【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.26「仕事仲間~DI:GA元編集長~」

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音楽好きになり始めた学生の頃は現代のようにインターネットが一般的ではなく、紙媒体が隆盛を誇っていた全盛期でしたので、電波以外から音楽情報を得るためには本屋とレコ店へ通うことが必須でした。

とりわけ音楽専門誌、音楽情報誌からの情報が最も濃くて新しいものでしたから、小遣いの半分以上は書籍を入手するために費やしていました。せっせと集めたコレクションは部屋に収まらなくなり、小さな倉庫を屋外に用意し保管することにして上京したのは20年前。今もそれは実家にあり、どう処分したらいいのか悩みどころでもあります。

さて。その時代、お気に入りのミュージシャンの最新ジャケ写、アー写、撮り下ろしの写真の切り抜きを持って学校へ行きたいという思いに取り憑かれている時期がありました。おそらく自己主張の始まりだったのでしょう。しかし、中学生や高校生にとって1冊千円前後の書籍は高額商品でした。ページを切り取ることさえ躊躇うほどすべての書籍を大切にしていましたし、お財布事情的にも同じものを2冊買うこともできず、学校へはコンビニでコピーしたものを下敷きに入れて持っていくことで我慢。しかもモノクロで、というのが苦肉の策でした。

そんな状況において、コンサート会場でもらえる主催会社発行のコンサート情報誌は無料で得られる宝のような、非常にありがたいものでした。毎月各社発行のものを一部ずつ大切にファイリングし、ダブったものは切り抜き用に回すといった徹底管理をしていました。

コンサート制作会社によってはコンサート情報しか載っていないものもあれば、ミュージシャンの手書きのイラストやインタビューなどが掲載されている欲しい音楽情報プラスαのものまで様々でしたが、その中のひとつにディスクガレージが発行しているDI:GAがありました。

主に首都圏、関東近郊のコンサートへ足を運ぶ方には馴染みのあるコンサート・マガジンで、表紙はミュージシャンの手書きのイラスト、インタビューやコラムなどで充実した内容のもの。今月発行号がVOL.243ですから、仮に毎月1号ずつ出されていたと単純計算すると20年も続いているその道の老舗です。



先日、その立役者であり、昨秋病により若くして天に召されたDI:GAの元編集長、桃沢さんにお別れをしてきました。「DI:GAはアーティスト様とお客様の架け橋である」これは日頃桃沢さんが仰っていた言葉だそうですが、この言葉の通り、担当していた歌い手を幾度か取材し記事にしていただき、さらに連載コーナーを持たせていただいたときにはその歌い手の音楽性から派生する「色」を紙面で伝わりやすくするためのアイディア出しや細かな作業を常に穏やかな空気感の中で進行してくださいました。そのおかげでこちらのイメージ通りのアートワークをDI:GA紙面で展開してもらい、それを手にした多くの人々へと繋いでいただきました。

そして、アーティストと観客のみならず、人と人をつないでくださる方でもありましたから、先日の偲ぶ会には会場が埋め尽くされるほど多くの方がお見えになられていました。邦楽現場から離れて久しい私がきちんとお別れをさせていただくことができたのも、旅立たれる直前に駆け込みで連絡してきた私を現編集長に再び引き合わせてくださっていたからで、桃沢さんと現編集長に感謝しています。

仕事仲間はたくさんいても、心を通わすまで交流がもてる人はほんの一握り。桃沢さんは優しくてユーモア溢れる、大好きな人でした。可愛い花々の中で微笑む桃沢さんのお写真を見て、あの素敵な笑顔をもう一度お会いして見たかったなと悔やまれますが、これからもしんどくなった時には渡英中にいただいた愛とエールがぎっしり詰まった長文メールを読み返して励ましてもらいます。

最後に、お別れに際して同僚の方々が作られた「桃沢語録&思い出写真まとめサイト」に掲載された14年分の編集後記をすべて拝見した中から、桃沢さんの愛と優しさを感じられるものをご紹介します。このサイトをまとめた方々の桃沢さんへの愛を感じて胸がいっぱいになりました。素敵な人には素敵な仲間がいるということですね。もしお手元に古いDI:GAがございましたら編集後記を覗いてみてください。

Vol.053
桃沢です。最近コンサートに行ってつくづく思います。何が素晴らしいって、お客さんほど素晴らしい人はいないでしょ!一生懸命にアーティストを応援する、そんなアナタを私は応援したい!

Vol.099
コンサート帰りにDI:GAを読んでいる姿をホームで見かけたり、会場で隣の人が読んでいるのを見たりする度に何度「それ、作りました!」と声をかけたくなったことか。それをグッとこらえ何度「気を付けて帰ってね・・・」と心の中で語りかけ(怖い・・・)たことか。あなたの隣に桃沢。気を付けて~!逃げて~(byユ)。今年もよろしくお願いします。

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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