【座談会】オムニバス盤『Agitation Clysis』、V系6バンドが「衝撃に、人生変えられている」

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オムニバスアルバム『Agitation Clysis』が8月19日に3タイトル同時リリースされる。これは、音源販売方法が配信やストリーミングに移行しつつある現在、敢えてCDのみでリリースされるもの。 “扇動的注入”をコンセプトとして現代のインディーズシーンに一石を投じるために放たれる。その第一弾が、【Integrity】【Reckless】【Metalize】という3つのカテゴリーに振り分けられた3タイトルだ。

◆『Agitation Clysis』画像

【Integrity】はV系インディーズシーンで豊富なキャリアを持つバンドを1枚に集約したもの。【Reckless】はV系インディーズシーンの新進気鋭若手バンドを集約したもの。【Metalize】は堅実なファン層を維持するジャパメタシーンで新たなファンの獲得要素を高く含む精力的なバンドを1枚に集約。それぞれ全11組、3枚トータルで33組の音源が収められた。

BARKSは【Integrity】収録全11組から、STEREO.C.K、Sel’m、Femme Fatal、More、emmurée、HOLLOWGRAMといった6バンドの代表者に『Agitation Clysis』トータルプロデューサーを加え、座談会を行なった。オムニバス盤リリースの経緯、ヴィジュアルシーンの現在、アートとしての音楽の在り方など多岐に渡ったトークは、歴戦をくぐり抜けてきたキャリアと高い志に裏付けられた彼らならではの深いものとなった。

   ◆   ◆   ◆

■バンドから暫く離れてしまっていた方々にもわかってもらえる選曲──想(emmurée)
■候補の3曲のなかにすらバラードはなかった──龍蛾(Sel’m)

▲想(emmurée)

──まずは今回のオムニバスアルバム『Agitation Clysis』制作のきっかけから教えてください。

桜井(『Agitation Clysis』トータルプロデューサー):2年くらい前、僕とkazu(STEREO.C.K)君で地方移動をしている時に、車の中で流れていたオムニバスアルバムがありまして。1990年代に流行った『EMERGENCY EXPRESS』というオムニバスなんですが、「そういえば最近、こういうアルバムってないよね」っていう話になったんです。「いつかこういうのを作りたいね」という話から、2年かかってようやくここまで到着したという感じですね。基本的には、ノンレーベルでそれぞれで頑張っているバンドを集めたカタログ的な要素のアルバムを作ってみようとなりました。

──『Agitation Clysis』は【Integrity】【Reckless】【Metalize】と3タイトル同時リリースですが、それぞれに違いがあるということですね。

桜井:最初はヴィジュアル系メインで考えていたんですけども、いろいろなジャンルや分野に、自身の力で同じように頑張っているバンドがいるので、それぞれのシーンのカタログを作れればなと。【Integrity】はヴィジュアル系でキャリアのあるバンド、【Reckless】はヴィジュアル系気鋭の若手バンド、【Metalize】はジャパメタ・シーンで活動するバンドという内容になっています。

──今日は、『Agitation Clysis【Integrity】』収録11バンドから6バンドの代表者に集まっていただきました。それぞれにキャリアがあるということでは、みなさんお互いに面識があって、対バンなどもしている感じですか。

kazu:みんなで集まってというのはないと思うんですけど、それぞれが一緒にツアーを回ったり、どこかのバンドの主催するライブに参加していたりということはあると思いますね。例えば9月から始まるemmurée主催の全国ツアーでSTEREO C.K.が新潟公演に出演したり、HOLLOWGRAMが仙台公演に参加したり。今日はいないですけど、THE BLACK SWAN主催イベントに、HOLLOWGRAMとFemme Fatalが一緒に出たりとか。そういう関係はいろいろとありますね。この間のMore始動ライブには、Sel'mが出てたよね?

龍蛾(Sel’m):そうですね。

En’ya(More):その前のKaya(Femme Fatal)ちゃんバースデーライブにMoreを出してもらったり。実は、Moreはまだ結成1ヶ月で4本しかライブをしてないから、Moreとしてご一緒してないバンドもいるんですけど、今回のメンツは、個人的には以前からつながりがある人たちばかりですね。

──では、お互いのバンドも音楽性もわかってるということですね? そういうことで、あえてこの収録曲を選んだというのはあるんですか。

龍蛾:Sel’mは2014年10月に5人体制からギターのひとりが脱退して、この話をいただいた時には4人体制になっていたんです。4人になってから出した音源が1枚だけだったので、そのなかで“この4人でこういう方向でいきますよ”っていう姿勢を提示できる楽曲ということで、「Red」を選んでますね。激しいサウンドのなかでも歌がしっかりとある、そういうわかりやすさもある楽曲だと思います。

想(emmurée):emmuréeも昨年ドラムが変わって。話をもらった時はニュー・アルバムのレコーディングをスタートしてる頃だったので、新曲を録れるかなと思っていたんですけど、意外と締切が早くて(笑)。なので、Sel’mと同様、今のメンバーで録った曲から選ぶとすると、「カタルマド」だろうと。でもこれでよかったなという曲でもあるかな。

▲龍蛾(Sel’m)

──2バンドとも、バンドとして動きのある時期だったんですね。

想:だからこそ、バンドからしばらく離れてしまっていたオーディエンスの方々にも、今、emmuréeはこんな感じだということがわかっていいかなというのはありましたね。

kazu:STEREO C.K.は、特に選曲理由はないんです。曲の幅がそんなにあるバンドではなんですよ、僕ら。それはあえてやっていることで。そのなかでもメロディだったり、楽器隊のリフだったりが耳に残るようなもの。あとは、僕らもそんなに音源を出してなくて、基本的にライブ活動が中心なので、ライブで頻繁にやる曲。来てくれている人たちからも、評判のいい曲を選んでみました。

──Moreは活動をはじめて間もないですが、曲自体は今どのくらいあるんですか。

En’ya:ライブでやっている曲としては、7~8曲ですね。1stDVDをリリースしているんですけど、そのDVD収録のうち1曲はバラードなので、オムニバスにはどうだろうね?と。このメンツのなかで、Moreの世界観を知ってもらえる曲で、ライブを観てみたいなという要素があったほうがいいんじゃないかなということで、「チェシャ」を選びました。

──このバンドはこういう曲でくるだろうから、うちはこの曲でいこうっていう探り合いやけん制はなかったんですか。

kazu:実は現時点でまだ通したものを聴いてない状態なんですよ、全員が(笑)。ただ、そういう考えはたぶんあったと思いますね。他に10バンドが同じオムニバスに参加しているわけで。そこに、シングルやアルバムのリード曲みたいなやつを入れてしまうと、埋もれちゃうんじゃないかとか、かぶっちゃうんじゃないかとか。

En’ya:一応メンツを見て、どんなのを出してくるかっていうのは考えましたね。まあ、Sel'mはバラードは絶対こないだろうと思ったりとか(笑)。

龍蛾:たしかに(笑)。しかも候補の3曲のなかにすらバラードはなかった。

En’ya:みんなそれぞれ個性が強いですけど、かぶる部分も絶対あるから。そこに埋もれないようなという意識はあったと思います。

Kaya:Femme Fataleは、「ARCANA」という曲を収録したんですけど、これが2014年12月にリリースした22曲入りのアルバム『ARCANA』のアンサーソングでして。ライブで無料配布したものなんです。アンサーソングという特殊な形なので、次回作とか今後のアルバムに収録するものではないよねっていう。でも、とてもメンバーが気に入っている曲だから、いろんなところで聴いていただきたいなという思いがあって。いい機会だからこれにしようと。Femme Fataleの曲の中では少し雰囲気が異なる曲ですけど、Femme Fataleの持ち味であるきれいな歌もののメロディにメタルなギターが入ってるところは守れているので、これはありかなと。

──HOLLOWGRAMはどうですか。

一也(HOLLOWGRAM):HOLLOWGRAMというバンド自体にコンセプトや、うちはこういうものっていう括りが一切なくて、楽曲の振り幅が広いんです。選ぶのは難しいんですけど、この曲ならダークなところもありつつ、美しさもあって聴きやすいかなと(笑)。

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