【インタビュー】LM.C、8年たった答えが音の佇まいや箱庭的世界観にすべて入った『PERFECT RAINBOW』
■黒が宇宙というか暗闇のイメージで、そこから光が射していって
■いろんな色に分かれて物語が始まっていったら最高だなって
▲『PERFECT RAINBOW』初回限定盤 |
▲『PERFECT RAINBOW』通常盤 |
Aiji:楽曲自体は『PERFECT FANTASY』に入れようかと思ってた曲だったんです。あのときは自分的にファンタジー感をブーストさせたくて情景描写的なインストを2~3曲入れたくなっちゃったんです。でも、mayaに「もう、インストはいらないんじゃないんですか?」って言われて(笑)、今回のアルバムに入れることになった。
──「VantaBLACK」って世界一、黒い物質のことですよね。
maya:そうなんですよ。当時、この曲にはタイトルがなかったんですけど、今年の夏にベンタブラックが発見されたというニュースを見たのがキッカケで付けました。虹の色は7色だけど、8曲入りのアルバムなので落としどころを探していたこともあって「レインボーが地球に存在する最も黒い物質から始まるっていいな、これだな」って。天の邪鬼感というか(笑)。
──すべての色が混ざると黒になるというから、そういう意味も含まれているのかなと。
maya:それもありますね。黒が宇宙というか暗闇のイメージで、そこから光が射していって、いろんな色に分かれて物語が始まっていったら最高だなって。
──めっちゃコンセプチュアルじゃないですか?
maya:(笑)結果的に。そういうところから始まったら必然性を感じるんじゃないかって。
──ピアノをバックにスタンダードなメロディを英詩で歌って、ダンスビートに移行する「JUST LIKE THIS!!」は、今までのLM.Cと違うテイストだなと思ったんですよね。
maya:英詩はさておき、“ようこそ此処は幻想の向こう”と歌ってるんですが、幻想の向こう側って言葉を使いたかったんです。
Aiji:「Vanta BLACK」がピアノを使った曲なので、2曲目もピアノをフィーチャーした曲にしたいと思っていて、自分も作っていたんだけど、なかなかできなかった。お手上げだと思ってたところにmayaが「JUST LIKE THIS!!」を持ってきたので、これしかないなって。
──「その目に見えるモノ その手に触れられるモノ それだけを信じて生きてきたのか?」という問いかけが意味するものも気になったんですよね。
maya:サビのその部分は2年前、海外ツアーでチリに行ったときに出会った言葉なんです。みんなで歩いていたら壁に文字が書かれていて、コーディネーターに「どういう意味なんですか」って聞いたら、こういうニュアンスのことを言っていて、ずっと心にひっかかっていたんです。それが今回のタイミングで召喚されたというか。
Aiji:ムダになってないね、経験が。
maya:(笑)そういうことが多いんですよ。日々の中で大なり小なり感動があると、ある瞬間、それが呼び起こされる。タイトルは前から使いたかった言葉で、新しいLM.Cの始まりの曲だから、今までの自分たちを継承しつつ、言葉のひっかかりを新鮮に感じてもらえたらいいなと思って書きました。
──リードトラック「MOGURA」はイントロのギターリフからしてエッジがあって、たたみかけるような熱くヘヴィな曲。
Aiji:この曲はテンション感、勢いですね。キャリアを積んでくると「JUST LIKE THIS!!」や最後の曲「Brand New Rainbow」をリードトラックに持ってきがちだと思うんですけど、まだ、そうはなりたくないなって。まわりから見たら安定期に入ったように見えるかもしれないけど、そこは一石を投じるじゃないけどアグレッシブな曲でいきたいなと。あえて、こういう曲を持ってくる面白さというか。
──ひたすら掘って突き進むっていう曲ですけど、LM.Cの動物シリーズとは言え、男っぽい方向で来ましたね。
maya:最初は“犬”の曲にしたかったんです。猫の曲(「Bellthe CAT」)はあるので、そろそろ作ろうかなと(笑)。でも、書いていくうちに曲にモグラ感を感じて、そこから物語を進めていきました。結果的にどこまでも自分の可能性を探る貪欲な主人公という形に落ち着きました。
──MVはどんな作品に仕上がっているんでしょうか?
Aiji:LM.C史上、最もクールでロックバンド然としたカッコよさを求めた映像になりました。テンション感、疾走感、エッジーなパワー感を出したかった。
──ヴィジュアルからして今回は黒一色ですけど、以前のカラフルでポップなLM.Cとはまるで違う世界観?
Aiji:ですね。スタジオでプロジェクターを使ってのシーンとトンネルでmayaが歌っているシーンがあって。
──モグラだけにトンネル?
Aiji:そこはちょっと安易ですけどね(笑)。
──そして、「Amnizia」は疾走感がありつつ、メロディが切なくてダブを取り入れた箇所があったりと、少し大人な雰囲気。
Aiji:これは4年前にレコーディングした曲を今風にアレンジした感じですね。当時は「歌詞ができたらリリースしようか」って言っていて。
──歌詞待ちだったわけですね。
Aiji:そうですね。「Amnizia」と「キミヨサラバ」は同時期にできていた曲で熟成期間中だったというか、旨味が出るまで待ってみようかなって(笑)。曲はロック然とした強さとサビでドラムが倍のテンポになる解放感。とは言えシーケンスのフレーズが解放しきれない感じを出している曲でもある。
maya:歌詞のテーマは“健忘症”。症状の名称“Amnesia”をもじったタイトルで、記憶を奪い去るものとして“アムニジア“を擬人化して歌っています。“思い出せないんだ 一昨日の夜 何を食べたのか”という歌い出しは誰にでもあることだと思うんですけれど、大切な記憶も知らないうちになくしてしまっているんじゃないかなっていう哀愁ですね。人やモノも含めて。
──生きていて、いいことも悪いことも忘れていってしまうことへの切なさというか。
maya:切なさと都合の良さですかね。そういうことに対する気持ちを歌っています。
──でも、失うことを嘆くのではなく、今を生きようというところにmayaくんのポジティブ精神が出ていますよね。
maya:結局、そうやって生きていくしかないっていう。
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