくくった。フロア一体でのクラップが、いつもよりも晴れやかに、祝祭的にも聞こえる「17才」だった。

大きな歓声に迎えられてアンコールに立った3人は、キュウソのキャラクター、ネズミくんの耳付きキャップやTシャツなどのグッズを身にまとって登場。レアな姿にさらに歓声や、「かわいいー」という声が大きくなったところで、対バンライブならではと言える、セッションへ。今回はBase Ball Bearファンであるキュウソのオカザワをギタリストに迎えて「changes」を披露した。ゲストだからと、メンバー3人にがっちりと囲まれたステージのど真ん中で、ギターソロも担当することになったオカザワ。憧れのバンドとの夢の共演で顔が緩みっぱなしの上、キュウソのライブではほとんどMCすることがない彼だが、ハンドマイクでBase Ball Bear愛を語るというこれもまたレアなシーンを見ることができた。



予定ではこの曲で終演だったが、歓声は鳴り止まず2度目のアンコールに立ったBase Ball Bear。「せっかくなので、もう1曲」(小出)と、「祭りのあと」で観客の汗を絞りとり、<LIVE IN LIVE〜I HUB YOU〜>ツアー初日、大阪の夜を締めくくった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle)

■<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>10月13日(土)@大阪・なんばHatchセットリスト

【キュウソネコカミ】
01. MEGA SHAKE IT!
02. ファントムヴァイブレーション
03. メンヘラちゃん
04. KMTR645
05. 秋エモい
06. ビビった
07. DQNなりたい、40代で死にたい
08. ハッピーポンコツ
09. The band
【Base Ball Bear】
01. ドラマチック
02. PERFECT BLUE
03. SHINE
04. LOVE MATHEMATICS
05. 君はノンフィクション
06. 不思議な夜
07. Tabibito In The Dark
08. The Cut
09. yoakemae
10. 17才
encore
en1. changes
en2. 祭りのあと

■<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>


▼大阪公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>
10月13日(土) 大阪・なんばHatch
対バン:キュウソネコカミ

▼東京公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」『日比谷ノンフィクションⅦ』>
10月21日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
対バン:ペトロールズ / RHYMESTER

▼名古屋公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>
11月11日(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
対バン:the pillows ※the pillowsサポートベース・関根史織

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