【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.13「子連れでフェスろう!(3)<SUMMER SONIC編>
記念すべき息子との初ライブ参戦を「どこ」で「どの音」にするか。これは親のさじ加減一つで子が一生誇りに、または一生ネタにできるかどうかが決まる重要課題です。また、生後10か月の子が耐えうると踏める物理的な2大ポイント「天候に左右されることなく楽しむことができる屋内エリア(幕張メッセ)があること」「KIDS CLUBがメッセ内にあること」が決め手となり、日本を代表する音楽フェスであるSUMMER SONICを選びました。
◆SUMMER SONIC画像
結果、サマソニ・デビューで大正解! 幼児連れには必要と思われるチェック・ポイントごとにレポートします。
8月15日<参戦当日>
●幕張メッセ到着~駐車~入場ゲートへ
フェス・バディであるM女史と合流していざ幕張へ。移動手段は自家用車を使用し、駐車場利用料金は1日1000円。会場に隣接していて十分なスペースがあるので便利。
●会場内<幕張メッセ>(トイレ、食事)
マリン・ステージ(スタジアム)に次ぐ2番目に大きなマウンテン・ステージをはじめ、ソニック・ステージ、レインボー・ステージ等があるのでライブを多数鑑賞でき、ステージ間もバギーで移動が楽々。一日中いるので外せない食事・ソニ飯は沖縄料理からタイ飯まで幅広く軒を連ね、椅子・テーブルが大量にあるので並ばず座れた。そこにバギーを横付けしても周囲に迷惑をかけることなく食事することができたので、気楽に美味しい台湾マンゴーかき氷を堪能できた!
おむつ交換シートも設置されたトイレは広くてきれい。トイレセクション毎に1つある多目的トイレにバギーごと入れる。子連れで難なく用を足せるので、大人一人での子連れ参戦も可能にする大きなポイントだ。また、メッセ内は冷房が効いているので乳児も快適に過ごせる。
他エリアではマリンへ足を伸ばしたが、人波押し寄せる中をバギーで押し進むのに四苦八苦。ビーチやシーサイドへも行きたかったが、灼熱の太陽下で0歳児を長時間屋外へ連れ出すことは避けたかったので断念。息子が自力歩行できるようになったらトライしてみたい。
●子どもが喜ぶKIDS CLUBと授乳室<幕張メッセ>
メッセ内にはKIDS CLUBという子供向けエリアがあり、無料で子を遊ばせることができるだけでなく、大人用のテーブルセットも配備されているのでそこを基地にもできるし、腰を据えてのんびり見守ってもいられる。音も絞られていたので子はイヤーマフなしでいられ、話し声もクリアに聞こえた。
小学生以下の子どもはフェイス・ペイントをしてもらえ、写真の通りアミューズメントパークにあるような大きな電車やふわふわの遊具で存分に楽しめる。また、子どもが歌って踊れるキッズティスコというイベントが1日に3回開催され、きゃりーぱみゅぱみゅの初代キッズダンサー「TEMPURA KIDZ」の出演やダンスワークショップなどの2歳くらい~小学生が楽しめそうな企画が盛りだくさんだった。
KIDS CLUB内に設置された授乳室テントには、パテーションで仕切られた3人分の椅子とスペース、それ以外にもミルク用の熱湯ポット、おもちゃ、マットが用意されていて助かった。特筆すべきは素敵な笑顔でいい雰囲気を生み出してくれていた親切なスタッフさんたち。場所だけあっても人がよくないと悲しくなるケースが多いので、彼らの心ある対応に感謝。
欲を言えば、フェスは長時間滞在になるので流し台があれば哺乳瓶を洗えるし、電子レンジがあったら哺乳瓶を消毒できて完璧。また、ヘッドライナー開始時間の1時間前に閉まってしまったため、快適な場所だっただけにその後の居場所に若干困ったのと、KIDS CLUB終了と同時に同エリアにあった飲食店のBGMが急に爆音へと変わったので慌てて息子にイヤーマフをつけたこと以外はとても居心地よく過ごすことができた。
●子どもの耳を守るイヤーマフ(イヤー・ディフェンダー)
「爆音の中で赤ちゃんは大丈夫なの?」と心配される方もおありだろう。実際ライブ中に顔を二度見されるなどの痛い視線を数回浴びた私も、子を持つ前はライブに子どもを連れてくる人たちをネガティブに見ていたこともあったので、不快に感じる人がいることは十分理解している。
今回、息子のライブ・デビューを飾るにあたって特別に用意したものは子の耳を保護するイヤーマフ。個人のブログや海外レビューを参考にしてAmazonで購入した。これひとつでライブはもちろんのこと、花火大会や運動会のピストルなどの爆音からも子の耳を守れるそうなので、価格5千円もそう高くはないと言える。
試しに装着してみると、普通の会話は普通に聞こえて爆音は小さく聞こえるという優れもの。息子は嫌がることなく装着したまま会場内をせわしなく眺め、初ライブとなったMarilyn Mansonでは3曲目で寝落ち。あのマンソンの爆音をもってしても赤子を睡眠に誘うイヤーマフ、恐るべし!
●バギーをフル活用(お昼寝、移動、絶対必要)
昼寝、移動、食事など、すべての場面でバギーに助けられた。また、子連れバギー持参者には車椅子用エリアを利用させてもらえるとのことで、近くを通過した時に「こちらへどうぞ~」と声をかけてくれた案内係のスタッフさんが2人もいて、ほっこり嬉しくなった。KIDS CLUBもそうだったけれど、サマソニは笑顔のスタッフが多くて気持ちいいなと感じた。
上記以外にも子連れでコンサートやフェスに行こうとする時、解決できない問題がある。夜遅くなるので子によっては体内時計が若干狂ってしまう可能性があることと人混みを避けられないこと。この2点だけはどうにもならないので、前者はできる限り日常リズムを守るようにして後者は人並みが落ち着いてから移動する方がよいだろう。この待ち時間が辛くならないように、親の心には余裕を、子には満腹感を与え、飽きないためのおもちゃやお菓子を準備していくのをお忘れなく。
●結論 <無理せず、頼れるフェス・バディと行くべし>
今回の成功の秘訣は、なんといっても同行者の存在です。彼女の助けなしでは存分に楽しむことはできなかったと明言できます。一人でも可能でしょうけれど、食事を買って、場所を確保して、トイレへ行ってなど、大荷物を持って子を抱えてすべてを一人でやろうとすると楽しめるとは思えません。できることなら友達かパートナーを誘って、大人2人で子とライブを交互に見る態勢を取れれば楽しめるでしょう。
今回、子連れフェスをテーマにしたのは、ママ、パパ、子連れは優遇されるべきだと言いたかったのではありません。
子を育てるということは、趣味でも仕事でもなく、人間はそうやって命を繋いでいく生き物であるので、歳を重ねるごとにライフスタイルが変化するのと共に、人生の楽しみ方も望むものにも変化が生じるのは当然のことでしょう。
無論、育児はとても面白いものです。しかし、場合によっては孤立やストレスを生むものでもありますから、環境が許すのであれば、育児世代も音楽フェスやコンサートを楽しんでも良いのではないでしょうか。
子連れフェス参戦をすることで、自分の元々の居場所に戻れたような感覚を、子守りをしながら得られますし、好きな音楽にどっぷりと浸ることで大いにリフレッシュできます。好きなものに触れることによって心が満たされれば、その後の子育てはさらに励めるはずです。
今、疲れてしまっている音楽好きなお母さん、お父さん。フェス参戦でパワー・チャージを考えてみてはいかがでしょうか。一度クリアしてしまえば、子の成長に合ったフェス選びという楽しみがまたひとつ増えますよ。
サマソニ以外にも、子連れで参加しやすそうなフェスやライブはたくさんありそうですし、今週末はワークショップが楽しそうな豊洲野音CARNIVALも開催されますよね。旅行を兼ねてフェス参戦するのもいいアイディアですので、我が家では3年後にFUJI ROCK FESTIVAL、15年後にはグラストなどの海外フェスにも参戦できるようにフェス貯金を始めるつもりです。
写真提供:CREATIVEMAN PRODUCTIONS
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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