【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.73 「驚きの夏フェス情報続々! でもその前に『AFTER HOURS』」
今週は音楽ファン、特に音楽フェスのファンにとって、エキサイティングで大きなニュースが2つありました。
まず、木曜午後に飛び込んできた1つ目が、FOO FIGHTERSのSUMMER SONIC初&ヘッドライナー出演。そして2発目は金曜朝、FUJI ROCK FESTIVALの3組目のヘッドライナーとしてGORILLAZが決定したというアナウンスでした。どちらも衝撃的なニュースでしたが、特にFOO FIGHTERSのサマソニ出演に関しては、これまでの歴史を振り返ってみても、あの伝説となった嵐の初回からフジロックに出演してきたバンドであり、まだ記憶に新しいところでは2015年に骨を折っても特注セットを持参してステージへあがり、7年振りの来日パフォーマンスを完遂するなど、フーファイの日本での夏=フジロックという図式があるものとすっかり思い込んでいましたが、こうしたことは日本でももちろん、海外では当たり前に起きていますもんね。大きな弾なだけに、大変驚き、久々に心の臓までもが刺激されたニュースでした。
こうして、日本の2大フェスのヘッドライナーがすべて出揃いましたので、夏の予定を立てる人も多いのではないでしょうか。しかし、夏の前の春に開催されるフェスも多くあります。その中から今回は「AFTER HOURS」について触れていきます。
■「AFTER HOURS」
「AFTER HOURS」は、4月9日(日)に渋谷にある4つのライブハウス(TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest)で開催されるミュージシャン発の新たな音楽フェスティバルです。
サブタイトルの‘Standing Against Things That Ruin Art'、意訳すると(芸術をダメにするものに立ち向かう)と記されています。他のフェスと違う点はまさしくここで、単なるミュージシャン発の企画もののライブではなく、非常に強い意志と決死の覚悟を持って開催されるものと見受けられます。
私が一度、日本の音楽ギョーカイで働くことにピリオドを打ち、海外へ渡った理由のひとつに日本の音楽業界にある不思議な天井や壁の存在を知ったことがありました。その不可視で得体の知れない不気味なものはちょっとやそっとのことで崩れるような代物ではなく、何かを守るために長い年月をかけて築かれており、時に純粋な音楽制作やアート活動を邪魔する鬱陶しい存在でした。そうした俗に言う業界ルールや慣習の一部は、インディペンデントな芸術家を筆頭に、彼らと共に活動する人々の自由な活動を意図せず、または意図して奪うことがあります。
そして、それらを壊すことができる最大の力を持っているのはおそらく芸術を発信する芸術家自身であろうと考える私は「AFTER HOURS」の趣旨とこのフェスに参加する人々を支持しています。
今年のチケットはすでに完売してしまいましたが、一人でも多くの音楽ファンに「AFTER HOURS」発祥の意図を、ミュージシャンがミュージシャンらしく活動できる日本の音楽業界を育むために、ミュージシャン自身が声を上げていることを知って欲しいと切に願います。
文=早乙女‘dorami'ゆうこ
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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