【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.12「子連れでフェスろう!(2)<準備編>」

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今夏、生後10か月の息子を伴って子連れフェス・デビューをするにあたり、特別に準備したものはひとつだけ、子ども用のイヤーマフ(イヤー・ディフェンダー)でした。それ以外は普段持ち歩いているものや既に持っていたフェス・グッズで十分間に合いましたし、その他準備のためにしたことといえば、一人で参加していた頃と同じく、少しの情報収集と多くの脳内イメージトレーニングです。ただ、情報収集にしても、脳内イメトレにしても、欲しい情報や吟味すべき内容は一人で参戦時とは大きく異なりました。


現代では、開催されるほとんどの音楽フェスがそれぞれに充実した公式ウェブサイトを公開していますので、参戦を決めたフェスの公式ウェブサイトへアクセスし、自分に必要な情報に目を通すことで、本番当日、自分がどのように行動すれば、どの道を通れば楽に遊べるかを事前に予習することができます。これも一人参加の時と同じではあるのですが、見るページが変わりました。

これまでは、出演アーティストのラインナップとタイムテーブルしかほぼ見ていなかった公式サイトも、会場MAPを最初に確認しました。フェスによっては、細かな部分まで丁寧なイラストで描かれていたので、これまで参戦してきて培ってきた記憶と擦り合わせることからイメトレ開始、脳内フェスのスタートです。この時点でBGMを流し、気分をより高めても良いでしょう。

会場MAPをじっくり見てみると、それまで気にも留めなかったトイレやエレベーターの位置、駐車場から会場まで、そして場内に入ってからの自分の取るべき動線がよく見えてきます。その分、事前に諦めるエリアもはっきりするかもしれません。当日無駄な時間を過ごすことなく、むしろ、楽しむ時間を増やせる! と、ポジティブに考えれば、自制が必要なペース配分で動くことが可能な活動領域をイメトレするのも悪くはありませんでした。

また、子の入場に関わる公式インフォメーションもしっかり読みました。特に次の3大事項の確認は音楽フェス参戦に限らず子連れ人にとって外せません。

・トイレ(オムツ交換)
・授乳
・昼寝のための休憩場所


この中でも、子どもを連れて入れる設備のあるトイレ(バギーのまま入れる多目的トイレ、または、個室内に子を座らせる椅子が設置されている)を利用できるのかどうかは、普段、乳児を連れての外出時であっても一番大きな問題です。野外フェスなどでよく見られる簡易トイレは狭くて暗く、汚い場合もあります。自分だけならば全く問題ないことでも、子どもを外に放置して用は足せません。

そして、授乳。ある程度の静かな環境で落ち着かないとおっぱいやミルクを飲んでくれない子も多く、乳児連れの場合には外界から隔離されたある程度のスペースがない会場での参戦は厳しいでしょう。息子の場合ですと、外出先では気が散るのかあまり飲まないけれど、究極にお腹が空けばどこでも飲んじゃうぜタイプなので授乳室はあってもなくてもあまり気になりません。それ以上に全く気にしない子ならばどこで授乳してもOKでしょう。しかしながら、埃が舞い散る中よりかは落ち着くことのできる場所での方が子も親も気分がいいでしょうし、周囲のオーディエンスも変に気を遣わずに済むでしょう。また、ミルクを作るための給湯設備や流し台が使用できるような環境があれば荷物も減りますし、安心して子連れ参戦できますよね。


子連れでフェスりたいオーディエンスのために、主催者の皆様にはご一考していただきたいこのトイレ、授乳問題。日本のフェスが開始された当時10代だったオーディエンスも現在30代半ば〜40歳、子育てど真ん中世代です。最近では公共・商業施設共にこのような設備があることが一般的になってきました。時代とともにニーズが増えるこれらの問題が改善され、子連れフェスが一般的になることを願います。

上記以外にも子連れフェスの難点はあります。子の生活タイムテーブルは日ごと変更される上、フェス会場のような大きな場所でたくさんの人や初めての場所を目にして大人以上に大興奮してしまいますので、親が見たいタイムテーブル通りに進行することなく、見たいものは見られないに三千点です。

また、荷物が多くて重い。大きなマザーズバックの中には万が一に備えたもの、毎日必要なものが全部入っているため、減量は不可能です。例えば、息子は現在体重10kg、それにマザーズバッグだけで3kgほど、バギーを持ち運ぶ必要がある場合はさらに重量5kg。合計20kg近くを抱え、腰が砕けそうな状態で動き回ることを覚悟しなければなりません。できるだけ無理をしないでバギーに頼るに限ります。

無理をしないためにも、子連れフェスの先陣たちのブログは必見です。情報を共有する目的で書かれているものは少なく、過去のメモリー的な内容のものがほとんどですが、何がよくて何に困ったとか、何を持って行けばよかったなど、最も知りたい生きた感想が写真入りで溢れています。それらに書かれた共通項を探るという面白さもありますし、ネット時代、万歳ですよね。ちなみに、冒頭で触れました特別に入手したイヤーマフ、こちらは先陣たちのブログで得た情報から購入に至りました。

すべては親の道楽のため、だからこそ、子が最優先。当然ですが、この鉄則と周囲への気配りを忘れずに行動できれば、見たいものが見られなかったとしても、好きな音楽で溢れる毎年の来るべき場所に最愛の子と一緒に居られるのですから楽しい1日になるはずです。

今夏、自身の子連れフェス参戦を振り返ってみますと、息子の朝寝、または昼寝中に目当てのバンドのCDをBGMとして小さく流し、ドリップした美味しい珈琲を飲みながらパソコン上の会場MAPを眺めて脳内イメトレを重ねていたことが、参戦前までの楽しみであり息抜きとなっていました。どれほど子を愛していても、育児ばかりでは息が詰まるものです。好きな音楽のこと、フェスのことを考えている時間は心が安らいでいました。子連れフェスを実行した中で、案外、この時間が最も充実したリラックス時間となっていたように思います。

次回は、本番当日の体験について綴ります。

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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