【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.38「MONOを日本から追っかける!(1)~MONOとの出逢い、London編~」

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ロンドンで暮らし始めてから1年ちょっと経過した2006年11月9日、夕陽が沈んでオレンジ色の街灯が藍色の空に点り始めた頃、冬支度を始めたロンドンの肌寒さを感じながらカムデン・タウン駅前にある「アンダーワールド」というパブとライブハウスが一体化したヴェニューへ向かっていました。

小屋のキャパは1000人ほど、入口にあった「TONIGHT:MONO Sold Out」と張り紙に書かれた文字を横目に、奥へ進んで中に入ると客席はすでにパンパンのフルハウス状態でした。現地のイギリス人だか欧州人だかわかりませんでしたが、とにかく青や緑色の目をした人たちでぎっしりと埋め尽くされていました。

程なくして暗転し、ステージにメンバーが登場。そこまでは覚えているのですが、音が鳴った瞬間にメガトン級ハンマーでバコーンと不意打ちの一撃をくらい、それが途轍もなくでかいものであったために心身ともにショック状態に陥ってしまい、ライブの内容はあまり良く覚えていません。


最後の演奏曲だった「Halcyon(Beautiful days)」があまりに優しすぎて泣けたこと、メンバーの姿は満員のオーディエンスの後ろに隠れてほぼ見えなかったこと、アンコールを求めるオーディエンスたちが、メンバー名ではなく「MONO!Cooooooooome oooooooon, MONO!!!」と、バンド名をしきりに連呼していたこと、これら3つのことだけは生涯忘れることはないと思える程しっかりと覚えています。

これがMONOとの出逢いでした。あれから10年経過しましたが、あの日ほどの衝撃を受けるライブにはまだ遭遇できていません。

なぜそれほどまでに衝撃を受けたか。それはきっと、未知との遭遇で生じる感度の鋭さだけではなく様々なことが折り重なって生まれたインパクトのはずですが、最大の理由は日本人バンドの存在によって自分が日本人であるということを誇りに思わせてもらえた初めての出来事だったからです。


それまで日本国外では日本人客をがっつり連れてきた日本人ミュージシャンのライブしか見たことがなかったので、「日本のバンドが1000人もの外国人を熱狂させている inロンドン(しかもカムデン、しかもソールドアウト、しかも日本で無名)」という目の前に広がる現実とMONOの奏でる音魂に、純粋に感動し、MONOに尊敬の念を抱きました。

異国の地で、しかもロックの聖地カムデンで、命懸けで演奏する日本人4人の勇ましい姿と彼らから放たれる音の威力と美が、1000人の興奮と熱気をも音の渦で抱え込んで飲み込むという、あの日に見た目映い光景と音と抱いた感情は、二度と味わえるものではない、かけがえのないものでした。

あの日心に刻まれた感覚をこれからも失くしてしまわないように、MONOが音を鳴らす時には、自分の足で会場に体を運び続けられる限り、これから先もずっとMONOの鳴らす音で心を震えさせてもらい、生き続けるつもりです。


さて、ここまでこのコラムをご覧くださったあなた様はMONOという日本のバンドをご存知でしょうか。え? 知らない? 今日初めて名前を聞いた? …ならば始めてみましょう新企画、『MONOを日本から追っかける!』。今回は出会い編でした。今後にご期待ください。

Photo: MItsuyo Miyazaki, Yoshiharu Ota

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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