【インタビュー】ザ・チャーム・ザ・フューリー「チャーミングな女性ボーカリストが怒りに満ちたグロウルをする」
ザ・チャーム・ザ・フューリーが日本デビュー作となるセカンド・アルバム『ザ・シック・ダム&ハッピー』をリリースする。紅一点キャロライン・ウェステンドルプは、グロウルからクリーンまで様々なボーカル・スタイルをこなす強力な女性ボーカリストだ。
◆ザ・チャーム・ザ・フューリー画像
メタルコア・バンドと分類されることも多いが、彼女らが継承しているのはパンテラ、メタリカ、そしてスリップノットといった偉大なるメタル・バンドのスピリットだ。明快でノリが良く、初めて聴く曲でもすぐにハマれる。一方で新作『ザ・シック、ダム&ハッピー』には21世紀の病んだ社会に対するプロテストというべき重厚なメッセージをも内包してる。彼女たちの怒りに満ちたアンセムを体験してみてほしい。
──ニュー・アルバム『ザ・シック・ダム&ハッピー』で日本デビューとなりますが、前作と比べてどんな仕上がりになっていますか。
ルーカス(B):マティス、君から説明してくれ(笑)。
マティス(Dr):これは新たな一歩だよ。音も変わったしね。作るのに3年半から4年もかかったし、俺たちに合うサウンドを探すのにとても時間をかけたんだ。もちろん前作が俺たちらしいサウンドではなかったわけではなけれど、さらに自分たちらしい音を求め続けた。今回はデビュー・アルバムとはまた違うことをやろうと、レコーディング前にブレインストーミングなんかもやったな。テクニカルなものからシンプルでヘヴィなものまで、色々なタイプな曲が入っているだろ?
──ザ・チャーム・ザ・フューリーはメタルコア・バンドと呼ばれますが、知らない人に説明するとしたらどうなりますか。
マティス:確かにメタルコア・バンドにカテゴライズされることも多いし、それでいい。メタルコアというジャンルは、俺たちが今やっている音楽も包括しているんじゃないかな…単にメタルという方が正しいかもしれないけど。最近はメタルもサブジャンルに分かれすぎだろう?このジャンルはこういうタイプのリフでこういうパートで…みたいに規定されるのはクレイジーだよ。メタル、あるいはヘヴィ・ミュージックというだけで十分かもね。
──今回の作品では、前作からメタルコア的要素が減っているようにも感じます。
ルーカス:俺たちはもともとメタルコアが大好きなんだ。トリヴィアムとかキルスウィッチ・エンゲイジ、アズ・アイ・レイ・ダイングとかね。こういうバンドが出てきたときは非常に革新的だった。まったく新しい領域を探求していて初めて聴いたときには本当に驚いた。それまで聴いていたトラディショナルなメタルとは大きく違ったからね。だけど、自分たちでバンドを始めてメタルコアをやるようになったときに、このジャンルももはや同じことを繰り返しているだけなのでは…と感じ始めたんだ。結局みんな聴いた音をコピーしているだけのようだった。だから新しい新鮮なことをやるべきだと思ったんだ。
──音楽性が変わることで、影響を受けたバンドも変わってきていますか。
ルーカス:多少変わってきてはいると思う。デビュー・アルバムの頃はアズ・アイ・レイ・ダインやキルスウィッチ・エンゲイジのようなヘヴィなバンドにインスパイアされていたけど、同時に俺たちはメタリカやパンテラのようなメタルも大好きだった。当然キルスウィッチ・エンゲイジのようなバンドも、メタリカやパンテラからの影響は大きいだろうから、そういう意味では影響が変わったというよりルーツをさかのぼっているだけと言った方がいいかもしれないね。
──ボーカリストのキャロラインは、どのようなアーティストから影響を受けているのでしょう。
マティス:彼女は南部のメタルが好きなんだ。アンダーオースのスペンサー・チェンバレン、エブリタイムアイダイのキース・バックリー、ヒー・イズ・レジェンドヒー・イズ・レジェンドの シュイラー・クルーム、グラスジョーの ダリル・パランボとかが好きなようだ。アンダーオースはずっと好きで、いつも「何故このジャンルには女性ボーカリストがいないのか?」と不思議に思っていたらしい。それで「それなら自分でやろう」って思い立ったんだ。スペンサー・チェンバレンのグロウルは本当にヘヴィだけど、同時にフラストレーションや感情に満ちているだろ?彼のボーカルはものすごくリアルなんだ。
──一方、ザ・チャーム・ザ・フューリーの歌詞は非常に社会的なものですよね。典型的なメタルの歌詞ではなく。
ルーカス:自分が興味のあることを歌詞にするだけだからね。俺たちは政治的なことについて強い意見を持っているんだ。
マティス:座って何について言うべきか考えていると、当然自分のパーソナルな部分が出てくる。「世の中は何かおかしい、そうだ、今これについて意見を述べるチャンスだ」って。俺たちは幸いレコードという意見を述べられるプラットフォームを持っているわけだからね。
──強いメッセージ性を持つ一方で、「政治なんてクソ喰らえ!」みたいなハードコア・パンク的なストレートなものではないですね。歌詞を読んでも一見わからないものも多い。
マティス:その通りだね。俺たちは確かに政治的なメッセージを持っているけど、リスナーにも様々な問題について考えてもらいたいから「これが悪い、これは良い」と直接伝えるのではないよ。
ルーカス:世界で何が起こっているのかを人々に考えて欲しいから、俺たちの歌詞がそのきっかけになればいい。
──アルバム・タイトル『ザ・シック・ダム・アンド・ハッピー』にはどのような意味が込められているのですか。病んだ(シック)社会、メディアが真実を隠すために人々をバカ(ダム)にさせ幸せ(ハッピー)な気分にさせる、ということなのでしょうか。
マティス:社会の自己破壊について…つまり「メディアは俺たちにゴージャスな話やセレブの話ばかりを押し付けてきて、人々はそれに満足してしまって銀行の腐敗やシリアでの戦闘などには見向きもしない」ということさ。結局人々は自分のことにしか興味がなくなり、ただのバカに成り下がってしまう。まさに君が言った通りのことだよ。
──歌詞は怒りに満ちていますが、今の世界情勢をどう思いますか。
マティス:完全にめちゃくちゃだよ。アメリカでは世界をめちゃくちゃにしようとしているアイツがいるだろ。恐ろしいよ。システムは完全に腐っているんだよ。世界のリーダーたちは嘘ばかりを言い、いやちょっと待って、嘘というよりアイツに言わせればオルタナティヴ・ファクトだっけ、だけど俺たちは何もできずに座って成り行きを見守るだけなんだからね。
──“ザ・チャーム・ザ・フューリー”も面白いバンド名ですよね。
マティス:iTunesのライブラリーからアンアース「The Charm」という曲を見つけて、即座にそれを気に入ったんだ。それで「ザ・チャーム・アンド・ザ・フューリー」という案が出たんだけど、もっとスペシャル感が欲しかった。それでアンドを落としてザ・チャーム・ザ・フューリーとしたんだ。別に面白いエピソードでもないけど(笑)、この名前に決めたあとで、これはバンドのアイデンティティとも一致しているって思った。つまり「チャーミングな女性ボーカリストが怒りに満ちたグロウルをする」ということさ(笑)。
──日本でのライブも期待しています。
ルーカス:日本はとても行きたい国の一つだから、なるべく早く行きたいね。
マティス:俺も日本にはぜひ行ってみたいと思ってる。
ルーカス:残念ながら今は行く予定が決まってはいないのだけど、もし実現したらパーティしまくろう。日本はすべてが素晴らしいみたいだからね。
マティス:もしプロモーターに知り合いがいたら、俺たちをブッキングするように頼んでくれ!ブッキングしてくれたら絶対に行くよ。約束さ。
取材・文:川嶋未来/SIGH
編集:BARKS編集部
Photo by Roald Jansen
ザ・チャーム・ザ・フューリー『ザ・シック・ダム&ハッピー』
【完全生産限定スペシャル・プライス盤CD】 ¥1,800+税
【通常盤CD】 ¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ダウン・オン・ザ・ロープス
2.エコーズ
3.ウェポナイズド
4.ノー・エンド・イン・サイト
5.ブラッド・アンド・ソルト
6.コーナー・オフィス・マニアックス
7.ザ・フューチャー・ニード・アス・ノット
8.サイレント・ウォー
9.ザ・ヘル・イン・ミー
10.ソングス・オブ・オブセニティ
11.ブレイク・アンド・ドミネイト
【メンバー】
キャロライン・ウェステンドルプ(ヴォーカル)
マティス・ティーケン(ドラムス)
ロルフ・ペルドック(ギター)
ルーカス・アーノルダセン(ベース)
マーティン・スレグテンホースト(ギター)
◆ザ・チャーム・ザ・フューリー『ザ・シック・ダム&ハッピー』オフィシャルページ