【インタビュー】ボカロPのn-bunaが語るメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』のギター&VOCALOIDのサウンドメイク Vol.2
■SONARでメロディ作成、VOCALOID Editorでボーカル作成
■2つを合わせて新鮮な気持ちでミックス
──VOCALOIDとSONARを組み合わせた曲作りの流れは?
n-buna:基本的にまずDAWの方で曲を作って、ボーカルのメロディラインがあって、それをMIDIで書きだして、MIDIデータをVOCALOID Editorに入れて、ボーカルをいろいろ細かく調整して、それをまた書き出してDAWに入れるっていう。最近だとCubase内で動くの(VOCALOID Editor for Cubase)がありますけど、あのやり方ではないんですよね。自分で曲を作りながらやると、なんか細かい音が聞こえないからっていう理由で。WAVとかもEditorに読み込まないで、伴奏なしでずっと声単体で聴いて調整をして、っていうやり方をしてるんですけど。で、(SONARにボーカルを読み込んで)その時に伴奏と合わさった声の感じがわかるみたいなやり方をしてますね。伴奏といっしょに聴きながらの作業だと、違和感がある部分にも慣れてしまって違和感に感じなくなってしまう。ミックス時に初めてボーカルと伴奏を合わせるこの方法だとそういうことがないから。新鮮な気持ちで聴けて。で、その1回目で「だめだな」と思ったところをメモして、っていうことをしますね。
──MIDIの編集などの作業はSONARが扱いやすい?
n-buna:すごい扱いやすいですね。操作が直感的じゃないですか。僕、説明書とかあんまり読まないタイプで……。後から気になったところをネットとかで調べたり、操作のPDFを読んだりして。最初からMIDIで全然つまづかなかったんですよね。消したいと思った時も「ダブルクリックしたら消えた」みたいな。そこらへんが無駄に検索したりする手間が省けて親しみやすいってのが大きいですね。「試してみたらできた」っていうのがたくさんあるのがSONARのいいところだと思います。
──n-bunaさんの曲って、VOCALOIDが得意とする声の1オクターブ上ぐらいの音域を使ったりしますよね。「ウミユリ海底譚」とかまさにそんな感じだと思うんですが。
n-buna:ボカロって人間には無理な音域を使ってる曲もけっこうあったりするんですけど、聴いてて「これは無理があるな」っていう音のちょっと下ぐらいをねらって音を作ったりしてますね。それでボーカルラインを決めたり。
──では、キーごと変えなくてはならない場合もありますよね?
n-buna:そういう時はもうキーごと作り直しますね。
──ギターも録り直して?
n-buna:そうです。
──機械の声ではなくて、ボーカリストっていう扱いなんですね。
n-buna:そうですね。やっぱVOCALOIDっていう使い方よりも、僕は一人の人間……人間じゃないけど、曲として成立させるためにボーカリストとして扱うのが、ちゃんとした曲を作るのに必要なんじゃないかなと思うので。無理な早口なんかもあんまり……。そういうことができるのもVOCALOIDの魅力だとは思うし、その手で好きな曲もたくさんあるんですけど、僕が作る方向の曲としては、ちゃんと一人の人間がいるものとして作っていくってのがありますね。
■「花と水飴、最終電車」は自分でピアノで弾いて
■めっちゃ修正して(笑)
──鍵盤は弾くんですか?
n-buna:鍵盤はたまに使いますね。アルバムの中では最後の「花と水飴、最終電車」は自分でピアノを弾いて、めっちゃ修正して(笑)。
──アレンジはギターサウンド中心ですが、けっこうピアノとか鍵盤も凝ったことをしてますよね。ピアノとかはやってたんですか?
n-buna:全然です。ぜんっぜん弾けないです、ほんとに。恐る恐る「花と水飴」も弾いてて。ギターでまず和音を作って、「このコードの音はこの音とこの音だな」っていう構成をちゃんと考えて、それに沿って指を置いて……。で、がんばる(笑)みたいな感じでしたね。練習して。
──それだったらステップ入力の方が早いような気がしますけど(笑)。でも、ちゃんと弾くっていうのがいいんですね。
n-buna:めっちゃ修正しますけど。
──でも、そこがn-bunaさんの曲がおもしろいと思う要因かもしれないですね。
n-buna:やっぱピアノだけどギター的なフレーズってのがあると思います。ギターで考えたフレーズですからね。
──ピアノとギター、一緒のフレーズが弾けるのはドリーム・シアターだけですよ(笑)。ドリーム・シアターみたいなテクニカルなヘヴィメタル方面は?
n-buna:あんまり聴いてないですね。考えてみれば。
──じゃあハードロックとかヘヴィメタルでも直球なやつ……。
n-buna:そうですね。
──でも、ハードロックが好きだとは思わなかった。もっと繊細なイメージがあったので。
n-buna:でも、Mr. BIG好きですよ。ポール・ギルバートになりたい時期がすごいありました。
──今からでも遅くない(笑)。
n-buna:(笑)
──鍵盤の音源はどんなものを?
n-buna:Native InstrumentsのKontaktの中のを使ったり。Kompleteを買ってあるので、その中のシンセとかKontaktのピアノとか。よく使ってるのはMassiveでシンセの音を使ってます。アルバムの1曲めはMASSIVEで作ったシンセの音です。
▲Native Instrumentsの「Kontakt」は膨大なライブラリを収録し、強力なエディット機能を備えたサンプラー、「Massive」はベースやリードに特化したバーチャルアナログシンセ。いずれも単体発売のほか、同社製ソフトウェアのバンドルパッケージKompleteにも収録される。
──曲を作る時って、鼻歌を録音してから固めてからDAWに向かうとか、DAWに向かいつつ触ってたら曲ができるとか、いろんなスタイルがあると思うんですけど。
n-buna:初期の頃はDAWに向かいながら曲を作ってたんですけど、最近はコードの流れを決めて、その時にメロディもある程度カタチを作って、で、DAWの方で自分の持ってるものをアウトプットするっていうやり方になってきましたね。
続きのVol.3は近日公開予定。お楽しみに。
『花と水飴、最終電車』
初回生産分限定スリーブ仕様 DGUR-10005 ¥2,000+税
【収録曲】
01 もうじき夏が終わるから
02 無人駅
03 始発とカフカ
ウミユリ海底譚
04 昼青
05 拝啓、夏に溺れる
06 ヒグレギ
透明エレジー
07 夜祭前に
08 メリュー
09 着火、カウントダウン
敬具
10 ずっと空を見ていた
11 夜明けと蛍
花と水飴、最終電車
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