【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.20「フジロック、二十歳になる。」
FUJI ROCK FESTIVALの20回目開催が発表されましたね。20回、20年、二十歳。日本の音楽史に間違いなく刻まれる偉大な出来事です、これは。
◆FUJI ROCK FESTIVAL画像
フジロックが二十歳なら、その名の通り富士山で開催された第1回の時に十代の学生だった自分はもう立派なアラフォーなわけで、当時は‘フェス'なんて言葉自体まったく浸透していなかったのに肉フェスさえ生まれる昨今。時代は移りゆくものですね。
今回、改めて指折り数えてみたところ、自分は過去13回参戦していました。それもこれも、第1回目の壮絶体験で足が遠のいていた私を苗場に連れて行ってくれたフジ仲間のおかげです。もし彼女が誘ってくれなければ、仕事で参戦するまで自発的には行かなかっただろうなと思えるほどまで1回目でこっ酷くやられましたので、そのような友を持ったことがラッキーとしか言いようがありません。
そう。フジ仲間の存在が大きいのです。フジロックと他の関東甲信越地方で開催されるフェスとの違いは、仲間意識の濃さにあると言えます。年に1度、3日間だけ山の中に生まれる限定的な異空間なので時間を共有したい音楽仲間と一緒にいたい、そんな思いを抱きます。一人参戦する時もありますが、行けば誰かが必ずいて、普段会えない人にもあの場では何故か会えたりするのもフジロックならではでしょう。
それから、苗場に行ったか行かないかで、ちょっとした線引きがなされてしまうような独特な空気感もあるように思います。それは出演ミュージシャンのパフォーマンスに依るところも大きいですけれど、それと同等、もしくはそれ以上に、毎年変わることのないあの場所、あの空間に「ここにまた、自分はいる」という悦を感じられることが最たる所以でしょう。実際、他のフェスに比べて参加するのにお金も時間もかかりますが、それらを費やすだけの価値があの場所にはあるという考えを持つ人も多いのではないでしょうか。
そういう苗場マジック的な、あの山には何かが宿っているような、そんな気がしてなりません。そんなに大勢が嬉しがるなら年に3日だけはうるさくても眩しくても多少は許してやると見守ってくれている山の神が、グリーンの裏あたりにどっしり構えていそうです。
20年と一口に、いざ自分の年齢とを重ねてみてもその言葉の持つ重みほど時の長さや歴史をあまりよく実感できないので、それはなぜかと思考を巡らせてみましたところ、あることに気がつきました。
よくよく考えてみれば、何かが作り上げられている時分にその渦中にいる人はその移ろいをリアルタイムで実感などできるわけもなく、後に別の人々によって認識され、手繰り寄せた記憶を記録することが歴史になるのですよね。
見方を変えれば、20年もの間、音楽を好きで、フェスを楽しむことができた環境に身を置けたということになります。この国で内戦や戦争が起きなくて本当に良かったですし、参戦はフェスだけで結構。これからも不要なものはないままにアトミック・カフェで平和を学び、考えながらピースに過ごしたいものです。
まだFUJI ROCK FESTIVALを体験したことのない方は、自然と音楽が融合して生涯脳裏に刻まれるような瞬間を見られるかもしれないし見逃すかもしれない、すべては自分の選択力と運にかかっている言わば音楽の宝探しのような場だと思って、一度参戦してみてはいかがでしょうか。
写真:Tsuyoshi Ikegami、宇宙大使☆スター
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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