【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~序章~

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■「自らのファンを獲得したフェス」

堺:フジロックファンにとっては、この3日間が1年の中心にあるというのが、最早、常ですよね。

ドラミ:精神面/立地面/資金面/スケジュール面…いろいろと準備が必要なので、みんな早めに計画を立てているんでしょう。

堺:でも、大変ちゃ大変ですよね。社会人は休みを取らなきゃいけないし。でも行くと、本当に来てよかったなあって思うんですよね。

ドラミ:そうですね。誰が出るかもわからないうちにチケットは発売されるのに、早割分はいつも即完売する印象があります。

烏丸:つまりはフジロック自体のファンだってことだよね。誰を観るか決める前に参戦することを決めているわけだから。

堺:フジロックへの信頼でしょうね。ミュージシャン自身も、フジロックの前だと、いち音楽ファン/いちフジロックファンになって無邪気に振る舞っている様子があると思うんです。

烏丸:多国籍、本当の“音楽の祭典感”がそうさせるのかな?

堺:または大自然を前に、ひとりの人間に戻るという感じでしょうか。

ドラミ:ジョー・ストラマーは初年度から亡くなった年の2002年まで参戦していたんですよね。心からフジロックを愛していたんでしょう。あ、あとTHE MUSICも出演していない年でも遊びにきていましたよね。

堺:オアシスでの目撃情報が多数(笑)。

ドラミ:あと、フジロックといえば、エコ。エコといえば(忌野)清志郎さんの自転車で苗場入りした逸話。自転車にまたがってステージに登場したときの嬉しそうな顔が忘れられません。

堺:見たかったなー、それ! 当たり前だけど、現場の目撃者にしか味わえない体験ができるのもフェスの魅力ですね。

ドラミ:確かに。あと、マーシーさんが入口ゲート近くのトイレに並んでいたのを目撃しました。

堺:え!?

ドラミ:髪もいつもの状態でバンダナもしてて、どっからどう見てもマーシーさんで。みんな「おい、あれ、マーシーじゃね?」って。その年は出演されていなかったんですけど、普通に一般のトイレに並んでいらっしゃったから、惚れ直しましたよね。あと、10年位前かな、甲本ヒロトさんが「俺だけがロックを好きだとずっと思ってたけど、ロックが好きな人がこんなにいっぱいいて本当に嬉しいよ。ありがとう、フジロック」みたいな発言をしてから「日曜日よりの使者」を演って、もう号泣。真っ昼間のグリーン・ステージで、日本のロックの先駆者である彼がそういう言葉を放つことに感動しました。

烏丸:カッコいいな。

ドラミ:言わせたフジロックもすごいし、ヒロトさんに認めてもらえたことも嬉しくて、いかついお兄さんたちもみんな泣いていましたよ。涙々で大合唱でした。青空で、空気は最高に美味しくて、ヒロトさんは逸物も出されて(笑)。

堺:最近では子どもを連れた人の姿も多くなりましたよね。お父さんが椅子ごと背負ってたり。

ドラミ:フジロックには子どもたちのためのエリア、KIDS LANDがあるのも魅力です。乳幼児のための授乳やお昼寝に使える大きなテントもあるし、森の中にはプレイパークもあって普段遊べないような遊具を使えるし。楽器のワークショップでは音楽にも触れられますしね。

烏丸:フジロックはロックが好きなファミリーも楽しめるものなんだね。

ドラミ:グラストンベリーでザ・フーを観ていたとき、70歳代くらいの白髪で髭生えてるテンガロンハット被ったカッコイイおじいちゃんが、歌に合わせて「Who are you?」って私に声をかけてきたんです。50年間、毎回グラストに来てるんだって。日本から来たんだったら、家族や仲間がそこにいるからjoinしろよって。私も、50年経っておばあちゃんになっても行けるフェスがあってほしいなって思ったんです。




烏丸:最前列でガツガツ楽しむのも、後ろのほうでお酒飲みながらその空気を楽しんでいるのも、子どもと一緒に川遊びをするのもフジロックの楽しみ方。そういう振れ幅がとても広いよね。そういう楽しみ方は都市型フェスでは難しいかもしれないね。

ドラミ:でも都市型はすべて用意されているという魅力がある。サマソニで不便を感じることは一切ないですからね。でも、緑がきれいで、空も空気もきれいな中で聴くスカパラの気持ちよさったら半端ないです。私、スカパラのワンマンを観たことはないですけど、フジロックのスカパラは大好きなので必ず観ます。

烏丸:それこそがフジロック・マジックだ。

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