【ライブレポート】アンジュルム 田村芽実が卒業。「夢のような毎日を本当にありがとうございました!」
アンジュルム 田村芽実のグループおよびハロー!プロジェクト卒業公演となる<アンジュルム コンサートツアー 2016春 『九位一体』 ~田村芽実卒業スペシャル~>が5月30日に日本武道館にて開催された。
◆<アンジュルム コンサートツアー 2016春 『九位一体』 ~田村芽実卒業スペシャル~>画像、最後のメンバー挨拶
5月からスタートしたツアーのファイナルでもある本公演。会場には1万人のファンが、アンジュルムとしての田村の最後の姿を見守るために、武道館前に早くから列を作った。
オープニング映像に続いて、ステージ中央のドアが開き、激しい逆光の向こう側からメンバーがひとりずつステージへと踏み入れる。その足取りから伝わる雰囲気が、単なるファイナルとは異なる荘厳さを生み出す。
そしてシルエットはセンターステージへと歩みを進めて、1曲目は最新シングルから「次々続々」。ハロー!プロジェクトのライブではなかなか目にすることがない、ステージのリフトアップ。武道館に掲揚されている日の丸にも近い場所にメンバーを誘うと、おびただしい量のレーザービームが八角形の空間へと降り注ぐ。その光景と迫力あるアンジュルムのパフォーマンスの融合は、日本武道館を冒頭から圧倒するのに十分であった。
「ここまで作り上げたアンジュルムに自信しかありません。」と、リーダーの和田彩花は、武道館のステージできっぱりと断言する。そこに、かつてのスマイレージの“どん底”時代に見られたような、どこかしら靄がかかったような表情や雰囲気は皆無。むしろそんな時代を経て、グループを最高の状態に仕上げたリーダーとしての自信に満ちあふれていた。
一方、この日の物語の中心にいる田村芽実は「世界中のどこよりも幸せな空間をお届けします。」と、じっと前を見据える。ここまで走り続けてきた彼女とそして9人のアンジュルムとしての集大成。田村からもまた、メンバーを信頼し、最後のステージで悔いのないようにアンジュルムとしてできる最高をすべてのファンに届ける、という気合いが伝わってくる。
「汗かいてカルナバル」「マリオネット37℃」などミステリアスな雰囲気を演出した前半からの橋渡しとなるMCでは、サプライズとして、ハロー!プロジェクト全体のリーダーでもある℃-ute 矢島舞美がステージに登場。卒業する田村芽実へ労いの言葉を送り、卒業を祝福する。最後に抱き合おうと矢島が手を広げるタイミングと、田村が深々とお辞儀するタイミングが重なって、まるで矢島のハグを避けるような見え方にもなってしまい、会場から笑い声も漏れる。
「新・日本のすすめ!」からスマイレージ時代の懐かしい曲が並んだ中盤。とりわけ大きな盛り上がりを見せたのは、田村たち2期メンバーが正式にスマイレージに参加しての初作品「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」。ステージ背面に設置された巨大モニターには、同曲のミュージックビデオが流され、まだあどけなさが残る……というより、今から観ると幼さしかなかった当時のスマイレージと、今のアンジュルムがシンクロした(もっとも、今も昔も彼女たちの笑顔はそんなに変わらなかったりもするのだが)。
田村が、室田瑞希、相川茉穂、佐々木莉佳子、上國料萌衣の後輩メンバーと披露した「シューティングスター ~天真爛漫」に続き、唯一のスマイレージ初期メンバーとなった和田彩花、さらに同期の中西香菜、竹内朱莉、勝田里奈が田村と歌い上げた「スマイルファンタジー」。2014年、当時のスマイレージが本人役で主演した同名ミュージカルにて、人と人が出会う奇跡を描いたこの曲。その世界観と今日という日、そして田村の笑顔を目の当たりにして、竹内朱莉もつい涙を落としてしまう。
さらに福田花音の卒業公演でも印象的な光景を生み出した「交差点」では、メンバー誰もが涙を浮かべ、そして声を震わせる。センターステージで、そんな8人を愛おしそうに眺めて、そっと手を広げた田村。駆け込んでくるメンバーたちを迎えて、別れの時を惜しんだ。
そんな刹那をはさみながら、後半戦はこれぞアンジュルムという展開へ。「私、ちょいとカワイイ裏番長」「乙女の逆襲」、さらに「臥薪嘗胆」に「大器晩成」など攻撃的なアップチューンを並べて、観客のコールを呼び起こし、ひたすらに武道館を揺らせていく。9人のアンジュルムとしてのラストだからこその、アンジュルムの現在形を象徴する攻めの姿勢で畳み掛けるような、もしくは、なぎ倒していくかのようなファイナルにふさわしいステージングを見せつけた。
客席で紫に輝くペンライトの光と「めいめい!」の大コールに埋め尽くされて、アンコールの幕が上がる。オレンジのドットドレスを身にまとって、ステージに用意されたベンチに腰掛ける田村。そして「自転車チリリン」をステージ上で表情をコロコロと変えながら、ドラマティックに、軽やかに、楽しげに歌う姿が、誰かにも似たシルエットを描く── それは、ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』でジュリー・アンドリュースが演じた、幸せを運ぶメリー・ポピンズ。思えば田村は、ファンに、メンバーに、周りの人たちに様々な形で幸せを運んでいた。
思い出されるのが、この日のライブでも披露された「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」インタビューでの出来事。前田憂佳のグループ卒業が決定し、2012年、何度目かの新生スマイレージのスタートが迫った中で行なわれたインタビューでは、今からでは考えられないことだが、日本武道館のステージに立つという目標をどこかで諦めかけているメンバーの姿があった(それだけ当時のスマイレージは、シビアに現実を見ていたのかもしれない)。しかし、この重苦しい雰囲気を、一気に吹き飛ばしたのも田村だった。
「(机や隣りの竹内をバンバン叩きながら)ほんとに! ほんとに!! ほんとにきました! ほんとに! ほんとにちょっと、めい、がんばります!! ほんとにやります!!!」── 田村芽実(BARKS『いろんな物語が集まって、スマイレージという伝説になる。「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」インタビュー』より)
そう言って“暴れた”田村のおかげでインタビューは大きな笑いに包まれて終了した。ただ、原稿には落とし込まなかったが、この時、彼女はスマイレージを、そして自分を鼓舞するかのように必死に訴えていた。
そして「めい、がんばります!! ほんとにやります!!!」という田村の言葉通り、スマイレージが初めての単独日本武道館公演を開催することになるのは、これから約2年半後の出来事である。
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