【対談】ミヤ (MUCC)×CIPHER (D’ERLANGER)、「何しろキーワードは“発狂”だからね」
■「なるほど。こいつはDANGER CRUEを背負わされたんだな」と
■俺から何か得られるものがあるんやったら勝手に持ってけよと──CIPHER
──そのようなイベント、古巣の看板がかかったイベントに声を掛けられた側としてはどう受け止めましたか?
CIPHER:ミヤはその件で電話をくれて、「電話でもナンだし、夜空いてるなら一杯やろう」と誘って。そこで今みたいな話を聞いて、「なるほど。こいつはDANGER CRUEを背負わされたんだな」と。
ミヤ:ふふふ。
CIPHER:ホンマにそう思った。俺なんかはまったくそういうのがないし、ミヤみたいに若手と上を繋いで若手にこういうものを見せたいとか、サラサラ考えたこともないんですよ。DANGER CRUEということで言えば、俺もやっぱ、44MAGNUMとREACTIONの背中を見ながら育って……もちろんそこで教わってきたこともありますよ。でも、基本的には背中を見て、「ああ、そっか」と理解しながら、自分なりに己を作りあげようと精進してきたわけですよ。俺自身としても、好いてくれてる人が居てくれるのは有難いですけど、べつにそこで説教たれる気もないし。だからミヤと吞んでても、俺の経験値だったり俺の感性だったり、彼自身の知りたいことなりがあるんであればナンボでも教えてあげるし、そんな話ならいくらでもできる。ただ、そこでの関係はイーヴンだと思ってますから。男同士の関係としてね。俺だって同じようにミヤから感じること、思うことというのがあるんだし。だからそういうことでいいよな、と。結局、いろんな縁があるなかで、その縁が素晴らしければ、楽しければ、気持ち良ければ繋がっていくし、そうじゃなければ消えていく。そこについて俺は、怖いと言われようが何だろうが、ディフェンスラインは何も引いてないから。自分ではオープンにしてるつもりだし、そこに誰かが来てくれたなら、それなりに俺も何かを感じるはずだし、そこで繋がることができれば「またね」ということにもなるだろうし。まあでも、こうしてイベントという形で背負わされてることについては「頑張れよ!」という感じですよ(笑)。そこで、もしも俺から何か得られるものがあるんやったら勝手に持ってけよと思うし。
──背中を見せてる側ってそんな意識ですよね、きっと。
ミヤ:うん。そんな人だからこそ、紹介したいと思うわけなんですよね。そっぽを向いててもらって構わないから、背中だけ見せてて欲しいというか。要するに、俺が勝手に紹介したがってるってことなんです。この前も<LUNATIC FEST.>でD’ERLANGERのステージを観させてもらったんですけど、なんかホント、殺しにかかってくるような感じじゃないですか、この人たちは。それを見せられたらもうそれでOKだと俺は思ってるんで。なんだかんだ言わなくてもね。たとえば<FUJI ROCK FESTIVAL>に友達と遊びに行ったら、友達の好きな自分の知らないバンドを観に行くこともあれば、その逆もあるわけじゃないですか。そういう感じで触れてもらいたいっていうのがありますね。触れると多分、切れるんですけど(笑)。そういう感じの音楽の体感の仕方をして欲しいというか。
──出演者にもお客さんにも、ということですよね?
ミヤ:ええ。もちろん逆もそうです。だからD’ERLANGERのお客さんにもMUCCや若手のバンドを観てもらいたいし、うちのお客さんにも若手のバンドのお客さんにもD’ERLANGERを観てもらいたい。
──DANGER CRUE精神みたいなものについて文字にしてはいない、という話がさきほど出ましたけど、このレーベルのいちばんの特色とか特徴というのは、どんなところにあると解釈してますか?
ミヤ:さっきも言ったような、世代の段というか層みたいなものができていて、常に中堅どころがいちばん働いてるようなところがあって(笑)。なんかね、いろいろと無茶ぶりが多いんですよ。旗を振ってる人はドーンと居て、そのまわりが囃し立てて、無茶ぶりしてナンボ、みたいな。それによってお客さんは、いろんなバンドの普段見られないような姿を見て楽しむっていうのがあって。ただ、そこで各バンドはわりと喧嘩腰で(笑)。年末イベントとかをやることもあるわけですけど、そういう場でも、年末感とかパーティー感というのはあんまりないんですよね。むしろ、ちょっとした瞬間に無茶したところでえらく沸点の高いことが起こったりするというか。しかもそういったイベントでは、うちの社長が何年振りかに44MAGNUMのPAを担当するとか、そういう無茶なことも起こるわけです。あらかじめすごくイキってて、音もデカ過ぎて、「なんだこりゃ?」みたいなことになったりもするんだけど(笑)、なんかそういうのも含めて楽しいというのがあるんです。
──えーっと、では特色は層の重なり具合と無茶ぶりの多さ、ということになるんですかね(笑)。
ミヤ:それはまあ、レーベルというよりはDANGER CRUEがやるイベントの特色ですよね。俺が今回、CIPHERさんに電話した理由は、自分が主宰というかイベントをまとめる役回りであるからには、D’ERLANGERの曲を一緒に演奏してもらいたい、というのがあったからなんですね。それをやってくれませんか、ということをお伝えして……。若手にはいくらでも無茶ぶりできますけど、ここでCIPHERさんに「いや、俺はええわ」と言われてしまったら話にならないというか、明らかに自分の力不足ってことになるじゃないですか。だからあらかじめその点について相談したかったんです。で、逆にその時に、たとえば「それじゃあ面白くないからこういうのはどうなの?」というのをいろいろ言ってくださったりもして。実際、まだいろいろ考えてる途中ではあるんですけど、そこに自分たちや若手がいかに絡んでいくか、かつて自分がガキの頃にぶっ込まれた時のようにどういうやつらを絡ませるかとか、そういうのを考えるのが今はとにかく楽しくて。
──使命を背負いながらも楽しんでるわけですね。CIPHERさんとしても、「勝手に学べ!」という気持ちがあるのと同時に、若手たちからの刺激を歓迎したいところもあるはずですよね?
CIPHER:いっぱいくださいよ、と言いたいところですね。残念ながら滅多にないんですよ、そういうのは。自分がいろんなライヴを観に行かないというのもあるんですけど。ただ、一緒にやる若手たちに何かをもらおうとかそういうのが一切ないのと同時に、仰々しく「俺たちから学べ!」という気持ちもないんで。ここは言い方が難しいんですけど、要するに「勝手に見て、何かあるんやったらどうぞ」ということであって。何か思うところがあるんやったら持って帰りな、というぐらいの感じやから。もちろん正直なところ、相手が若手だろうが、TVやインターネットのなかの誰かだろうが、どこの国の人だろうが、ロックであろうがなかろうが、何かを見て感じるものというのはいっぱい欲しいわけですよ。ただ、それを期待して観に行っても、滅多に何もないんですよね。ライヴ1本、こっちの気持ちが持たないんですよ。途中で煙草を吸いに行ったが最後、その足で出口に向かってしまうから(笑)。
──えーっと、イベント当日は喫煙所をステージの脇にでも設けましょう。
ミヤ:ははは!
CIPHER:もっと言うとね、そのへん歩いてるやつらだって、来るやつは来ますからね。匂いを出してるやつというのはいますから。若手だろうとなんだろうと。
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