【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.57 「通訳という人たち。」

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気がつけば、過ぎゆく秋との別れを肌寒さから感じ取れる日が到来していて、頭の中にある「やりたいこと」はいつしか「やらねばならぬこと」へと変換され、さらに追い打ちをかける‘年末'というキーワードのせいでちょっとした焦りを感じる今日この頃。こういう時こそ、ひとつひとつを丁寧に片づけて行こうと気を引き締めつつ、まずはこのコラムで紹介しようと書きかけた原稿ファイルを半月ぶりに開きました。

もう半月ほど経ってしまいましたが、今年も開催された秋のメタルの祭典・LOUDPARK。3年ぶりに裏方として参戦した今回の任務は通訳でした。これまで洋楽現場では、英語メインというよりも制作全般のアシスタント要素の高い業務経験が多く、通訳として仕事をいただいたのは3度目、さらにアーティスト付きというのは初めての経験でした。初仕事に向かう不安と緊張は幾つになっても消せない小心者ですが、大汗をかきながら一所懸命働きました。


同じ現場で働いていても、違うセクションではどんな仕事が展開されているのかさっぱりわからないというのは、音楽ギョーカイに限らずどの職種でも共通すると思われます。実際に経験してみて、想像していたものと現実とが違ったこともありました。今回は通訳仕事(アーティスト付・ライブ有りの場合)についてのレポを書いてみましょう。まず、流れを簡単に。

その1)お仕事の依頼を受ける。
その2)日程の調整、確認。

前日)
担当アーティストのスケジュール、配車情報などの細かな指示を受ける。

当日)
空港、ホテル、その他指定場所などのアーティストの居場所へ出向き、ドライバーさんと合流、車両確認をして待機。その後、アーティストと合流し、ライブ会場などの次の指定場所へ同行。プライベート・ショッピングなどにもお付き合いすることも。

ライブ本番日)
会場入り後、楽屋へ案内。ミーティングが必要ならその場所へ連れて行ったり、ステージが見たいと言われれば連れて行くなど、都度要望に応える。場合によってはアーティスト側からセットリストを預かって日本のプロダクションへ渡したり、器材運搬の手はずや確認といった制作の一部業務も担う。

通訳の中であっても、アーティスト付き、そのクルー付き、クルーの中でも音響付き、照明付き、楽屋付き、器材や制作のことまで網羅できるステージ通訳と思いつくだけでも様々です。今回の任務はその中のアーティスト付きに当てはまり、初日に空港で出迎えて、最終日は空港まで送って終了という内容でした。

今回の任務期間5日間中、最もオロオロしたオーダーは「東京にしかないクールな店へ連れて行って欲しい」でした。鋲や墨を多々入れている方々の指す‘COOL'に応えられるだけのTOKYOファッション情報&知識ゼロな私は当然困惑。すぐさまクライアントであるLOUDPARK通訳の総まとめをされている大ボスへ連絡しました。ボスの速報なみの情報収集によって難を逃れただけでなく、店に案内すると直々にお褒めの言葉をいただきました。「お前、わかってるな」と。いや、私じゃないんだけど…。

本番日の待機中にも百戦錬磨の通訳さんたちから体験談を伺いながら、邦楽現場ではあまり遭遇しない仕事も洋楽現場にはいろいろあるのねとしみじみ思ったメタルな日々でした。

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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