テリー・ボジオ、キャリア集大成となる決定版を制作

ロック・ドラミングの概念を変えたスーパー・ドラマー、テリー・ボジオの音楽性を映像とCD4枚組によるサウンド＆ヴィジョン大全で総括する『テリー・ボジオ - ザ・コンポーザー・シリーズ』が12月18日発売される。フル・キットでのドラムソロをマルチ・カメラで捉えた最新映像と全59曲/トータル230分を超える楽曲を収録した、まさにキャリア集大成と言うべき作品だ。

◆テリー・ボジオ画像

フランク・ザッパやジェフ・ベック、UK、ミッシング・パーソンズ、ブレッカー・ブラザーズからKoЯn、ファントマズまで幅広い活動で知られるテリー・ボジオだが、本作はそのキャリアの総括である。音楽・映像・絵画・インタビューなどを通じて、テリー・ボジオのミュージシャン像・人間像に多角的に迫るのが『ザ・コンポーザー・シリーズ』だ。

映像は、テリーのフル・ドラム・キットによるソロ・パフォーマンスで構成されている。360度を取り囲むドラム・キットは、それ自体がテリーの“作品”であり、縦横無尽に繰り広げる演奏が初めてマルチ・カメラで捉えられている。35分の映像は、生のライヴでも見ることが出来ない近距離と角度から彼の凄まじいテクニック、リズム楽器の枠を超えたコンポーザーとしての才覚をあますところなく収めたものだ。インプロヴィゼーションの手腕もふんだんにフィーチュアされており、一瞬たりとも目を離すことを許さない。この映像は日本で撮り下ろされたもので、あの要塞ともいえるドラムセットのセッティングとバラシも速回し映像で収録されている。

CD4枚組はそれぞれ（1）『フュージョン1』、（2）『フュージョン2』、（3）『クラシック』、（4）『アンビエント』というコンセプトで分けた全59曲が収録されている。テリーのドラムスを主軸に据え、彼自らプレイするシンセやピアノを加えたトラックが中心となっているが、興味深いのは、特定のミュージシャンをイメージした曲、あるいは共演することを前提に書かれた曲があることだ。「マイルス」はマイルス・デイヴィス、「ジョー」はジョー・ザヴィヌル、「シックス・ミニチュアズ・フォー・ギター&ピアノ」はジョン・マクラフリン&チック・コリアへのトリビュートといえる曲だし、「ミー、ジェフ&トニー」はジェフ・ベックとトニー・ハイマスとの『ギター・ショップ』（1989）期グループ、「アル・アンド・ダグ」「OCD」「ADD」はアレックス・マカチェクとダグ・ランのアウト・トリオとの共演を前提とした曲だ。さらに「ウォッチド（アンダー・サヴェイランス）」はトム・コスター、「ロンド・フォー・ウッドウィンズ」はミック・カーンをイメージしている。さらに「ファシスト」「ヘヴィ・メタル」「ビースト」「ディスプレイスド」はテリーが参加したKoЯn『（無題）』（2007）のために書かれたが使われなかったという曲だ。

いずれの曲もテリーのテクニックに裏打ちされたトラックで、単なるスタジオ・デモやアウトテイクとは一線を画した完成度を誇っている。これまで数作のリーダー・アルバムを発表してきたが、本作はそれらと異なったベクトルを持つ新機軸の作品だ。

ブックレットとして添付される、それぞれの楽曲と呼応したテリーによるペインティングは、彼が音楽をどう“視た”かの心象風景をヴィジュアル・アート化する大胆な試みだ。また本人直筆サイン入り/描き下ろしイラスト＆解説（日本語訳付き）を掲載したアートブックに、全ディスクを収納した豪華ハードカバー仕様の通販限定プレミアム・エディションのみに収録された1時間におよぶ映像インタビューとして伊藤政則とのトークが掲載されている。彼の音楽観やドラム哲学からフランク・ザッパやUK時代の思い出、さまざまな人間関係や確執の真相に至るまで語り尽くしたものだ。

「過去の自分でなく、現在の自分を見て欲しい」とテリーは語る。2015年、『The Composer Series』は現在進行形のアーティストとしてのテリー・ボジオの姿を、未来に向けて保存する決定版だ。



◆『テリー・ボジオ - ザ・コンポーザー・シリーズ』オフィシャルサイト