【インタビュー】ASH DA HERO、「歌なんて瞬間芸術だから何回も歌うもんじゃない。だから一発で録るんです」
■今の若い人は戦う時にガンダムに乗りたがると思うんです
■でも僕はガンダムの世界にこのままの格好で入っていきます
――廻りくどかったり、説明口調のメッセージではなく、“グダグダいってないで、やれよ!”とズバッと言っているのが爽快です。
ASH DA HERO:シンプルに言いたかったんです。ウジウジ言ってるのは、あまり好きじゃないんですよ。言い訳めいたことばかりいって、なにもしない人が結構多い。そういうのを聞くと、「やれば良いじゃん」と言うんですよ。「でもさぁ、やってもどうなるか分かんないし…」「やってみれば良いじゃん」と(笑)。僕は、本当にそういうタイプで、それを歌詞にも反映させています。いや、別に良いんですよ。なにもしないでグダグダ言ってても。ただ、そういう人って、傍から見たらカッコ悪いと思うやん…という話で。だから、メッセージとしては本当にシンプルで、“受動的じゃなくて、能動的であれ”ということですよね。こんな自分はダサいんじゃないかと思うきっかけを与えられることができれば良いなと。それくらいの感じです。
――アッパーな曲調とストレートな歌詞、パワフルな歌が相まって、“よし! 俺もいっちょうやってみるか”と思わせる作品になっています。メジャー・デビュー作の1曲目が「HERO IS BACK 2」という続編的なタイトルなのも良いですね。
ASH DA HERO:それ、よく言われるんですよ(笑)。“2”と付いているということは、“1”があるのかと。“1”もありました。その曲も言いたいことを詰め込んだ歌詞だったけど、自分の中でちょっと時代性が古くなってしまったんです。なので、今回続編というか、スピンオフをとして書いたのが「HERO IS BACK 2」です。これは、ヒーローが街にやってくるというプロローグの情景を描いていて。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説とか、ハンフリー・ボガードの映画とかが大好きなんですよ。そういうものをイメージした部分もありましたね。ヒーローが街にやってきて、いろんなことが起こっているのを横目で見ながら、この街はなんとかしなきゃいけねぇなと思う。そういう情景を思い浮かべながら書きました。
――「HERO IS BACK 2」を聴いて、ストーリー仕立てのアルバムなのかなと思いましたが、そうではなくて。一作を通して主人公のヒーローを描きつつ、1曲ずつでも意味が分かるものになっていることが印象的です。
ASH DA HERO:そう。『ルパン III世』みたいな感じというか。『ルパン III世』は連続アニメだけど1話完結。そういう感じにしたかったんです。
――歌詞も楽しめました。それに、『THIS IS A HERO』は、なんといっても抜群の歌唱力を活かした生々しいボーカルが大きな魅力です。
ASH DA HERO:ありがとうございます。
――さっきの話の中で歌は一発録りと聞いて、本当に驚きました。
ASH DA HERO:一発録りにした理由としては、美空ひばりさんの言葉に感銘を受けたからです。美空ひばりさんが、「お客様はレコードを聴いて、コンサートに来てくださるんでしょう? だったら、レコード通り歌わなくちゃ」と仰ったという話を聞いたことがあって、それは素晴らしい言葉だと思っているんです。だから、ライブで歌えない歌をレコーディングしては、いけないなと。一発で歌えない歌は、ライブでは歌えないですよね。今はテクノロジーが進化していて、修正したり、エフェクトを掛けたりするのが簡単にできるし、ライブでもエフェクトを掛けたりできる。でも、僕はそういうのは違うと思っていて、本当にリアルな歌をパッケージしたかったんです。それに、僕は気合で歌うタイプだから。“歌=テクニック”という考え方の人は、一発録りはしないですよね。非合理的だし、非効率的だから。でも、僕はそこもアナクロニズムというか。昔の人にしてみれば、一発録りは普通のことだったから。僕らの世代は、昔の人達は一発で録れるなんて、本当に上手いよねとか言うけど、昔は一発録りしかなかったから、みんな練習して上手くなったわけじゃないですか。だから、すごいよねと言ってるのは、ダサいんですよ。すごいと思うなら、自分も一発で録れるようになれば良い。本当にそれだけです、僕が一発録りをした理由は。それに、歌録りはすごく早かった。歌録りのためにスタジオが3日押さえてあったんですけど、1日半で終わったんです。でも、歌なんて、何回も歌うもんじゃないですよ。瞬間芸術だから。
――たしかに、グッとくる瞬間が多いです。はみ出し気味になっている場所などがありますが、それを直してしまったら魅力が半減する気はしますね。
ASH DA HERO:それは間違いない。今は完璧主義志向のご時世なので、気になる人はいっぱいいると思うけど、気にしてくださいという感じなんですよ。そういうのが気になっちゃう自分って、すごく耳が良いのかもと思ってくださいっていう(笑)。
――いろんな意味で超越した力を持った歌で、圧倒されました。昔は、自分の力量だけで勝負したいというミュージシャンが多かったんですよ。修正したり、機械に頼ったりするのは恥だと思うという。
ASH DA HERO:分かります。僕も“武器は要らん!”というのはありますね。今の若い人は戦う時にガンダムに乗りたがると思うんですよ。モビルスーツは要らない。もしガンダムの世界に入っていくとしても、このままの格好で入っていきますね。踏みつぶされたら終わりだけど、だったら踏み潰されないようにするにはどうしたら良いかを考える。もし踏み潰されそうになっても、心肺能力が高ければ回避できるし。要は、鍛えれば良いだけじゃないですか。だからね、大事なのは気合なんですよ。気合は、すべてを凌駕できると思う。テクノロジーも何もかも。そう思っています。
――それが上辺だけの言葉ではないことが伝わってきます。音源を聴いてライブを観たくなる人も多いかと思いますが、ライブはどういう雰囲気でしょう?
ASH DA HERO:ROCK’N’ROLL SHOW! 以上という感じです。他に言葉は要らないですね。言葉がうまく喋れたら、歌は歌っていないから。
――なるほど。でも、できればもう少し……。
ASH DA HERO:どうだろう? ワンダーランド感もあるROCK’N’ROLL SHOWというか。一緒に盛り上がっても楽しいし、観ているだけでも楽しいライブを目指しているし、そういうライブをしているつもりです。いつもライブが始まる寸前にバック・メンバーとかと円陣を組むんですけど、その時に「今日も最高にカッコ良いショーを、よろしく頼むよ」と言っていて。僕らが立つのはステージだけど、これは銀幕だからと。自分達は今から映画スターになるんだから、そういうつもりで…といって、先にメンバーを送り出すんですよ。そういうスタンスだから、後ろで座って観ても楽しんでもらえると思う。ライブは、近いところでは12月4日にTSUTAYA O-WESTでやるイベントに出ます。音源を聴いたり、このインタビューを読んだりして、“なんだ、こいつ?”と思ったらライブに来て欲しいですね。観てもらって、絶対に損をさせない自信はあります。
取材・文●村上孝之
リリース情報
『THIS IS A HERO』
2015.12.2発売
CRCP-40439 / \1,667+tax
1. HERO IS BACK 2
2. 結局なんにもやれてない
3. 反抗声明※日本テレビ「MIDNITE テレビシリーズ」エンディングテーマ ★リード曲
4. WAKE UP ROCK AND ROLL BAND
5. BABY GOOD NIGHT
6. THIS IS LOVE
ライブ・イベント情報
『IS THIS A HERO?』
2015.12.04@渋谷 TSUTAYA O-West
[GUEST ACT]Made in Asia / Fo’xTails
[OPENING ACT]Outside dandy
<VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666 なんばHATCH公演>
12月5日(土) ASH DA HERO
12月6日(日) Derailers
12月9日(水)/10日(木) KNOCK OUT MONKEY
12月12日(土)/13日(日) Nothing More
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