【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.37「音楽家ではなく、戦士 ~海外で躍動する侍たち~」
「2002年に「もっとピアニストとして上達したいから」と言って、世界的に評価の高かった自身のビッグバンド解散を発表した。
秋吉敏子さん73歳の時。
翌年、ラジオ番組の収録で偶然ニューヨークにいた僕は、彼女のバンドが老舗ジャズクラブBirdlandでの最終公演を行う事を、本当に偶然知って、無理矢理にチケットを押さえてもらった。
その上、我が儘ついでと、使いどころなどは後から考えるつもりで、インタビューまで申し込んでもらったところ、コーディネーターが彼女と懇意にしていたこと(これも偶然)もあり、何とインタビューのOKが出る。
ファーストセットとセカンドセットの合間、しかも、あの狭いBirdlandのバックステージの通路で始まった、秋吉さんとの20分間を僕は一生忘れない。
深く刻まれた顔のシワと節くれだち曲がった指、そして鋭い眼光。
何とも形容がし難いオーラを放って彼女は話し始めた。
それは音楽家と相対するというより、戦士と向き合う時間だった」
◆ ◆ ◆
これはラジオマンである株式会社ダイレクトインプット代表取締役社長の長崎栄氏が3月28日付のまぐまぐニュース!に掲載されたジャズピアニスト秋吉敏子さんのインタビュー記事をSNS上でシェア投稿した際に書かれた文章です。
素敵な文章、そして貴重な情報なのでご本人に許可を得て転載紹介させていただきました。秋吉さんの該当インタビューを即読みして感銘を受けたのは当然の成り行きでしたが、それとは別に、最後の一文「それは音楽家と相対するというより、戦士と向き合う時間だった」によって、あるミュージシャンと出会った時の場面が思い起こされました。
長崎さんが秋吉さんと出会って受けたその感覚を、私はTakaakira "Taka" Goto氏と出会った時に抱きました。Goto氏はMONOというバンドのギタリストでありリーダーです。
Goto氏との出会いは、これまでの人生でたった1度きり、摩訶不思議な感覚に襲われた経験となりました。当時書いた記事はもう削除されていましたが、編集部の方が書かれたと思われるニュース記事を発見しました。
(◆https://www.barks.jp/news/?id=1000028221)
イギリスという海外の、ロックの聖地であるカムデンで、あと数分後には熱気に満ちたソールドアウト満員状態で待つオーディエンスに鳴らす音だけで真っ向戦いを挑む寸前だったあの日のGotoさんは、もはや人間ではなくエネルギーの塊でした。ただ、ただ、圧倒されたあの感覚。まさに命懸けの戦士がそこにはいました。
‘ミュージシャンではなく戦士と向き合った'あの日から10年。今、MONOはどうしているのか。次回は当時のエピソードも交えつつ、MONOの現在を追いかけます!
Photo: MItsuyo Miyazaki, Yoshiharu Ota
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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