【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.1「ただいま。そして、はじめまして」
私はドラミと呼ばれている。もちろん本名ではない。この愛称とは長い付き合いで気がつけばもう16年にもなる。この連載コラム「音楽ギョーカイの片隅で」の記念すべき第1回である今回は、私が一体何者なのかをなんとなく知っていただけるように、これまでの職歴などをお話ししよう。
私の音楽ギョーカイ歴は、学生時代のクラブチッタ川崎でのバイト経験を含めると通算18年になる。途中、テレビ局に勤務したこともあったが、その間も当時の上司とクライアントの計らいで夏フェス現場には出してもらえていたので片足は音楽ギョーカイにあった、としてそちらもカウントすることにする。
社会人として初めての就職先はアニメ製作会社だった。アニメは素晴らしい日本の文化のひとつであるが、当時の私には仕事にしたいと思えるほどのアニメ熱はまったく持っておらず、内情は就職トラブルに巻き込まれてしまったことの結果だった。このトラブルに関しては話が長くなるので別の機会にお話ししたい。そのアニメ会社は音楽出版会社も持っていて、人気声優のオリジナルCDや劇版のサントラ等も制作していた。作家との契約書類の作成、印税分配計算から作家への連絡、分配金の振込、JASRACとのやりとり、サンプルCDの送付といった音楽出版会社の仕事を一通りこなしつつ、アニメ製作のプロデューサーたちと社長のデスクを兼任し、2年間勤務した。
その後、念願叶って音楽プロダクションに入社。所属ミュージシャンの現場マネージャーとなった。担当したのは2組で、最初は同年代のソロの歌い手のデビュー3ヶ月前から4年付き、2組目はメンバーの子どもたちの方が自分と歳が近いロックバンドだった。この事務所での6年は、これまでの人生で最も濃く、馬車馬のように働き、最も寝なかった時期であった。望んで手に入れたものであり、仕事が楽しくて仕方がなかったので不満はあまりなかった。その上、トラブル巻き込まれ事件のせいで図らずもアニメギョーカイで悶々と過ごした2年があったので、それを思い出すとどんなにしんどくても辞めようとは思わなかった。バンドが崩壊するまでは。
そして、バンド崩壊、チーム崩壊。
壊れた心をそれ以上壊さないためにだけではなく、長年胸に秘めていた'イギリスで暮らす'という目標を実行するために渡英したのが2005年の秋のこと。もう10年も前の話だ。
イギリスでは学業に勤しむ傍ら、現地の編集プロダクションや銀行マン専門のヘッドハンティング会社でバイトをしていた。マンチェスターからロンドンへ移り住んだ頃、当時BARKS編集部にいたM女史から声をかけていただき、ロンドン特派員として音楽ライターデビューを飾った。ほどなくして1000%学生目線で綴った『ドラミのイギリス留学日記』も連載開始となり、日々の出来事を綴っていた。
帰国後は某テレビ局の事業部に2年勤務。それ以降はフリーランスで洋楽現場の通訳兼制作アシスタント、翻訳、夫の英語スクールのマネジメントを生業としていたのだが、妊娠が発覚した昨年の春から現在に至るまで、現場仕事は一旦お休み中である。
現在は、昨秋生まれた男児を育てながら在宅でできる翻訳やテレビ番組用のリサーチ等の英語を使った仕事に従事している。そしてBARKSライター再始動と相成ったのであった! イギリス留学日記以来の連載なので「ただいま!」と言いたいし、現BARKS読者の皆様には大声で「はじめまして!」と言いたい。
様々なギョーカイがある中で、音楽ギョーカイは特殊であり異色だろう。未だに働く女性には優しくないギョーカイでもある。
音楽ギョーカイの片隅にひっそりと生息しているアラフォーの私が、これまで音楽ギョーカイで働く中で体験したことや感じたこと、それからイギリス人の年下夫と0歳児ハーフとの国際結婚生活での出来事などをお伝えしていくのでお付き合い願いたい。
チッタでバイトできたのも、マネージャーになれたのも、テレビ局に入れたのも、ビヨンセやガガの現場で働けたのも、学生時代に一時期目指すかどうか本気で悩んだ音楽ライター仕事も、こうしてまたBARKSに舞戻れたことも、すべては「人」がつないでもたらしてくれたものだった。
その辺のエピソードもご紹介していくので、ドラミの名を見かけた、または聞こえたら、迷わずチラっと見て目に留めてほしい。
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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